相続チェックリスト
気になる項目を開いたら解決策が見つかります。-
《法定相続分とは?》
民法では「このように財産を分けるのが一番よい」と決めている分け方があります。これを法定分割といいますが、その時の法定相続人の取り分を法定相続分といいます。
【法定相続分】
① 配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2
② 配偶者と直系尊属(父母、祖父母など)が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4
④ 兄弟姉妹が相続人の場合
全ての兄弟姉妹は同順位での相続権を有します。
【相続分を考えるときの注意点】
①子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
②民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときに目安となる遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。☆兄弟姉妹が相続人の場合に、父または母の一方のみを同じくするに過ぎない兄弟、いわゆる異父兄弟・異母兄弟(半血兄弟)の場合は要注意です。
《嫡出子と非嫡出子》
嫡出子は結婚している夫婦の間に生まれた子供で、非嫡出子は法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子供です。☆昨今、「自分の子供かどうか?」が問題になるケースがあるのが気がかりです。
【非嫡出子の相続分】
法定相続分を定めた民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分(900条4号ただし書前半部分)を削除し、嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等にすることとしました。
【認知】
民法第779条により、嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができます。関連ページ
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《相続人の欠格とは?》
相続資格がある者が被相続人や他の相続人の生命や遺言行為に対して、故意の侵害をした場合に、相続権を失わせる制度です。
【相続人が欠格となる場合】
①故意に被相続人を死亡させたり、死に至らせようとした者。
②詐欺脅迫に関連して、作成された遺言書の「取消し」「変更」を妨げたり強要する者。
③相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・隠匿・破棄した者。
※ただし、破棄・隠匿行為が、相続に関して不当な利益を目的としなければ、その相続人は相続欠格には当たらない、という最高裁の判決があります。☆相続人が欠格となると、その者に子がいる場合の相続権や法定相続人の数にも影響がでますので要注意です。
関連ページ
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《相続人の廃除とは?》
相続人となるべき者に、欠格事由(故意に被相続人を死亡させたり、遺言書を脅迫して書かせたり等)はないものの、被相続人に対する虐待、侮辱、非行等がある場合、その者の相続権を剥奪する制度です。
廃除の方法は、被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言による方法との二つが認められています。
※相続権の剥奪という点では、相続欠格と同じ効果ですが、被相続人の意思に基づくところが相続欠格と異なります。【相続人が廃除される場合】
①被相続人に対する虐待もしくは重大な侮辱を与えた場合。
②推定相続人に著しい非行があった場合。【相続廃除の目的】
被相続人は、財産を相続人以外の者に対して、生前贈与、遺贈することによって廃除と同様の目的を達することもできそうですが、相続人の遺留分までを否定することはできません。
廃除制度は、相続人の遺留分権を否定し、相続権の剥奪を認める制度といえます。
【廃除される者】
廃除される者は『遺留分を有する相続人』とされており、兄弟姉妹以外の相続人が廃除の対象となります。
【兄弟姉妹を除外する意味】
兄弟姉妹に遺産を相続させたくなければ、他の者に全財産を贈与又は遺贈し、あるいは兄弟姉妹の相続分をゼロとする遺言を行えば足ります。
また、適法に遺留分を放棄した相続人についても、廃除を求める必要性がないので、廃除は認められません。
☆相続人が廃除されると欠格同様、その者に子がいる場合の相続権や法定相続人の数にも影響がでます。また、後で「ゆるす」ということもあるかもしれません関連ページ
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《養子縁組の効力》
養子は縁組の日から養親の子となり、実の親子と同じ関係が生じます。
【養子と実親、実親族との関係】
養子縁組は、特別養子縁組の場合を除き、養子と実の親、実の親族との関係には何の影響もありません。
【養子縁組と相続関係】
養子縁組による養子は、養親・実の親、両方の相続人になります。
☆ただし、未成年の養子の場合、親権者は養親となりますので、その養親が死亡すると誰が代理人になるかで問題が生じます。
《特別養子とは?》
昭和62年の民法改正で創設された制度で、一定の要件のもとに家庭裁判所の審判により養子となることで、養子と実の父母及びその血族との親族関係が終了する養子縁組をいいます。関連ページ
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《相続人の確認》
相続人確認の為、被相続人の出生時から死亡迄の戸籍謄本等を取り寄せます。
【本籍地】
本籍は現住所と無関係に国内ならどこに置いてもよく、変更(転籍)することもできます。また、1か所の土地に何人かの本籍が置かれることもあります。
先祖代々の家、又は跡地の所在地を本籍としている場合など愛着があって思い入れが強いと、住所は遠方にあっても容易に変更しないことも多いので、出生地・居住地と本籍が異なることも珍しくありません。
【国籍】
①被相続人が日本国籍であれば、日本の法律に従って相続が行われます。
②相続人の国籍は一切関係なく、外国籍の相続人には、日本国籍の相続人と同じ相続人としての権利や義務が発生します。
③結婚後も配偶者在留資格が取れずに短期ビザの更新を繰り返している場合もありますが、配偶者在留資格の有無、ビザの種類、婚姻の期間や同居の期間も、相続権の有無については関係なく、日本の法律に従って相続が行われることとなります。
※日本においては、相続統一主義の考え方を採用しており、「相続は、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法第36条)」と定められています。
【遺言者と国籍】
遺言についても、日本では「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による(法の適用に関する通則法第37条)」と規定されているます。そのため、日本国籍の遺言者の場合は、相続人の国籍に関わらず、日本の法律に従って遺言を作成することとなります。
☆子や孫等に『外国籍を取得』させることにより、『国外財産』への課税を免れるよう、などという考え方は通用しなくなっています。関連ページ
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《相続放棄の手順と効果》
被相続人の借金が多く、正味遺産額が明らかにマイナスの場合等、相続の放棄で被相続人の全ての財産を承継しないことが出来ます。
①相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所に相続の放棄を申し立てなければなりません。
②1人だけでも出来るし、相続人全員で行うことも出来ます。
③相続放棄を一度選択すると、原則として取消せません。
④相続放棄をした相続人に関して、代襲相続も発生しません。
☆相続放棄が行われると、相続人の順位が繰り上がることがあるので注意が必要です。関連ページ
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《胎児の相続権》
民法上、胎児についてはすでに生まれたものとして相続権を認めています。したがって、死産又は流産をしない限り、胎児も法定相続人の1人と認められます。(民法第886条第1項)
【胎児の納税義務】
相続開始の時に胎児がいる場合、相続税の申告書提出の時までに生まれていないときは、その胎児はいないものとして各相続人の課税価格の計算を行います。胎児が生まれている場合には、法定相続人の数に含め、遺産に係る基礎控除を計算し、各相続人の課税価格、相続税の総額などを計算します。
☆出産の予定時期と相続税の申告期限を考えて、どのように申告するか検討することが重要となります。関連ページ
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《相続税がかかる財産》
相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含む)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。
なお、次に掲げる財産も相続税の課税対象となります。
①相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産
死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金などが、これに相当します。
②被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産の価額に加算します。
③相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与により取得した場合には、その贈与財産の価額(贈与時の価額)を相続財産の価額に加算します。
☆①には基礎控除があり、②には既に支払った税金との相殺、③では相続税の精算や税金の還付が行われることになります。関連ページ
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《遺産総額から差し引くことのできるもの?》
①被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。
②被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除く。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。
※相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。
【葬式費用】
葬式費用は、債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。
☆債務は財産から差し引くことができますが、返済の義務も生じることになります。債務の種類や金額、誰が債務を返済していくのかなどを検討する必要があります。関連ページ
参考ページ1 -
《事業資金借入のための根抵当権とは?》
事業資金を借りて、返済ができなかったときは土地を競売してもよいという抵当権を設定したとします。
このとき事業主は銀行へお金を返したら、抵当権を抹消し、また銀行からお金を借りたい場合は、再度、抵当権を設定します。
しかし抵当権を付けたり消したりという作業を繰り返すのは、とても手間がかかるので、金額の上限を決めて、銀行との取引期間中は抵当権をつけっぱなしにするのが根抵当権です。【根抵当権の債務者兼担保提供者が死亡の場合の手続き】
根抵当権の債務者兼担保提供者が死亡し、債務者としての地位を根抵当権者(銀行)と相続人の合意により、特定の相続人が承継する場合、相続開始の日から6ヶ月以内に登記することが要件となります。
①これをしない時は、根抵当権の担保すべき元本が相続開始の際に確定します。
②相続開始の日から6ヶ月以内に合意がされなかったり、合意はされたが当該登記がされなかったら、被担保債権は相続開始の時に遡って確定したものとみなされてしまいます。
【根抵当権の担保すべき元本が確定された場合】
相続による変更手続が遅れて元本が確定してしまうと、根抵当権は抵当権に近い性格のものになります。
相続後に発生する債務はその根抵当権では担保されず、事業継承上、新たな資金が必要な場合は、改めて根抵当権を設定しなければならなくなります。
☆元本が確定してしまうと、根抵当権の設定された土地を相続しなかった相続人にも、債務の弁済請求が発生する可能性がありますので、登記までの手順の確認が必要です。 -
《死亡保険金の課税関係》
死亡保険金を受け取った場合には、保険料負担者と受取人の関係で、所得税、相続税、贈与税が課税される場合があります。- 被保険者 A 保険料負担者 B 保険金受取人 B ⇒ 所得税
- 被保険者 A 保険料負担者 A 保険金受取人 B ⇒ 相続税
- 被保険者 A 保険料負担者 B 保険金受取人 C ⇒ 贈与税
受け取った死亡保険金が相続税の課税対象となる場合、500万円に法定相続人の数を乗じて算出した金額が非課税限度額となります。
☆相続人が相続放棄した場合や相続放棄した者が保険金を受け取った場合は、条件に影響がありますので注意が必要です。関連ページ
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《故人が受け取るはずだった年金》
故人が受け取るはずだった年金を未支給年金といいますが、給付を受けるべき未支給の年金受給請求権の行使は遺族が行うので、本来の相続財産には該当せず、支給を受けた遺族の一時所得とされます。(所基通34-2)
☆遺族の請求には、順序と要件がありますので、注意が必要です。関連ページ
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《交通事故の加害者から損害賠償金を受けとったとき》
被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。
この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定があるので、税金はかかりません。
損害賠償金には慰謝料や逸失利益の補償金などがあります。
【逸失利益の補償金】
逸失利益の補償金とは、もしその人が生きていれば得ることができる所得の補償金のことです。
☆事故の被害者が、損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたが、受け取らないうちに死亡してしまった場合には取扱いが違います。関連ページ
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《相続税がかからない財産》
相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。
①墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物。
※ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
②宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
③地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
④相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分。
⑤相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち 500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分。
⑥個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。
※なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
⑦相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの。
☆④、⑤の法定相続人の数の算定や非課税となる金額の計算方法には注意が必要です。関連ページ
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《平成27年1月1日以後の相続又は遺贈からの増税と減税》
平成27年1月1日以後の相続又は遺贈から、基礎控除引下げと税率引上げによる相続税の増税が実施されました。
同時に、課税価額を計算する上で設けられている「小規模宅地等の課税価格の特例」の拡充や一部税額控除の拡充による減税も実施されました。【減税に関する改正内容】
①小規模宅地等の課税価額の特例
相続税の課税遺産総額を計算する上で、居住用宅地や事業用宅地については、一定の面積までその評価額の80%を減額するという特例があります。- 居住用宅地の適用対象面積の上限が240平米から330平米に拡大されました。
- 特例の対象として選択する宅地等について、特定事業用等宅地等400平米までと特定居住用宅地等330平米の合計730平米まで完全併用できることとなりました。
☆制度の適用には、様々な条件とルールがありますので、十分な注意が必要です。
②税額控除の拡充
相続又は遺贈によって財産を取得した者が、未成年者や障害者である場合の税額控除が拡充されました。- 未成年者でる場合には、その者が20歳に達するまでの年数×(6万円) ⇒ (10万円)に拡充されました。
- 障害者の場合には85歳に達するまでの年数×(6万円) ⇒ (12万円)に拡充されました。
- 特別障害者の場合には85歳に達するまでの年数×(12万円) ⇒ (20万円)に拡充されました。
【増税に関する改正内容】
①基礎控除の引下げ
相続税の基礎控除が[5,000万円+1,000万円×法定相続人数] ⇒ [3,000万円+600万円×法定相続人数]に引き下げられました。
②相続税の税率の引上げ- 2億円超3億円までの部分について(40%) ⇒ (45%)に引き上げられました。
- 6億円超の部分について(50%) ⇒ (55%)に引き上げられました。
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《小規模宅地評価に関する特例制度》
個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前に亡くなった方の事業用に使われていた宅地等又は住まいとして使われていた宅地等のうち、一定の面積までについては、一定の割合を減額します。
この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。
【特例を受けるための要件】
①相続又は遺贈により取得した財産であること。
②被相続人若しくは『当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族』の事業(相当の対価を得て継続的に行う不動産の貸付けを含む)の用、若しくは居住の用に供されていた宅地等で、建物や構築物の敷地の用に供されているものがある場合
③被相続人より取得したこれらの宅地等のうち一定の面積(貸付用200平米、居住用330平米又は事業用400平米)迄の部分について相続税の課税価格に算入すべき価額は、その宅地等の価額(自用地、貸宅地、貸家建付地等として評価した価額)から、その価額に一定の減額割合を乗じて得た金額を減額した価額とされます。
④居住用宅地と事業用宅地について、併用が認められており、それぞれの限度面積(居住用:330平米、事業用:400平米)を足した730平米までを制度の対象とすることができます(貸付用は除く)。<貸付事業用宅地等の範囲の見直し>
平成30年4月より、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外される(事業的規模で貸付けを行っている場合は除く)こととなりました。
【事業的規模で貸付けを行っている場合とは?】
事業的規模で貸付けを行っているかは、所得税の不動産所得における「5棟10室基準」等で判定します。
所得税の不動産所得における「5棟10室基準」とは、以下のとおり、その不動産所得に係る建物の貸付けが事業的規模であるか否かを判定する形式的な基準をいいます。
●所得税の不動産所得における「5棟10室基準」(所基通26-9)
次に掲げる事実のいずれかに該当する場合、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。
小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等について、原則相続開始前3年以内に貸し付けを始めたものはその対象から除外されることとなりますが、上記の基準を満たす場合を「特定貸付事業」として、その3年以内に貸し付けたものも対象となる例外措置が設けられています。☆二世帯住宅の場合や被相続人が介護施設に入所している場合など、難しい判断が必要な場合があります。
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《死亡保険金には非課税額があります》
各相続人の取得した保険金の合計額が、500万円に法定相続人(相続を放棄した人も含む)の数を乗じて算出した金額(保険金の非課税限度額)以下の場合。
【計算式】
(保険金の非課税限度額)x(その相続人が取得した保険金の合計額)÷(各相続人が取得した保険金の合計額)=(その相続人の非課税金額)
※法定相続人には相続を放棄した人も含めて計算しますが、相続を放棄した者が受取った生命保険金は、非課税の対象とはなりません。
☆相続放棄をする場合、死亡保険金を受取る保険契約に入院給付金が付いていて、亡くなった方の入院給付金を請求できる場合は要注意です。関連ページ
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《弔慰金》
被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代、葬祭料などについては、通常相続税の対象になることはありません。
【弔慰金の非課税限度額】
①被相続人の死亡が業務上の死亡の場合→普通給与の3年分
②被相続人の死亡が業務上の死亡でない場合→普通給与の6ヶ月分
※この金額を超える部分は、退職手当金等に該当するものとして取り扱われます。
《死亡退職金》
被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といいます。)を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。【死亡後3年以内に支給が確定したものとは?】
① 死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
② 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの【死亡退職手当金の非課税限度額】
500万円×法定相続人(相続放棄した者を含む)の数=非課税限度額
☆被相続人に養子がある場合や複数の相続人が退職手当金を取得し、その合計額が非課税限度額を超える場合には、適用限度額を調整する必要があります。関連ページ
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《相続税の申告》
平成27年の相続税の改正により、基礎控除額が4割引き下げられたため、相続税の申告を必要とする相続人が大幅に増えました。
相続税の申告には、期限や提出書類など様々なルールがありますので、注意が必要です。
【相続税の申告書の提出期限】
原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。
【相続税の申告書の提出期限延長】
相続人の認知・排除等相続人に異動が生じたこと、遺留分による減殺請求があったこと、遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったことや死亡退職金等の支給が確定した場合等で、その事由が生じた日後1ヶ月以内に申告期限が到来する時は、2ヶ月の範囲内で申告期限の延長を申請出来ます。
【相続税の申告書の提出期限延長(胎児が生まれた場合)】
胎児があり、その胎児が生まれた場合、全ての相続人等について申告義務がなくなる時は、その胎児が生まれた日後2ヶ月の範囲内で申告期限の延長を申請出来ます。
【相続税の申告書の提出期限延長に伴う加算税・延滞税等】
申告期限後に申告書を提出した場合、無申告加算税として、調査や校正又は決定があるべきことを予知して提出されたものでない場合であったとしても、納付すべき税額に5%の割合を乗じて計算した金額が課せられます。
なお、法定納期限の翌日からその税金を完納する日迄の期間の日数に応じ、延滞税も課せられます。☆仮に遺産分割でもめていたり、遺産の調査が不十分で全てを申告期限内に把握出来ない場合でも、相続税の申告書の提出が遅れると無申告加算税や延滞税等の不必要な費用が発生いたしますので、対応策を考えておく必要があります。
関連ページ
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《未成年者控除・障害者控除》
これらの制度は、未成年者・障害者は一般の人より生活費等が多くかかること等を配慮して創設されたものです。
【未成年者控除】
相続又は遺贈により財産を取得した者が、法定相続人であり、未成年者の場合は、10万円に20歳に達する迄の年数を乗じて算出した金額を控除出来ます。【障害者控除】
①障害者に該当する場合、85歳(注)に達するまでの年数1年につき10万円を相続税額から控除出来ます。- 3~6級の身体障害者手帳を持っている方
- 知的障害者と判定された方
- 2・3級の精神障害者保健福祉手帳を持っている方
- 1・2級の身体障害者手帳を持っている方
- 重度の知的障害者と判定された方
- 1級の精神障害者保健福祉手帳を持っている方
※障害者の税額控除については、身体障害者手帳を持っていない方も対象になる場合があるので税務署に確認が必要です。☆この制度を活用する場合には、未成年者・障害者がすこしでも相続又は遺贈を受けている必要がある点に注意してください。
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《20年以上連れ添った配偶者への贈与》
現金・預金の相続対策とは?にも登場する、贈与の特例です。
婚姻期間が20年以上などの要件を満たす配偶者に対して、マイホームの家屋やその敷地である土地、あるいはマイホームの取得資金を贈与した場合には、通常の110万円の基礎控除の外に2,000万円の「配偶者控除」が受けられます。
【適用条件】
①婚姻期間が20年を過ぎた後に行われた配偶者間の贈与であること。
※婚姻期間とは、役所への婚姻の届け出をした日から贈与を受けた日までの年数で、1年未満は切り捨てられます(内縁関係の場合適用されせん)。
②贈与された財産が居住用不動産又は居住用不動産取得の為の金銭であること。
③贈与された年の翌年3月15日迄に、贈与された居住用不動産又は贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであること。
④同じ配偶者から過去にこの特例の適用を受けていないこと。
⑤一定の書類を添付して贈与税の申告をすること。
【メリット】
贈与された居住用財産等は、相続開始前3年以内の贈与でも「生前贈与加算」の対象外なので、2,000万円迄の居住用財産が相続税も贈与税も課税されずに移転され、相続財産の減少を図れます。
☆相続が発生した年に、この贈与を行っていた場合には、注意が必要です。
《居住用不動産の贈与と現金の贈与の違い》
居住用不動産の評価額は、時価の半分くらいであり、額面評価される現金を贈与するよりも、不動産そのものを贈与した方が有利な場合があります。
しかし、居住用不動産を取得した直後に贈与すると不動産の贈与ではなく、その不動産を取得する金銭の贈与とみなされるおそれがあるため、不動産を取得した年の贈与は避けた方が無難です。
《不動産を贈与した場合の諸費用》
①所有権の移転登記に伴う登録免許税
その不動産の価格の20%
※課税標準となる「不動産の価額」は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、その価格です。市町村役場で証明書を発行しています。
※固定資産課税台帳の価格がない場合は、登記官が認定した価額です。不動産を管轄する登記所にお問い合わせください。
②不動産取得税
住宅の場合 3% 住宅以外の家屋の場合 4% 土地 3%
※宅地評価土地(宅地および宅地の価格を基に評価される土地)を平成30年3月31日までの間に取得した場合は、土地の価格の2分の1に相当する額を「土地の価格」とする負担調整措置が講じられています。
※別荘は不動産取得税にいう「住宅」にあたりません(ただし、週末に居住するため郊外等に取得するもの、遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの等で、毎月1日以上居住するものは「住宅」にあたります。)。
【注意点】
相続発生年に実行した場合、受贈配偶者は贈与を受けた年の翌年に、贈与税の配偶者控除の適用を受ける旨の贈与税の申告が必要となります。
※これがないと、贈与財産は、相続税の課税価格に加算されてしまうので注意が必要です。
☆マイホームの家屋やその敷地である土地の贈与の方が、現金を贈与するよりも有利な場合があります。関連ページ
参考ページ1参考ページ2
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《相続税評価額の大きいものから小さいものへの組換え》
時価が同じであっても、相続税評価額の大きいものから小さいものへの組換えを行います。
※時価が等価でも、相続税評価額も等価とは限らないので、交換の特例の適用を受け、同じ時価でも相続税評価額の低い資産に組換えられます。
【土地建物の交換をしたときの特例】
個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。【設例】
同じ時価で、父所有のA土地(相続税評価額8,000万円)と子所有の土地(相続税評価額6,000万円)を交換すれば、譲渡課税なしで父の相続において2,000万円の相続税評価額の軽減が出来ます。
☆『同じ時価』であることがポイント、時価に差があると交換の特例が適用できない場合があります。関連ページ
参考ページ1 -
《小規模宅地等の特例による評価減割合の小さいものから大きいものへの組換え》
小規模宅地の特例では、減額できる土地の面積に制限を設けています。
そこで、同じ面積の土地を比べると、単価の高い土地の方が減額できる評価の額が大きくなります。
【事例で検証】
時価と相続税評価額が同じ土地、A土地とB土地を交換します。
A土地(時価1億円、相続税評価額8,000万円、父所有、500平米)⇔B土地(時価1億円、相続税評価額8,000万円、子所有、200平米)
①交換による相続税評価額の増減はありません。
②小規模宅地等の特例の適用を受ける場合(貸付事業用宅地として)
③A土地は500平米の内200平米部分の宅地について50%の減額を受けるのに対し、B土地は全部について小規模宅地等の特例の適用を受けられます。
(効果)
①交換前のA土地の相続税評価額:8,000万円−(8,000万円x(200平米÷500平米)x50%)=6,400万円
②交換後のB土地の相続税評価額:8,000万円−(8,000万円x(200平米÷200平米)x50%)=4,000万円
よって、交換により2,400万円の評価減ができます。<貸付事業用宅地等の範囲の見直し>
平成30年4月より、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外される(事業的規模で貸付けを行っている場合は除く)こととなりました。
【事業的規模で貸付けを行っている場合とは?】
事業的規模で貸付けを行っているかは、所得税の不動産所得における「5棟10室基準」等で判定します。
所得税の不動産所得における「5棟10室基準」とは、以下のとおり、その不動産所得に係る建物の貸付けが事業的規模であるか否かを判定する形式的な基準をいいます。
●所得税の不動産所得における「5棟10室基準」(所基通26-9)
次に掲げる事実のいずれかに該当する場合、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。
小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等について、原則相続開始前3年以内に貸し付けを始めたものはその対象から除外されることとなりますが、上記の基準を満たす場合を「特定貸付事業」として、その3年以内に貸し付けたものも対象となる例外措置が設けられています。☆「貸付事業用宅地」と「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「特定居住用宅地等」のうち、いずれか2以上についてこの特例の適用を受けようとする場合は、調整計算で不利になる場合がありますので、十分注意が必要です。なお、この調整計算は平成27年1月1日以降より変更されています。
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《底地と借地権の交換》
地主にとっては、借地権者に土地を貸すことで、自分の土地にいつの間にか権利がついてしまい、底地の相続税評価額は自用地価額の3~4割にもなり、相続税負担は大変重いものになります。
借地権者にとっては、土地を借りて使用している分には特に問題はありませんが、契約更新時や建物の建て替えの場合、更新料又は承諾料等の負担が必要になります。また、借地権を単独で売ることは難しく、地主同様相続が発生すれば権利が分散し、財産分けでもめることもあります。
そこで、底地・借地の関係を、底地と借地権の交換により解消しておくことで、地主・借地人双方にとって、物納・相続税の納税の為の現金化が容易になります。
①底地と借地権を等価交換し、土地を一定の割合で地主と借地人の間で分ける方法です。
②底地(借地)の面積が大きく、建物が乗っていない土地の面積が広く、接道条件が良い場合などに採用されます。【交換の特例を受ける】
借地権と底地を交換する際には、一定の条件を満たせば譲渡所得の交換の特例を受けることができます。
これは固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例であり、これを固定資産の交換の特例といいます。
※交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。【貸宅地(底地)】
貸宅地(底地)は、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている土地で、自分の所有する土地を他人が所有する住宅のために貸している場合の土地のことをいいます。
※貸宅地の価額は、その宅地の上に存する権利の区分に応じて評価します。
☆交換には、同種の資産という条件以外にも条件がありますので、注意してください。関連ページ
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《宅地の利用区分を変更する》
宅地の利用区分の変更で、宅地の相続税評価額を引下げることが出来ます。
【二方の路線に面している宅地や角地等の宅地の場合】
二方の路線に面している宅地や角地等の宅地の場合、路線価の高い方の価格を使って土地の相続税評価額を求めます。
そこで、一方にアパートを新築する等して利用区分を変更すると、それぞれの宅地が面している道路の路線価で評価されて、宅地の評価額を大きく下げることが出来ます。
【所有する宅地の一部に定期借地権等を設定する場合】
二方の路線に面している宅地で、一方にアパートを新築する時間がないような場合、同族法人等があれば、その法人に対して定期借地権を設定する等すれば、その土地の一部が貸宅地となり利用区分を変えられます。
【宅地の評価の単位】
宅地の価額は1画地の宅地ごとに評価し、「1画地の宅地」は利用の単位となっている1区画の宅地のことをさすので、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、2筆以上の宅地からなる場合や、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合があります。
☆土地有効活用による対策には、相続税の軽減以外にも、固定資産税等の軽減や消費税の還付といった税効果が期待できる対策もあります。関連ページ
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《親の土地に子供が建てたアパートを親に売却する》
多くの場合、親子間での土地の貸借では、親の土地の上に子がアパートを建築して活用しているケースが多く見られます。その場合、子が親に地代等の支払をしていない、「使用貸借」のケースが大半と思われます。
【使用貸借の問題点】
個人間において使用貸借による土地貸借が行われた場合、地主及び借地人共に課税関係は生じないので、地主の土地は「自用地」として評価され、借地人の借地権はゼロとされます。
すなわち、この形態では、まったく評価を下げることができないということになります。
【貸家建付け地に変える】
子所有の貸家(アパート等)を親へ時価で譲渡すると、親所有の土地が、自用地から貸家建付地として評価され、財産を軽減することが出来ます。
【貸家建付地の評価方法】
(その宅地の自用地としての価額)-{(その宅地の自用地としての価額)x(借地権割合)x(借家権割合)x(賃貸割合)}
☆相続人が複数いる場合、子供が建てたアパートを親に譲渡すると、親の相続の時、必ずしもそのアパートを建てた子が相続出来るとは限らないので注意が必要です。関連ページ
参考ブログ1 参考ページ1
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《親の土地に子供が建てたアパートを子供が経営する同族会社に売却する》
アパートを所有する子が、自分が経営する同族会社にアパートを売却し、アパートが建っている親の土地は『賃貸借』とします。そして、『土地の無償返還に関する届出書』を提出することで、その敷地の評価額を引下げる方法があります。
【土地の無償返還に関する届け出書とは?】
借地権の設定に際して、権利金の支払を受けず、かつ相当の地代の収受がない場合、借地人である法人が将来その土地を無償返還する旨を、地主と借地人双方連名で、地主の納税地の税務署長に提出する書面のことです。
☆この『土地の無償返還に関する届出書』を提出していないと、法人が権利金に関する認定課税を受けることがありますので、要注意です。【対策の効果】
①建物の所有者である同族会社が『通常の地代』を支払い、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合は、当該敷地は「自用地評価x80%」として評価されます。
②同族会社の株式を純資産価額方式で評価する時は、「自用地評価x20%」相当額の資産が法人にあると評価され、結果として自社株の評価額が上昇することになりますが、当該会社の株主を子供や孫にしておけば、親の相続財産には影響を受けません。
③親はアパートを取得しないので、「親の土地に子供が建てたアパートを親に売却する」する対策よりは節税効果は小さくなりますが、アパートを所有する子は、アパートを同族会社に売却した後もその土地の使用を続けていることになり、親の相続の際にはそのアパートを相続する可能性は高いと予想されます。
【通常の地代】
通常の地代とは、借地権の取引慣行のある地域において、その借地権部分を所有している借地人が、その借地権の底地部分を借りるために支払う地代のこと。
☆地代には、『通常の地代』と『相当の地代』という区分があります。2つの違いには注意が必要です。関連ページ
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《親の住居について小規模宅地の特例を使う》
【「家なき子」 要件変更により一部が適用外に】
この特例が活用できれば、330平米(100坪)までの宅地について、80%の評価減を受けることができます。
その要件は、大きく分けると、亡くなった方が住んでいた場合とそうでない場合とに分けられます。
《亡くなった方が住んでいた宅地の場合》
☆「被相続人と生計を一にする」という要件はありません。
(1)配偶者 ⇒ 無条件(住み続けなくてもよい)、配偶者が相続した場合、相続税の申告期限まで住み続ける必要はありません。
(2)同居していた親族 ⇒ 相続開始直前に亡くなった方の家にその方と同居し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで保有している人。
(3)上記(1)(2)以外の親族(別居親族いわゆる「家なき子」)。
次の①~③に該当する場合で、かつ、次の④及び⑤の要件を満たす人。
※持家を持たない同居していない親族が亡くなった方の住んでいた宅地を承継した場合、居住継続用件はないので、改正後も同様に特定居住用宅地等としての適用が受けられる。(家なき子の取得)
<亡くなった方の状況に関して>
①相続開始の時において、亡くなった方もしくは相続人が日本国内に住所があり、相続人が日本国内に住所が無い場合は、日本国籍が有ること。
②亡くなった方に、相続開始の時に配偶者がいないこと。
③亡くなった方に、相続開始の直前に亡くなった方の家にその方と同居していた親族で、亡くなった人の相続人である人がいないこと。
※相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人がいないこと。
<別居親族いわゆる「家なき子」の状況に関して>
④相続開始前3年以内に、日本国内にある、その人又はその人の配偶者の所有する家に住んでいたことがないこと。
※相続開始の直前において亡くなった方の家だった場合を除きます。
⑤その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。
平成30年4月より、小規模宅地等の特例を使用した過度な節税を防止するために、次に該当する者は「家なき子」から除外されることとなりました。
(1) 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別な関係のある法人が有する国内にある家屋に居住したことがある者
(2) 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者《亡くなった方と『生計をー』にする『亡くなった方の親族』が住んでいた宅地の場合》
☆亡くなった方の住まいではないことに注意
(1)配偶者 ⇒ 無条件(住み続けなくてもよい)
(2)亡くなった方と生計を一にしていた親族 ⇒ 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家に住んでいて、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで保有している人。
【生計を一にするとは?】
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。
例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除いて、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。☆二世帯住宅に居住していた場合や亡くなった方が老人ホームなどに入居又は入所していた場合も、一定の要件を満たす場合は適用が可能です。
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《親の事業や親族が営む事業に使われている宅地に小規模宅地の特例を使う》
この特例が活用できれば、400平米までの宅地について、80%の評価減を受けることができます。
その要件は、大きく分けると、亡くなった方が営んでいた事業とそうでない場合とに分けられます。
《亡くなった方が事業を行っていた場合》
①事業承継要件 ⇒ その土地で営まれていた亡くなった方の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること。
②保有継続要件 ⇒ その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。
【事業の同一承継か否かの判定?】
事業の同一承継か否かは、『日本標準産業分類』の分類項目等を参考にして総合的に判断することが合理的と考えられます。
☆医業を営んでいた場合も該当しますが、「内科」から「歯科」に変わる場合などは、注意が必要です。
《亡くなった方と生計を一にしていた親族が事業を行っていた場合》
①事業承継要件 ⇒ 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その土地で事業を営んでいること。
②保有継続要件 ⇒ その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。
※生計が一か否かは、同居の場合、原則として生計を一にするものとして判定します。別居の場合、一般的には生計を別にするものとして判定しますが、別居親族への生計費の送金及び職業の有無や各種状況等を総合勘案します。
【生計を一にするとは?】
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。<2019年度税制改正 「特定事業用宅地等」の範囲に新たな制限>
「特定事業用宅地等」の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以下である場合を除く)を除外することとなりました。
なお、この改正は2019年4月1日以後の相続等に適用されますが、同日前から事業の用に供されている宅地等には適用しないこととされています。関連ページ
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《亡くなった方及びその親族等が50%超出資している会社の事業に使われている土地に小規模宅地の特例を使う》
この特例が適用される会社を「特定同族会社」、宅地を「特定同族会社事業用宅地等」と呼びます。
この特例が活用できれば、亡くなった方及びその親族等が50%超出資している会社の事業に使われている土地について、400平米まで、80%の評価減を受けることができます。【適用となる要件】
①特定同族会社は、亡くなった方及びその親族等が50%超出資している会社であること。
②その土地を承継する、親族が相続税の申告期限においてその法人の役員であること。
③その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること。
④申告期限まで、その事業の用に供されていること。
☆『事業用』の宅地等であることに注意する必要があります。
《出資要件の『被相続人及び被相続人の親族等』という表現について》
『親族』とは、6親等内の血族及び3親等内の姻族と定義されています。
☆親族等の『等』という表現で、その範囲は相当に広がっていることに注意してください。関連ページ
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《亡くなった方及びその親族等の貸付事業に使われている土地に小規模宅地の特例を使う》
この特例が活用できれば、亡くなった方及びその親族等の貸付事業に使われている土地について、200平米まで、50%の評価減を受けることができます。
【貸付事業用宅地等】
①貸付事業用宅地等に該当する場合で、相続人等が相続税の申告期限迄自己の貸付事業の用に供することが要件とされています。
②貸付けられた不動産が事業の用に供された宅地等に該当するかは、その貸付けが『事業』として行われたかどうかで判断します。
③この特例の適用を受ける為には、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む)に、この特例の適用を受ける旨を記載し、一定の書類を添付して提出しなければなりません。
【事業とは?】
貸付事業宅地等の事業の判定は、相当の対価を得て継続的に貸付け等の行為を行っているかどうかで行います。<貸付事業用宅地等の範囲の見直し>
平成30年4月より、相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外される(事業的規模で貸付けを行っている場合は除く)こととなりました。
【事業的規模で貸付けを行っている場合とは?】
事業的規模で貸付けを行っているかは、所得税の不動産所得における「5棟10室基準」等で判定します。
所得税の不動産所得における「5棟10室基準」とは、以下のとおり、その不動産所得に係る建物の貸付けが事業的規模であるか否かを判定する形式的な基準をいいます。
●所得税の不動産所得における「5棟10室基準」(所基通26-9)
次に掲げる事実のいずれかに該当する場合、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。
小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等について、原則相続開始前3年以内に貸し付けを始めたものはその対象から除外されることとなりますが、上記の基準を満たす場合を「特定貸付事業」として、その3年以内に貸し付けたものも対象となる例外措置が設けられています。☆「相当の対価」、「継続的に貸付」に該当するかどうか、注意が必要です。
《この特例を検討するべきケース》
①亡くなった方に配偶者がなく、「同居していた親族」もなく、推定相続人がすべて自己の所有する家屋に住んでいるような場合、亡くなった方の自宅に「特定居住用宅地等」の特例(80%の評価減)が適用されませんので、「貸付事業用宅地等」の適用を検討しましょう。
②自己所有の居住用不動産がない場合(賃貸物件に住んでいる場合)だとか区分所有のマンションに住んでいる場合には、「貸付事業用宅地等」の適用を受けることができます。
☆貸家建付け地の評価減と合わせて「貸付事業用宅地等」に該当すれば、さらに大きな評価減が実現できるので要チェックです。関連ページ
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《土地建物の交換をしたときの特例》
個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
【特例を受けるための適用要件】- 不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。
- 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。
- 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
- 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
- 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
- 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。
【交換譲渡資産の種類とその用途区分】
(種類) 土地 ⇒ (区分) 宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他
(種類) 建物 ⇒ (区分) 居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用
☆土地建物の交換をする際に、相手方から差額代金を受取ると課税が生じたり、制度が適用できなくなる場合があるので注意が必要です。また、差額代金とみなされるのは、金銭だけではありません。関連ページ
参考ページ1
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《基本的な金融資産対策》
金融資産とは、現金・預金、株式・出資金、株式以外の国債や投資信託などの証券、金融派生商品、保険準備金・年金準備金、ゴルフ場への預託金などの預け金等、対外証券投資を含む対外債権等です。
①非課税財産に組み換えます。
②時価よりも相続税評価額の低い財産に組み換えます。
③相続発生後に預貯金等の名義変更手続を最小限にする為に、銀行口座の解約等で口座数を減らしておきましょう。☆「現金」、「預貯金」、「上場株式」、「非上場株式」、「投資信託」、「債権」等の金融資産の評価の方法と評価額を確認しておきましょう。
関連ページ
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《生命保険の活用》
相続させたい資産が金融資産の場合、生命保険を活用することで現預金を非課税財産に組み替えたり、若いうちに加入しておけば、万一のときの納税資金が効率よく準備できます。
【生命保険活用の目的を考えましょう】
生命保険の役割は、年齢、家族構成などの要因で変わってきますので、以前加入した保険が現在、そして将来の役に立つかどうかをしっかり判断する必要があります。
①残された家族の生活や教育のために活用する。
②病気や怪我、障害、介護等にたいする備えとして活用する。
③借入金の返済のために活用する。
④保険金の非課税額(法定相続人数×500万円)を活用して、現預金を非課税財産に換える。
⑤特定の相続人に金融資産を遺すために活用する。
⑥財産を公平に分割するための代償資金として活用するために活用する。☆健康上の理由や年齢制限で、一般の生命保険に加入不可の場合でも、生命保険を活用して、特定の相続人に金融資産を遺したり、財産を公平に分割するための代償資金として活用する方法があります。
関連ページ
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《20年以上連れ添った配偶者への贈与》
不動産の相続対策とは?のところにも登場する、贈与の特例です。
婚姻期間が20年以上などの要件を満たす配偶者に対して、マイホームの家屋やその敷地である土地、あるいはマイホームの取得資金を贈与した場合には、通常の110万円の基礎控除の外に2,000万円の「配偶者控除」が受けられます。【適用条件】
①婚姻期間が20年を過ぎた後に行われた配偶者間の贈与であること。
※婚姻期間とは、役所への婚姻の届け出をした日から贈与を受けた日までの年数で、1年未満は切り捨てられます(内縁関係の場合適用されせん)。
②贈与された財産が居住用不動産又は居住用不動産取得の為の金銭であること。
③贈与された年の翌年3月15日迄に、贈与された居住用不動産又は贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであること。
④同じ配偶者から過去にこの特例の適用を受けていないこと。
⑤一定の書類を添付して贈与税の申告をすること。【メリット】
贈与された居住用財産等は、相続開始前3年以内の贈与でも「生前贈与加算」の対象外なので、2,000万円迄の居住用財産が相続税も贈与税も課税されずに移転され、相続財産の減少を図れます。
【注意点】
相続発生年に実行した場合、受贈配偶者は贈与を受けた年の翌年に、贈与税の配偶者控除の適用を受ける旨の贈与税の申告が必要となります。
※これがないと、贈与財産は、相続税の課税価格に加算されてしまうので注意が必要です。
☆マイホームの家屋やその敷地である土地の贈与の方が、現金を贈与するより有利な場合があります。関連ページ
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《年齢や健康上の理由で入れない人の生命保険活用》
年齢や健康状態に問題があり、生命保険に加入できない状況の方でも、保険料の負担者となることで、生命保険を活用することができます。
ここでは、生命保険金の非課税枠は適用できないものの、相続発生後の活用範囲が広い、被相続人以外の方を被保険者とする保険活用を考えます。
①被保険者を被相続人以外の者にして、現金を生命保険契約に組み換える場合、保険契約者を特定の相続人にしておくことが重要です。
②解約を前提として保険契約に組み換える場合、あらかじめ解約返戻率が高い保険商品を選ぶようにします。
【契約形態の例】
①保険契約者:長男
②保険料負担者:父
③被保険者:長男
④保険金受取人:父(父死亡後も保険契約継続の場合は、長男の子もしくは妻を受取人に変更します。)
※万一、長男が父よりも先に亡くなった場合には、保険金は父の一時所得となります。【メリット】
①被保険者を被相続人以外の者にして、現金を生命保険契約に組み換えた場合、相続にてこの保険契約を取得後、保険契約を解約して現金化することも、保険契約を継続することもできます。
②保険契約者の財産として、遺産分割協議を経ないで、この保険契約の取得者が確定します。
☆保険契約者を保険料負担者である、被保険者自身にしてしまうと問題が起こる場合があります。関連ページ
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《現金・預金の相続対策としての不動産の購入》
不動産の場合、相続税評価額は時価よりかなり低い評価になりますので、時価との差額が評価減になりまし。
そこで、所有資産のほとんどが金融資産である場合には金融資産から不動産へと資産の組み換えを行ないます。【居住用不動産を購入する場合】
居住用不動産の取得(時価>相続税評価額の場合)
時価と相続税評価額にかなりの乖離が予想される場合は、相続税負担を相当軽減させることが期待出来ます。
【居住用不動産の取得のメリット】
①居住用不動産の敷地については330平米まで80%評価減ができる小規模宅地の特例を適用できます。
②建物の相続税評価額は、建築費の約40%程度になるので、資産の圧縮効果があります。【賃貸用不動産を購入する場合】
賃貸用不動産の取得(時価>相続税評価額の場合)
時価と相続税評価額にかなりの乖離が予想される場合は、相続税負担を相当軽減させることが期待出来ます。
【賃貸用不動産の取得のメリット】
①自己所有の居住用不動産がない場合(賃貸物件に住んでいる場合)だとか区分所有のマンションに住んでいる場合には、貸付事業用宅地等として小規模宅地として200平米まで50%の評価減を受けることができます。
※自己所有の居住用不動産がある場合は、居住用不動産の敷地について、小規模宅地の特例を適用する方が有利と考えられます。
②亡くなった方に配偶者がなく、「同居していた親族」もなく、推定相続人がすべて自己の所有する家屋に住んでいるような場合、亡くなった方の自宅に「特定居住用宅地等」の特例(80%の評価減)が適用されませんので、「貸付事業用宅地等」の適用を検討しましょう。
③賃貸用不動産は、敷地については貸家建付け地の評価になり、建物も時価よりかなり低い評価になることが予想されますので、大きな資産圧縮効果が期待できます。☆賃貸用不動産の時価<相続税評価額の場合でも、効果を発揮する場合が考えられます。
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《特定障害者》
特定障害者とは、特別障害者及び障害者のうち精神に障害のある方をいいます。
【特定障害者に対する贈与税の非課税制度】
①国内に住所を有する特別障害者の為の「特定障害者扶養信託契約」に基づく信託受益権で、6,000万円迄は贈与税の課税価額に算入されません。
②平成25年4月以降は、適用対象者に、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター又は精神保健指定医の判定により中軽度の知的障害者とされた方及び精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級又は3級である方として記載されている精神障害者を加え、その非課税限度額は3,000万円です。
☆この制度を活用する場合は、併せて暦年贈与、または、相続時精算課税制度についても検討が必要です。関連ページ
参考ページ1 -
《暦年贈与を活用する》
暦年贈与とは、贈与税の暦年課税制度の贈与のことで1月1日から12月31日までの間(暦年)に贈与を受けた金額が110万円(基礎控除額)以下なら贈与税がかからない制度です。
※この基礎控除の限度額は、贈与を受ける者一人について110万円です。贈与する者ではありませんので、注意してください。
【暦年贈与の効果】
(1)その年ごとに贈与を行うので、税制改正等のリスクを回避出来ます。
相続税では、税制改正によっては節税効果が大きく減ってしまう可能性がありますが、贈与税は贈与のあった年の税法で課税されるからです。
(2)暦年贈与は相続開始前3年内の贈与分についての加算だけで、それ以外の贈与分には相続税がかかりません。
①相続開始前3年内に被相続人から暦年贈与によって生前贈与で取得した財産は相続財産に持ち戻して相続税を計算することになります。
②その生前贈与に対して支払った贈与税があれば、その者の相続税額から贈与税額を差し引いて相続税を納付することになります。
※ただし、払い過ぎた贈与税は還付されません。
【具体例と効果】
10年あれば、暦年贈与だけで多くの人は相続税対策が出来ることになります。
法定相続人が子2人でそれぞれ家族3人の場合、子の家族全員に贈与すれば受贈者数は合計6人になり、10年間継続して一人当たり110万円贈与すれば、6,600万円を非課税で生前贈与出来ます。《特例贈与財産とは?》
平成27年1月1日以降の暦年贈与の場合において、直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与により取得した財産で、受贈した者が、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の場合、この取得した財産を「特例贈与財産」といい、「特例税率」を適用することになります。
※特例税率は一般税率に比べて低い税率が適用されます。
※「特例贈与財産」以外の特例税率の適用がない財産を「一般贈与財産」といい、特例税率と区分して「一般税率」といいます。☆生前贈与を活用した相続対策を行う年齢を考える場合は、平均余命を考慮して検討してはいかがでしょうか?
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《贈与する金額を考える基準》
暦年贈与を活用して贈与を行う場合には、いくらの金額を贈与するかで悩むところです。
暦年贈与とは、贈与税の暦年課税制度の贈与のことで1月1日から12月31日までの間(暦年)に贈与を受けた金額が110万円(基礎控除額)以下なら贈与税がかからない制度です。
※この基礎控除の限度額は、贈与を受ける者一人について110万円です。贈与する者ではありませんので、注意してください。
【110万円の基礎控除以下の贈与】
110万円以下の贈与には、贈与税の課税はありません。
☆贈与税が課税されないからといって、何もしなくていいわけではありません。
《相続税の最低税率10%に相当する贈与税額負担を考える場合》
平成27年1月1日以降の暦年贈与の場合において、直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与により取得した財産で、受贈した者が、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の場合、この取得した財産を「特例贈与財産」といい、「特例税率」を適用されますが、この「特例税率」は一般税率に比べて低い税率が適用されます。
そこで、以下の二つのケースについて、それぞれ検討してみます。
※「特例贈与財産」以外の特例税率の適用がない財産を「一般贈与財産」といい、特例税率と区分して「一般税率」といいます。【一般贈与財産の場合】
470万円以下の贈与は、470万円の場合で、(470万円-110万円)×20%-25万円=47万円の贈与税が課税されます。
この金額までは贈与した金額に対して10%の贈与税の負担率となります。【特例贈与財産の場合】
※贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上(その年の1月1日に20歳になるか前の年に20歳)の子や孫への贈与
520万円以下の贈与は、520万円の場合で、(520万円-110万円)×20%-30万円=52万円の贈与税が課税されます。
この金額までは贈与した金額に対して10%の贈与税の負担率なります。関連ページ
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《相続時精算課税とは?》
生前に贈与した時点では、贈与税の全部もしくは一部が免除されて、相続が発生した時に、改めて生前に贈与した財産も含めて相続財産を計算し、相続税を精算する制度です。
【相続時に精算する手順】
①特定の贈与者からの贈与について、その贈与者から1年間に贈与を受けた財産(相続時精算課税適用財産)の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
②将来その贈与者が死亡すると、相続時精算課税適用財産の価額(贈与時の時価)と相続又は遺贈を受けた財産の価額(相続時の時価)の合計額を基に計算します。
③その相続税額から、既に支払った相続時精算課税適用財産に係る贈与税相当額を控除した金額をもって納付すべき相続税額とします。
※相続税額から控除しきれない贈与税相当額については、還付を受けられます。【相続時精算課税制度を適用した場合の贈与税】
相続時精算課税の選択をしてから受贈した贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用出来る2,500万円(特別控除額)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出した金額が納付する贈与税額となります。
※この特別控除は、贈与する者一人について2,500万円です。贈与を受ける者ではありませんので、注意してください。
【計算式】
{贈与財産の価額-2,500万円(特別控除)}x20%=贈与税額
※暦年贈与の基礎控除110万円は適用されません。
☆既に暦年贈与を行っている場合や既に相続時精算課税制度を活用している場合の贈与方法の変更には注意が必要です。関連ページ
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《子や孫に住宅取得資金を贈与する》
子や孫に住宅取得資金を贈与する場合、『直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与の特例』を活用することができます。
平成24年1月1日~平成33年12月31日の期間で、直系尊属(父母・祖父母等)からの贈与で、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の「新築」若しくは「取得」又は「増改築」のための金銭(住宅取得等資金)を取得した場合、一定の要件を満たせば一定額まで贈与税が無税になります。
なお、「新築」若しくは「取得」又は「増改築」には、その目的用に供される土地等の取得も含まれています。
【適用限度額】
<消費税が8%の場合>
①省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋
~平成27年12月:1,500万円(東日本大震災被災者1,500万円)
平成28年1月~平成32年3月:1,200万円万円(東日本大震災被災者1,500万円)
平成32年4月~平成33年3月:1,000万円(東日本大震災被災者1,500万円)
平成33年4月~平成33年12月:800万円(東日本大震災被災者1,500万円)
②一般の住宅用家屋
~平成27年12月:1,000万円(東日本大震災被災者1,000万円)
平成28年1月~平成32年3月:700万円万円(東日本大震災被災者1,000万円)
平成32年4月~平成33年3月:500万円(東日本大震災被災者1,000万円)
平成33年4月~平成33年12月:300万円(東日本大震災被災者1,000万円)
☆消費税率が引き上げられて10%になった場合は適用限度額が増額されますので、ご注意ください。
【暦年贈与もしくは相続時精算課税制度と併用】
①この非課税枠は暦年贈与もしくは相続時精算課税制度と併用可能です。
②この特例を利用して非課税となった分の金額(基礎控除は含めない)は暦年贈与併用の場合で、相続開始前3年内の贈与加算の適用はありません。
③相続精算課税併用の場合、相続時の持ち戻しになるのは相続時精算課税制度の適用となった金額までで、この特例を利用して非課税となった分の金額は含めなくてOKです。
☆良質な住宅用家屋には、耐震基準やエネルギー消費量等級の他、改修工事なども対象になる場合がありますので、ご確認ください。関連ページ
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《子や孫に結婚・子育て資金を贈与する》
子や孫に結婚・子育て資金を贈与する場合、『直系尊属から結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の贈与の特例』を活用できます。
2015年4月1日~2021年3月31日に、直系尊属(父母・祖父母等)からの贈与で、子あるいは孫等が、自己の「結婚」・「子育て」のための金銭を取得した場合、適用上限金額は、贈与を受ける者一人あたり1,000万円まで非課税となります。<2019年度税制改正>
適用期限が2年延長(2021年3月31日まで)された他、受贈者の合計所得金額が1,000万円超の場合は適用できないこととする措置が設けられています。
【贈与を受けた金銭を払出せる条件】
①結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)に要する費用、住居に要する費用及び引越しに要する費用のうち一定のものが該当します。
※結婚に際して支出する費用については300万円を上限となります。
②妊娠に要する費用、出産に要する費用、子の医療費及び保育料のうち一定のものが該当します。
※不妊治療に要する費用も含まれます。《特例の適用要件》
①贈与された金銭の払出には年齢制限があります。
信託銀行等が領収書等によって結婚・子育て目的であることを確認し払出すことができるのは、受贈者が50歳になるまで。
②結婚・子育て資金非課税申告書の提出が必要です。
贈与を受ける者は、信託される日、預貯金の預入の日、有価証券の購入日までに、信託銀行、金融機関、証券会社等を経由して所轄の税務署に教育資金非課税申告書を提出しなければなりません。
※提出できるのは1ヵ所のみなので、使える手段も1種類となります。
☆贈与を受けた金銭に使い残しがある場合や贈与を受けた者が50歳になる前に贈与した者が死亡した場合は、課税が発生する場合があります。関連ページ
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《子や孫に教育資金を贈与する》
子や孫に教育資金を贈与する場合、『直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合の贈与の特例』を活用できます。
2021年3月31日までの間に直系尊属(祖父母や実親)から子や孫へ教育資金を一括贈与する場合、受贈者一人あたり1,500万円まで非課税となります。
【贈与を受けた金銭を払出せる条件】
①学校教育法に定められている学校、専修学校、各種学校等に支払われる入学金、授業料。
②学校等以外に支払われる教育に対する対価は500万円が上限となります。
③教育資金の使途の範囲には、通学定期券代、留学渡航費等も含まれます。<2019年度税制改正>
●非課税措置の期限延長
2019年度税制改正にて、適用期限が2年延長(2021年3月31日まで)されました。
●その他、受贈者の合計所得金額が1,000万円超の場合は適用できないこととするなどの措置が設けられています。
《特例の適用要件》
①贈与された金銭の払出には年齢制限があります。
信託銀行等が領収書等によって教育目的であることを確認し払出すことができるのは、受贈者が30歳になるまで。
※使い残しには、その時点で贈与税が課税。
②教育資金非課税申告書の提出が必要です。
贈与を受ける者は、信託される日、預貯金の預入の日、有価証券の購入日までに、信託銀行、金融機関、証券会社等を経由して所轄の税務署に教育資金非課税申告書を提出しなければなりません。
※提出できるのは1ヵ所のみなので、使える手段も1種類となります。
【提出する書類に関する緩和措置】
金融機関への領収書等の提出について、平成28年1月1日以降に提出する書類は、領収書等に記載された支払い金額が1万円以下で、かつその年中における合計支払額が24万円に達するまでのものについては、当該領収書に代えて支払先、支払金額等の明細を記載した書類を提出することができるようになりました。【金融機関等に提出する領収書等の提出方法拡大】
受贈者が金融機関等に提出する領収書等について、これまで書面による提出が必要とされていましたが、平成29年6月1日以降は、書面による提出に代えて、PDFファイル等の電磁的記録により提出することができるようになりました。☆贈与を受けた金銭に使い残しがある場合は、課税が発生する場合があります。また、贈与した者が死亡した場合の取扱いにも注意が必要です。
関連ページ
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《遺留分と特別受益の関係》
遺留分では、『特別受益財産』も遺留分の算定の基礎財産となりますので、特定の相続人に贈与を行う場合には十分に注意が必要になります。【特別受益とは?】
生前に特別の利益を受けていた相続人がいる場合は、遺産分割の際に受け取る財産の「前渡し」を受けていたものとして扱われ、この前渡し分を「特別受益」といいます。
この特別受益は、何年前であっても相続財産に持ち戻されます。
※「特別受益」は相続財産に持ち戻して計算し、生前贈与を受けていた相続人は最終的に相続財産から生前贈与分を差引かれて遺産分割されることとなります。【特別受益の持ち戻し評価方法】
①特別受益は、特別受益を受けた当時の価額ではなく、相続開始時の価額(時価)で評価します。
②貨幣価値の換算には消費者物価指数等を使用して換算します。
※30年前に婚姻をしたときに支度金として50万円をもらった場合、そのまま50万円で計算するのではなく、現在の貨幣価値に換算した金額で計算します。
※生前贈与を受けた自社株は、贈与時点の評価額ではなく、相続開始時の評価額となります。☆過去に贈与を受けた財産が現在存在しない場合の取扱いには注意が必要です。
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《遺言を書くという方法》
「○○に財産を相続させる」旨の遺言を書く方法があります。
遺言書に「遺言者所有の○○○を××に相続させる」と記載すると、相続によってその財産が特定の相続人に承継されます。
遺産分割協議や家裁審判を経たり、相続人が優先権を主張する必要もありません。
☆特定遺贈の場合の遺言の文言並びに、相続させる物によって記載方法や記載事項に関する細かな注意点がありますので確認が必要です。関連ページ
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《死亡保険金が「一時所得」となる生命保険の活用》
死亡保険金が、「一時所得」となるような契約形態で受取る死亡保険金は、受取人の一時所得として課税され、相続税の対象となりません。
そのため、被相続人が保険料を特定の相続人に贈与して、その相続人が被相続人を被保険者、保険金の受取人を自分とする生命保険に加入すると、被相続人が死亡した場合に、その相続人が受取る死亡保険金は「一時所得」となり、相続税の対象となりません。
【契約形態】
契約者 ⇒ 特定の相続人(保険料の贈与を受けた「子」等)
被保険者 ⇒ 被相続人(保険料の贈与者)
受取人 ⇒ 特定の相続人(契約者と同一)【活用のメリット】
①贈与する金額によっては、相続税よりも税負担が軽減できる場合があります。
②他の相続人に知られずに、特定の相続人に生命保険金を受け取らせることができます。
☆贈与された保険料に関しては、相続が発生した時期や贈与された相続人と他の相続人との関係によっては、思わぬ事態が起こることがありますので注意してください。関連ページ
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《相続を放棄した後に保険金を受取る》
相続を放棄した場合でも、被相続人の本来の財産でない生命保険金や死亡退職金は受け取ることができます。【相続放棄の手続き】
相続人は、『相続があったことを知った時』から3ヶ月以内に相続放棄したい旨を家庭裁判所に申し出ることが出来ます。
※申出がない場合、単純承認(全ての財産・債務を承継すること)がなされたとみなされます。
※いったん相続放棄した場合、たとえ3ヶ月以内であっても、一定の事由がある場合以外は撤回ができませんので、被相続人の遺産をよく調べてから放棄することが必要となります。☆相続放棄をした場合は、保険金の非課税額の規定に注意が必要です。また、配偶者が相続放棄する場合には、配偶者の税額軽減措置への配慮も必要になります。
関連ページ
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《分割協議なしに受取れる生命保険》
生命保険の契約は、『契約者』と『保険料を払う人』との関係で、遺産分割協議が必要な場合と必要ない場合とに区別されます。
そこで遺産分割協議が必要ない契約形態で、生命保険を活用すれば、特定の相続人に財産を遺すことができます。
※このように、遺産分割協議を必要としないで受取人固有の財産として取得することが可能な財産を『みなし相続財産』と呼び、遺産分割協議を必要とする財産とは区別して扱います。《遺産分割協議が必要ない契約形態》
通常は、被相続人が保険料を負担し、同時に契約者、被保険者となります(契約形態①)が、年齢や健康状態によっては、被相続人が被保険者になれない場合があります。
そのような場合には、保険料負担のみ被相続人が行います(契約形態②)。【契約形態 ①】
死亡保険金が『みなし相続財産』となるケース
契約者 ⇒ 被相続人
被保険者 ⇒ 被保険者
受取人 ⇒ 特定の相続人
保険料負担者 ⇒ 契約者である被相続人
【契約形態 ②】
保険契約を解約した場合に受取れる金額(解約返戻金額)が『みなし相続財産』となるケース
契約者 ⇒ 特定の相続人
被保険者 ⇒ 特定の相続人やその子、配偶者など
受取人 ⇒ 被相続人(被相続人がなくなった後も継続する場合は、被保険者の相続人となる者等に変更します)
保険料負担者 ⇒ 受取人である被相続人
※受取人を被相続人としておくのは、万一被相続人よりも先に、被保険者が死亡した場合、被保険者の相続人等にしておくと、保険金が贈与税の対象となってしまいます。そこで、その保険金を被相続人の一時所得することで、財産の現状復帰と再度の対策実行を実現可能にします。☆契約形態②で、保険料を負担する、被相続人が契約者となっていまうと、他に相続人がいる場合に問題が起こる場合があります。また、一般的に保険料負担者の被相続人が契約者となって、相続人やその子などが被保険者となっている保険契約は多いと思われますので、確認が必要です。
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《遺留分に気をつける》
相続人が自分の取り分として主張出来る、相続財産における一定の割合で、不当な遺言をされた相続人や特定の贈与を受けた相続人から他の相続人を救済するもので、配偶者・子・直系尊属に認められ、兄弟姉妹には認められません。
争族を防ぐ意味でも、各相続人の遺留分を考慮したうえで、特定の相続人に財産を遺す工夫をするようにしたほうがよいと考えられます。
【相続人に兄弟姉妹がいる場合に遺言が有効なケース】
①配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合で配偶者に財産を遺したい場合の遺言
配偶者に全財産を相続させたい場合、兄弟姉妹には遺留分がないので、配偶者に全財産を相続させる旨を遺言すれば足りる。
※さらにこの場合、兄弟姉妹は法定相続人の数に含まれるので、基礎控除の額は変わらない。
②兄弟姉妹が相続人の場合で兄弟のうちの一人に財産を遺したい場合の遺言
特定の兄弟に全財産を相続させたい場合、兄弟姉妹には遺留分がないので、その兄弟に全財産を相続させる旨遺言すれば足りる。
※さらにこの場合、兄弟姉妹は法定相続人の数に含まれるので、基礎控除の額は変わらない。【遺留分の割合】
遺留分の割合は、相続財産に対して次のように定められています。
子と配偶者が相続人 ⇒ 子が4分の1、配偶者が4分の1
直系尊属と配偶者が相続人 ⇒ 配偶者が3分の1、父母が6分の1
兄弟姉妹と配偶者が相続人 ⇒ 配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし
配偶者のみが相続人 ⇒ 配偶者が2分の1
子のみが相続人 ⇒ 子が2分の1
直系尊属のみが相続人 ⇒ 直系尊属が3分の1
兄弟姉妹のみが相続人 ⇒ 兄弟姉妹には遺留分なし【遺留分減殺請求】
遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された者が、贈与又は遺言によって財産を取得(遺贈)した者に対し、遺留分を侵害された金額について、贈与又は遺贈された物の返還を請求することです。
※当事者間で話合いがつかない場合や話合いができない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
☆自社株や金銭の贈与が特別受益となる場合には、遺産分割そのものにも大きく影響する場合があります。関連ページ
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《遺産分割の4つの方法》
【遺産分割の方法】
①現物分割
遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法をいいます。
例えば一定の面積の土地を相続人それぞれの持分に応じて分筆して分けたり、不動産は相続人のAに、預貯金などは相続人のBに分けるという方法です。
②換価分割
遺産の種類によっては、現物分割を行うことが適当でないケースがありますが、このような場合に遺産を他に売却して金銭に換え、この金銭を相続分に応じて分割する方法を換価分割といいます。
③代償分割
例えば、ある相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払ったり、自分の所有する他の財産を交付する方法をいいます。
代償分割は分割のしにくい財産の対処法としてよく用いられていますが、支払を行う側には相応の資力が必要となります。
代償分割をする場合には、その事を遺産分割協議書に記載する事が必要です。
④共有分割
共有分割は各相続人の持分を決めて共有で分割する方法をいいます。
不動産などを公平に相続分に応じて分割することができますが、将来的に相続人が死亡した際にさらに共有者が増えることになる等、のちのちのトラブルを生む可能性がある点に注意を払うことが必要えす。☆遺産分割は、相続人間のさまざまな思惑や背景に考慮して行わなければなりませんので、困った時は専門家へ相談してみましょう。
関連ページ
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《遺留分はどのように計算するのですか?》
計算式:遺留分の基礎となる「みなし相続財産」×遺留分割合
※遺留分の基礎となる「みなし相続財産」の価額は、「被相続人が相続開始の時に所有していた財産の額+生前に贈与した財産の価額−債務の全額」となります。【加算する生前贈与の範囲】
①相続開始前1年以内に行われた贈与
②低額で譲渡された財産がある場合の相当の対価との差額・債務を免除されたことによる利益の額
③当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与(相続開始前1年以内になされたものを含みます)
④相続人が婚姻や養子縁組のため、又は生活資金として受けた贈与(相続開始前1年よりも前になされたものを含みます)
⑤自社株式の生前贈与(相続開始前1年よりも前になされたものを含みます)
※加算される贈与の額は、相続開始の時の価額で、贈与された時の価額ではありません。もらった人が使ってしまって財産が消滅していたり、価額に増減があった時には、相続開始の時になお現状のままあるものとして、価値を見直して評価されます。☆遺言による財産の取得(遺贈)と生前贈与がある場合や複数の生前贈与がある場合には、遺留分減殺請求の順序が問題となりますので注意が必要です。
関連ページ
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《遺留分減殺請求ができる範囲》
①遺留分減殺請求の対象となる人
遺留分減殺請求の対象となる人は、贈与・遺贈を受けた相続人となります。
※被相続人が生前に贈与した物等が遺留分減殺請求を行う前に、贈与を受けた者(受贈者)から第三者に譲渡されたような場合には、その第三者に対して遺留分減殺請求はできません。その場合は、受贈者に対して価額の弁償を請求できるにすぎません。☆第三者が、贈与を受けた者から対象となる物等を譲渡された当時、遺留分を持つ相続人に損害を与えることになることを知っていた場合には、対応が違ってきます。
②遺留分を超える贈与・遺贈を受けた相続人に対して遺留分減殺請求ができます。
※法定相続分を超える贈与・遺贈を受けた相続人に対してではありません。
③相続人間で遺産分割協議成立後に、自分の取得財産が遺留分に満たないとして、他の相続人に遺留分減殺請求をすることは出来ません。
《遺留分減殺請求の時効》
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年が経過すると、時効によって消滅します。
☆自社株の贈与等があった場合などで、経営に関与しなし相続人は、その贈与が遺留分の侵害にあたる場合でも、認識していないような場合があります。その場合は、10年先まで安心とは言えません。関連ページ
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《遺留分減殺請求により遺留分を超える額の資産の取得があった場合》
遺留分迄の部分は相続で取得したことになりますが、遺留分を超える部分は贈与で取得したことになり、贈与部分には贈与税が発生することになります。
☆配偶者に全ての財産を相続させるというような遺言があった場合に、配偶者が一旦その遺贈を受けると意思表示をした後に、子供から遺留分減殺請求を受け、子供に法定相続分を支払うなどとなった場合には、思わぬ課税を受けることになりかねません。 -
《遺産分割の流れ》
①遺言による分割
『遺言』 ⇒ 『協議』 ⇒ 『調停』 ⇒ 『審判』 ⇒ 『裁判』
ステップ1 ⇒ 遺産分割は、遺言があればその内容に従い、遺産を分割します。
ステップ2 ⇒ 遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割に関する「協議」を行い、取得者を決めることになります。
ステップ3 ⇒ その協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の「調停」による遺産分割を行う。
ステップ4 ⇒ それでもまとまらない場合には、「審判」による分割を行う。
ステップ5 ⇒ さらに、審判に納得できないときは「裁判」になる。
被相続人は、遺言で遺産分割の方法を指定したり、一定期間遺産分割を禁止することができます。
そして、相続人は、遺言によって指定された方法に従って具体的な分割を行うことになります。
なお、自己の遺留分が侵害されている人は、遺留分減殺請求をすれば遺留分相当の遺産を取り戻すことができます。
②遺言があっても遺言に従わない分割
相続人全員が合意すれば、遺言に従わない分割方法も可能です。
それは、相続人が全員合意の上で、遺言と異なる遺産の分け方を決めた場合には、すでに遺言を遺しておいた目的は達成されたとみなされるからです。
ただし、以下の条件を満たすことが必要です。- 遺言で遺産の分割が禁止されていないこと。
- 遺言執行者がいる場合、遺言執行者の職務を妨げる行為を相続人はできませんので、遺産分割が遺言執行の内容と矛盾しないこと。
③協議による分割
☆遺言で遺産分割を禁止する場合は、いつまでも権利が定まらない状態を避けるため、期間に上限がありますので注意してください。
以下の場合には、相続人全員で遺産分割に関する「協議」が必要になる。これを遺産分割協議という。- 遺言がない場合
- 遺言から漏れている財産がある場合
- 遺言で取得する財産の割合のみが示されている包括遺贈の場合
※分割協議では、相続人全員が合意すれば、どのような分割でも構いませんので、1人の相続人が全ての遺産を取得するというものでも構わないことになります。
そして、その合意に至ったときに「遺産分割協議書」を作成する。
【遺産分割のやり直しが可能な場合】
①一部の相続人を除外して協議した場合。
②遺産分割後に、他の相続人がいることが判明した場合。
③遺産分割後に、相続人でないことが判明した場合。
【遺産分割後に新たな財産がみつかった場合】
新たな財産についてだけ、改めて分割することになります。
☆遺産分割を行った後に、その財産を再度分割して取得するような場合には、新たに課税が発生する場合があります。関連ページ
参考ブログ1 参考ページ1 -
《寄与分とは?》
被相続人と共同して農業や商店の経営に従事してきた相続人のように、特定の相続人が、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与、貢献した場合に、その相続人を、寄与や貢献のない他の相続人と同等に取り扱い、法定相続分どおりに分配するのは、公平を失することになりますので、このような場合に、寄与者に対して寄与に相当する額を加えた財産の取得を認める制度です。
寄与分といえるためには、寄与行為の存在によって、『被相続人の財産の維持又は増加があること、寄与行為が特別の寄与といえること』が必要です。
☆特別の寄与と認められるには、要件がありますので、確認が必要です。関連ページ
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《寄与分の算定》
具体的な寄与分の算定については、民法には寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮するという抽象的な規定があるに止まり、その実際の適用は、家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられています。
【寄与分の具体的算定方法】
①相続財産の維持又は増加についてなされた相続人の寄与の程度を客観的に認定する。
②相続財産の額等一切の事情を考慮し、裁量的にその額あるいは割合を定めます。
☆様々な寄与の形態によって、一つの目安となる寄与額の計算式がありますので、確認が必要です。関連ページ
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《義理の親の面倒をみたくない》
夫が死亡、扶養していた姑の扶養義務は誰になるのか?
じつは、配偶者である者が、姑と養子縁組をしていなければ、その配偶者は姑の直系血族ではなく、もちろん兄弟姉妹でもないので、原則として扶養義務を負うことはありません。
しかし、特別の事情があるときは、3親等内の親族が扶養義務を負うこともあると法律で定められています。
【特別の事情とは?】
①姑に直系血族(子や孫)や兄弟姉妹がいないなど特別な事情があるときは、家庭裁判所から、配偶者が姑の扶養を命じられる場合があります。
②「同居の親族」は互いに助け合う義務があるので、配偶者である者が姑と同居している場合、姑に対して互助義務を負うことになります。しかし、特別の事情があるときは、3親等内の親族が扶養義務を負うこともあると法律で定められています。
【親族】
「親族」とは、6親等内の血族(血縁関係のある人)、配偶者および3親等内の姻族(配偶者の血族)のことで、配偶者側の親族(姻族)の親等は配偶者を基準にするので、姑は配偶者から見て1親等の姻族となります。☆義理の親の面倒をみなければならない場合(扶養の義務が生じた場合)でも、その義務を終了させる方法があります。
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《寄与することはどのようなことを言うのか?》
民法では、寄与の態様として、被相続人の事業に関する労務の提供、被相続人の事業に関する財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法を挙げています。
【家業従事型】
家業従事型とは 相続人が被相続人の事業に従事することで、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
事業の典型例は農業や商工業ですが、医師、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士などの業務を含むとされています。
【金銭等出資型】
金銭等出資型とは、相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、又は被相続人の借金を返すなどして、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
共稼ぎの夫婦の一方である夫が夫名義で不動産を取得するに際に、妻が自分で得た収入を提供する場合や相続人が被相続人に対し、自己所有の不動産を贈与する場合などが挙げられます。
【療養看護型】
療養看護型とは、相続人が被相続人の療養看護を行ない、その分、付添い看護の費用の支出が無くて済んだなど、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
【扶養型】
扶養型とは、相続人が被相続人を扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与する場合をいます。
※夫婦は互いに協力扶助の義務を負っていますし、直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負っているため、扶養行為が認められる場合でも、それらの扶養義務を超えた特別の寄与にあたるかどうかの判断が必要になります。
【財産管理型】
財産管理型とは、相続人が被相続人の財産の管理を行ない、管理費用の支出が無くて済んだなど、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
不動産の賃貸料、管理料、修繕費、保険料や公租公課の支払い等の行為が考えられます。
☆特別な貢献と認められるためには、無償性、継続性、専従性、被相続人との身分関係といった要件の確認が必要です。関連ページ
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《一世代飛ばし(孫との養子縁組)のメリット》
孫と養子縁組して財産を相続させることで、相続税の課税を1回飛ばすことが出来ます。
それによって、子から孫への相続分が減るので、相続税が軽減出来ることになります。
☆孫を養子にする場合、被相続人の養子は、一親等の法定血族なのに、相続税の2割加算の対象となります。
《孫が未成年の場合の相続税法上のメリット》
未成年の孫が養子になると、養子は法定相続人となります。
したがって、相続が発生すると、相続税法上「未成年者控除」の適用を受けられることになります。(全ての養子について適用できます。)【未成年者控除】
成年(20歳)に達するまでの養育費の負担を考慮するため、一定の要件を満たす未成年者については、満20歳に達するまでの年数1年につき10万円を、相続税から控除出来る制度です。
※全ての養子及び実子につき、適用を受けられます。関連ページ
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《孫への贈与に相続時精算課税を選択する》
これまで、原則として孫は相続時精算課税の適用対象となる受贈者ではなかったため、相続時精算課税を活用するためには、孫との養子縁組が必要でした。
平成27年1月1日以降、20歳以上の孫も相続時精算課税の適用対象者となりました。(贈与者は65歳以上から60歳以上に改正)
ただし、20歳未満の孫の場合はこれまで同様、養子縁組をする必要があります。
☆年齢の判定は、贈与者・受贈者共に、贈与を受ける年の1月1日で行いますので、今年20歳になった孫は対象とはなりませんのでご注意ください。【20歳以上の年齢判定】
年齢の判定は、贈与者・受贈者共に、贈与を受ける年の1月1日で行う。
※「今年(1月1日以降に)20歳になった孫」は、その年中はまだ対象ではありませんので注意が必要です。【相続時精算課税適用に向いた財産】
高収益・高利回りの財産で、かつ、将来値上がりすると予想される財産は相続時精算課税制度の適用に向いた財産と言えます。
このような財産を贈与することで、贈与者へ集中してしまう収益の分散と、財産の値上がりによる増加を防ぐことに役立ちます。関連ページ
参考ブログ1 参考ページ1
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《遺言と法律》
遺言は法律の定める方式に従わなければ、することができないとされていますので、映画に出てくるような録画・録音に残すなどは遺言としての効力はありません。
《遺言書の方式》
遺言の方式には、普通方式と緊急事態に対応する特別方式があります。
①普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言に分かれます。
②特別方式は、危急時遺言と隔絶地遺言に分かれます。☆証人や立会人、自筆かワープロでもOKなのか、など、方式によって細かく規定されています。
関連ページ
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《自筆証書遺言の作成方法》
遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自署し押印します。
証人、立会人などは不要です。
以下の通り、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録について、自筆証書遺言の方式が緩和されています。【平成30年(2018年)民法改正 自筆証書遺言の方式緩和】
平成31年(2019年)1月13日以後、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書を不要とすることとされました。ただし、財産目録の全ページに署名押印が必要となります。
代わりの作成方法としては、従来の自筆部分をパソコンで作成した書面のほか、登記事項証明書や、預金通帳のコピーを添付する方法が挙げられています。【自筆証書遺言のメリット】
遺言の存在や内容について秘密が保持されます。【自筆証書遺言のデメリット】
①遺言の存在が認知されない可能性があります。
②紛失や改ざんの危険があります。
③文字が書ける必要があります。(ワープロでの作成は認められません)
☆自筆証書遺言の場合には、遺言の開封、遺言の保管にも注意が必要です。関連ページ
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《公正証書遺言の作成方法》
①二人以上の証人の立会が必要。
②遺言者が口述し、公証人が筆記します。
③公証人が遺言者及び証人に読み聞かせます。
④遺言者及び証人が筆記内容を承認し、各自署名押印します。
⑤公証人は作成方式が適正であることを付記して署名押印します。【公正証書遺言のメリット】
①存在の検索が可能です。
②紛失や改ざんの心配がありません。
③公証人が指導しますので、遺言内容についての争いや遺言の無効が減少します。
④文字を書けなくても作成可能です。(公証人の出張も可能です)【公正証書遺言のデメリット】
遺言の内容は、相続人間で秘密にできません。
☆証人が欠格者の場合、遺言が無効になりますので注意が必要です。関連ページ
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《秘密証書遺言の作成方法》
①遺言者が作成(ワープロ可)、署名押印します。
②遺言者が封印します。
③遺言者が公証人及び二人以上の証人の前に封書を提出し、自らの遺言書である旨及び作成者の氏名・住所を述べます。
④公証人が日付と遺言者の申述内容を記載し、遺言者、証人とともに署名押印します。【秘密証書遺言のメリット】
①遺言の内容を秘密にできます。
②改ざんの心配がありません。
③ワープロでも作成可能です。【秘密証書遺言のデメリット】
①秘密証書遺言は何時どこの役場で作成されたのか、のみ検索可能ですが、遺言書そのものは公証役場で保存されませんので、遺言書が見つからない限り、遺言の内容は不明のままの可能性があります。
②秘密証書遺言では、公正証書遺言と違い、公証人は遺言の存在のみを確認し、遺言の内容を確認しません。
☆秘密証書遺言の場合には、遺言の開封、遺言の保管にも注意が必要です。関連ページ
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《遺言の変更や取り消しの方法》
遺言者は、遺言内容の変更や取り消しを自由に行うことができます。ただし、複数の遺言を作成する場合、先の遺言と後の遺言が抵触しないときは、両方が有効となります。
※抵触する場合は、その部分について後の遺言が優先されます。先の遺言の全てが無効となるわけではないことに注意してください。
《遺言を撤回したい場合》
いったん遺言しても、その後気が変わる等して、遺言の全部又は一部を、遺言の方式に従い『撤回』可能です。
遺言の撤回は、自分の意思のみで何度も出来る、便利な制度です。
☆遺言の変更、取消し、撤回は、遺言の書換え等のいくつかの方法がありますので、確認してください。関連ページ
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《遺言の筆跡について》
①自筆証書遺言の場合は、本文・署名共に自筆であることが必要です。
以下の通り、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録について、自筆証書遺言の方式が緩和されています。
【平成30年(2018年)民法改正 自筆証書遺言の方式緩和】
平成31年(2019年)1月13日以後、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書を不要とすることとされました。ただし、財産目録の全ページに署名押印が必要となります。
代わりの作成方法としては、従来の自筆部分をパソコンで作成した書面のほか、登記事項証明書や、預金通帳のコピーを添付する方法が挙げられています。
②秘密証書遺言の場合は、署名は自筆であることが必要です。(本文は代筆・ワープロも可)
③遺言書の加除訂正・変更等の場合は、自筆証書遺言・秘密証書遺言共に、本人の自署&押印が必要です。関連ページ
参考ブログ1 参考ページ1
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《遺言できることとは?》
遺言できることには、遺言でしか法的効力が生じないことと、遺言ではなくても、生前に自ら行うこともできる行為があります。【遺言でのみ法的効力が生じる事項】
①後見人及び後見監督人の指定
②遺言執行者の指定及びその委託
③相続分の指定及びその委託
④遺産分割の方法の指定及びその委託
⑤遺贈
⑥遺産分割の禁止(期間は5年以内)
⑦遺産分割における共同相続人相互の担保責任の指定
⑧遺留分減殺の方法の指定
☆遺言執行者の役割等については、下記のブログを参照していただくとより理解が深まると思います。
【遺言でも生前でも法的効力が生じる事項】
⑨認知
⑩相続人の廃除及びその取消し
⑪寄附行為
⑫信託
《遺言による保険金受取人の変更》
①生命保険契約の保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができます。
②遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人が保険者に通知しなければ、保険金受取人の変更があったことを保険者に対して対抗することができません。
※遺言執行人を定めておくことで、相続人に代わって、保険者に通知することができます。
③被保険者の同意が必要です。☆遺言による保険金受取人の変更に関しては、取扱う保険会社によって対応に違いがある場合がありますので、確認が必要です。
関連ページ
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《遺言が無効となってしまうケース》
①民法で定める方式に沿ってない遺言
②遺言能力がない者がした遺言
③所定の方式によらないで行った成年被後見人(痴呆症等の理由で成年後見申立がなされ成年後見人が就任している方)が作成した遺言
④共同遺言(2人以上で同一の証書により作成したもの)
※遺言の『撤回』が自由に出来なくなる為に無効とされています。
⑤公序良俗に反する遺言
⑥錯誤に基づく遺言
☆認知症などの成年被後見人(痴呆症等の理由で成年後見申立がなされ成年後見人が就任している方)が遺言できる場合がありますので、その場合確認が必要です。 -
《遺言書が特に必要なケース》
特定の者に特定の財産を遺したい場合には、遺言を作成することで効果が期待できますが、特に次に挙げるようなケースでは大きな効果を発揮します。
①子がなく、配偶者と親・兄弟姉妹が相続人となる場合。
②先妻の子と後妻の子がいる場合。
③子の中で特別に財産を多く与えたい者がいる場合や財産を与えたくない子がいる場合。
④相続権のない孫や兄弟姉妹、子の嫁に財産の一部を与えたい場合。
⑤内縁の妻や認知した子がいる場合。
⑥生前世話になった第三者に財産の一部を渡したい場合や財産を公益事業に寄附したい場合。
⑦銀行借入金等で賃貸住宅等を建築し、賃貸料で借入金の返済をしている場合。
☆それぞれのケースでなぜ遺言が必要なのかも理解しておく必要があります。 -
《配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合の遺言》
夫婦の間に子供がいない場合に、法定相続となると、夫の財産は、その両親が既に亡くなっているとすると、妻が4分の3、夫の兄弟が4分の1の各割合で分けることになります。
配偶者に全財産を相続させたい場合、兄弟姉妹には遺留分がないので、配偶者に全財産を相続させる旨を遺言すれば足りることとなります。
☆この場合、基礎控除の額を決める、法定相続人の数に注意が必要でする。 -
《兄弟姉妹が相続人の場合の遺言》
特定の兄弟に全財産を相続させたい場合、兄弟姉妹には遺留分がないので、その兄弟に全財産を相続させる旨遺言すれば足りることとなります。
☆この場合、特定の兄弟を養子にしても、特定の兄弟に全財産を相続させることができますが、遺言の方が税法上有利になります。
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《相続放棄と限定承認はいつまでに行うのか?》
相続人が相続の放棄や限定承認を行う場合、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に対してその旨の申立てを行わなければなりません。
【相続放棄と法定相続人の数】
法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
☆限定承認は相続放棄の規定と比べて煩雑であり、かつ限定承認をした者にさまざまな義務と事務処理が生じます、そのため限定承認という手続を採るのは、相続人が1人であるか(他の相続人が相続放棄した場合も含みます。)複数人でも限定承認について協力が得られ、譲渡所得税の負担がないか譲渡所得税の負担をしても守りたい財産(事業用資産や自宅等)がある場合に限られてきます。関連ページ
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《相続放棄でも取得出来る財産》
本来は被相続人固有の財産とは言えないが、被相続人が亡くなったことで、相続人のもとに入ってきた財産(みなし相続財産)は、相続を放棄しても受取ることができます。
①生命保険金・死亡退職金
死亡保険金・死亡退職金及び生命保険契約に関する権利等のみなし相続財産については、被相続人の本来(民法上)の財産ではなく、受取人(又は契約者)固有の財産なので、相続放棄した人でも、死亡保険金等を受取れます。
☆生命保険金・死亡退職金について、それぞれ控除額がありますが、相続放棄をするとその控除は受けられなくなりますのでご注意ください。
②遺族基礎年金
遺族基礎年金の受給要件は、被相続人により生計を維持されていたその人の子(18歳到達年度の末日迄の間にあるか又は20歳未満で1級又は2級の障害の状態にある子)又は子のある配偶者に支給されます。
よって、当該相続人等が相続を放棄しても、遺族年金等を受給出来ることになります。
《相続放棄と遺贈》
相続人が相続を放棄しても、遺贈は受けられます。
逆に遺贈を放棄しても、相続権を失うわけではないので、遺贈を受けた相続人が相続財産と関わりを絶つためには、遺贈の放棄の他、相続放棄も行わなければなりません。関連ページ
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《遺言で取得することになった特定の財産を放棄する場合》
遺言により特定の財産を取得した者(特定遺贈の受遺者)は遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄が可能と規定いています。
放棄の方式は自由なため、受遺者からほかの相続人にきちんと伝われば口頭でもできますが、トラブル防止のためには書面で行うほうが望ましいでしょう。
☆相続人である人が遺贈を放棄しても、『相続放棄』ではないので注意してください。関連ページ
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《自分が放棄すると次の順位の人が相続人になってしまう》
先順位の法定相続人が全員相続を放棄した場合には、次順位の者が法定相続人となるので、順次相続の放棄の手続をしなくてはなりません。
☆相続がしたいのに、『相続放棄ができなくなるケース』にも、十分注意が必要です。
【事例を使って相続人となる順番を確認】
被相続人 ⇒ 甲
第一順位 長男
第二順位 父・母
第三順位 甲の妹
甲が多額の債務を残し債務超過の状態で死亡した場合
①債務の承継を免れる為に第一順位である長男が相続開始から3ヶ月以内に相続放棄すると、第二順位である父母が法定相続人になる。
②父母も自分が法定相続人であることを知った時から3ヶ月以内に放棄すると、第三順位の妹が法定相続人になる。関連ページ
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《認知症対応型信託を活用する》
老後、子供達の世話になりたくない。病気や認知症になった場合に、自分の財産から治療費や、介護費を支払ってもらいたい。
そのような方には、認知症対応型信託の活用が考えられます。
独居の老人の中には、将来の財産管理や介護問題に不安を持っている人が多いが、その解決方法が見つからず、不安に思っている人がいる。子供達の世話にはなりたくなく、自分の財産を自分のために使いたいと考えている場合に、認知症になってしまうと、その意思を実行することはできなくなります。
【認知症退対応型信託が生まれた背景】
①財産の管理運用から介護、医療についての判断を、信頼できる第三者に任せたいと思っていても、財産が守られるか、意思どおりに実行されるか不安がある。
②遺言書は死亡後のことは決定できるが、認知症後のことを定められない。
③任意後見制度は認知症等になり、任意後見人が選任された後にその効果が発生する。意思判断が不十分な時期には対応していない。
④任意後見の場合にすべての財産を個人に託すことに不安があり、財産が分別された財産として守られるしくみが必要となる。【認知症対応型信託に期待する効果】
①信託財産が倒産隔離機能により保全されるので、財産を預けた者(受託者もしくは受託会社)が破産しても財産は影響を受けません。
②信託契約に任意後見制度を付与し身上監護の専門家(社会福祉士等)を指図人とすることにより、財産管理・運用・身上監護が専門家の判断に基づき実施されます。
③成年後見制度による時間的空白期間の問題が解決される。
※任意後見制度は認知症等になり、任意後見人が選任された後にその効果が発生する。意思判断が不十分な時期には対応していません。
☆このような信託契約は、民事信託と呼ばれますが、契約行為ですので内容は自由に決められます。しかし、それだけにしっかりと内容を検討する必要があります。関連ページ
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《成年後見制度を活用する》
判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度を成年後見制度といい、『任意後見制度』と『法定後見制度』の二つがあります。
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害に遭うおそれもあります。
そのような場合に、役立つのが成年後見制度です。
【任意後見制度】
任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが成年後見人を選任しておく制度です。
※任意後見契約は、本人の真意による有効適切な契約であることを明確にするため、法務省令で定める様式の公正証書により行われる必要がある。
【法定後見制度】
法定後見制度は、本人が精神上の障害により判断能力が不十分となったときに、親族等が家庭裁判所に後見人等の選任を申立てを行い、家庭裁判所が後見人等を選任する制度です。
※後見開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、市町村長(老祉法32条他)等となります。
法定後見人が支援する内容は、法律が定めており、その内容によって『後見』、『保佐』、『補助』の3つに分かれます。
①後見
・『後見』の成年後見制度を利用することができるのは、自分の財産を管理したり処分したりすることが全くできない状態の人です。
・具体的には、重度の知的障害者・精神障害者・認知症高齢者などで、常に判断能力がなく、自分だけで物事を決定することが難しく、日常的な買い物も1人ではできない人が対象となります。
②保佐
・『保佐』の成年後見制度を利用することができるのは、重要な財産(土地や車など高額な物)を管理したり処分したりするには、常に援助が必要な人です。
・具体的には、知的・精神的障害のある人、認知症がある程度進行している高齢者など、判断能力が著しく不十分で、日常的な買い物くらいは自分でできるが、重要な契約などは難しいという人が対象となります。
③補助
・『補助』の成年後見制度を利用することができるのは、判断能力が不十分ながら自分で契約などができるが、誰かに手伝ってもらったり、代わってもらうほうがよいと思われる人です。
・具体的には、軽度の知的障害者・精神障害者・初期の認知症状態にある人が対象となります。
☆法定後見の場合、支援の度合いは、『補助』⇒『保佐』⇒『後見』と深くなっていきます。それに従って、支援を受ける人の同意を必要とするかどうかも変わってきます。関連ページ
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《成年後見人が一人では不安な場合》
成年後見人については複数の後見人も選べるものとされた。
以前は、複数の後見人を選んでしまうと、これらの人たちの間で意見の対立や混乱が生まれた場合に後見事務が滞ってしまうから、後見人の数は1人に制限されていましたが、後見人の1人を親族にして、もう1人を法律家や福祉の専門家にするなど、複数の後見人が認められると本人の手厚い保護が図れるという観点から見直され、複数の後見人を選べるようになりました。
【複数の後見人を選任した場合の問題解決策】
複数の後見人間での対立や混乱を避けるために、家庭裁判所は各後見人の権限に関する定めや、または全ての後見人が共同して権限を行使しなくてはならないという定めを、職権で設定できるようになっています。
また、この定めはやはり家庭裁判所が職権で取り消すこともできます。
☆成年後見人を親族にしていると、相続が発生したとき特別代理人を選任する必要があります。関連ページ
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《相続人に認知症の者がいる場合の遺産分割協議》
遺産分割協議の際、相続人間で利益が相反する場合、特別代理人の選任が必要となります。
配偶者(認知症)と子が相続人の場合で、配偶者の成年後見人がその長男である場合、長男も相続人であるから利益が相反するので、配偶者には特別代理人の選任が必要になります。☆特別代理人の選定には通常1~2か月を要しますので、必要な場合には早めに準備する必要があります。
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《相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議》
未成年の養子が成年として取り扱われるのは、満20歳に達した場合と未成年の時に婚姻した場合ですので、それ以外の場合には代理人が遺産分割協議に参加することになります。
《未成年の養子と親権》
養子縁組により、親権は養親に移動する。
孫を養子にすることが多いので、その養親が全員死亡すると、親権者は不在になる。
※その為、未成年である養子は、遺産分割等において「未成年後見人」の選任を家庭裁判所に申し立てなければならない。
《特別養子》
昭和62年の民法改正で創設された制度で、一定の要件のもとに家庭裁判所の審判により、養子となることで、養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了する養子縁組。
【未成年の養子の養親死亡時の遺産分割協議】
養親が死亡しても、実親に親権が回復されないので、利益相反にならないのに実親が親権者として遺産分割協議を行えない。
☆未成年者に代わり遺産分割協議に参加する人は、親権者のあり、なしと利益相反のあり、なしで決まりますので確認が必要です。関連ページ
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《相続税の増税猶予制度とは?》
【特例措置の創設】
非上場株式等(中小企業者である非上場会社の株式又は出資)に係る相続税の納税猶予制度とは・・・
①後継者(経営承継相続人等)が、先代経営者(非上場会社を経営していた被相続人)から相続等により当該会社の株式等を取得しその会社を経営していく場合
②その後継者(経営承継相続人等)が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得したその会社の発行済議決権株式等(相続開始前からすでに保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済完全議決権株式の総数等)の3分の2に達する迄の部分に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が、その後継者(経営承継相続人等)の死亡等の日まで猶予されます。
要約すると、自社株の納税猶予制度とは、後継者が先代経営者から相続により取得した自社株のうち、発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分にかかる相続税の80%を猶予する制度です。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①発行済議決権株式総数の全てが対象となります。
②適用対象となる株式の評価額の100%に相当する金額に対応する相続税額が猶予されます。
③相続税の決定申告期限から5年経過後、「事業の継続が困難な事由」が生じ、株式等の譲渡や会社の解散等があった場合、納税猶予されていた税額の一部の納税が免除されることになりました。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。☆納税猶予の条件を満たさなくなると、納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も併せて納付することになります。
関連ページ
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《相続税の納税猶予を受けるための要件》
相続税の納税猶予適用のためには次のすべての適用要件を満たしている必要があります。
①非上場株式等であること
②その中小企業者の株式等に係る相続税を納付することが見込まれること
③性風俗営業会社に該当する事業を営む会社に該当しないこと
④「資産保有型会社」に該当しないこと
⑤「資産運用型会社」に該当しないこと
⑥ 直近の事業年度における総収入金額が零を超えること
⑦ 常時使用する従業員の数が1人以上であること
⑧ その中小企業者の特別子会社(その会社及びその代表者とその同族関係者が50%超の議決権を有する場合のその会社)が上場会社等、大法人等又は性風俗営業会社に該当しないこと
⑨ その中小企業者の代表者が経営承継相続人であること
⑩ その中小企業者が拒否権付種類株式(黄金株)を発行している場合には、その種類株式をその中小企業者の代表者以外の者が有していないこと
⑪ 常時使用する従業員を5年間の平均で8割以上維持しなければならないこと
☆認定の申請にあたっては、従業員雇用確保要件の基準日と雇用割合の確認が必要です。(⑪の要件とは別です)
【経営承継相続人の要件】
①後継者であり、かつ、先代経営者の死亡の直前に役員でなければなりません。
②相続開始の日から5ヶ月を経過する日までに代表取締役にならなければなりません。
③後継者は、相続又は遺贈により株式等を取得した代表取締役であり、同族関係者と合わせて総株主等議決権数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主でなければなりません。
※先代経営者、その死亡の直前において、同族関係者と合わせて総株主等議決権数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で後継者を除いて筆頭株主でなければなりません。
④被相続人の相続開始の時から認定申請日まで引き続き相続又は遺贈により取得した認定承継会社の株式のすべてを保有していること【認定書申請書の提出】
<2017年3月31日まで>
会社は先代経営者が死亡した日の翌日から、8か月以内に都道府県知事の認定を受けるために、都道府県へ認定申請書を提出しなければなりません。
上記の要件を満たしているかどうかについて認定を受けることになります。
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。
【添付書類】
認定書の提出に当たっては、次のような添付書類が必要となります。
① 定款の写し
② 株主名簿の写し
③ 被相続人の死亡の日から認定申請日前に作成された会社の登記事項証明書
④ 相続税の見込額を記載した書類
⑤ 相続開始の日及び相続認定申請基準日における従業員数証明書
⑥ 相続認定申請基準事業年度の貸借対照表、損益計算書及び事業報告書
⑦ 上場会社等又は性風俗営業会社に該当しない旨の誓約書
⑧ 特別子会社が上場会社等、大法人等又は性風俗営業会社に該当しない旨の誓約書
⑨ 固定施設に係る登記事項証明書、賃貸借契約書、商品売買に係る契約書、遺産分割協議書又は遺言書その他の参考となる書類【特例措置の創設】
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①雇用確保要件が実質撤廃
特例措置では、雇用確保要件の80%を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
②複数の株式所有者からの贈与等も可能 ※現行制度も改正
原則として先代経営者からの一括贈与を条件に、後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式等についても、特例経営承継期間内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、対象となります。役員になったことのない株主や親族以外の人からの贈与等でも適用が可能です。
③受贈者の範囲拡大
「特例承継計画」に記載された代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
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《贈与税の納税猶予とは?》
<2017年3月31日まで>
後継者である受贈者(経営承継受贈者)が、贈与により、都道府県知事の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者である贈与者から全部又は一定数以上取得し、その会社を経営していく場合には、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限る。)に対応する贈与税の納税が猶予されます。
※一定の分部とは、贈与税の納税猶予の適用が受けられる範囲、すなわち贈与後で発行済議決権株式の3分の2に達するまでの部分。
※この猶予された税額は、先代経営者や経営承継受贈者が死亡した場合などは納付が免除されます。
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。
【特例措置の創設】
要約すると、後継者が、先代経営者から贈与を受けた自社株のうち、発行済議決権株式の3分の2に達するまでの部分については、贈与税が全額猶予されます。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、発行済議決権株式総数の全てが適用対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
☆納税猶予の条件を満たさなくなると、納付税額についての全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります。関連ページ
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《贈与税の納税猶予を受けるための要件》
相続税の納税猶予適用のためには次のすべての適用要件を満たしている必要があります。
①非上場株式等であること
②その中小企業者の株式等に係る相続税を納付することが見込まれること
③性風俗営業会社に該当する事業を営む会社に該当しないこと
④「資産保有型会社」に該当しないこと
⑤「資産運用型会社」に該当しないこと
⑥ 直近の事業年度における総収入金額が零を超えること
⑦ 常時使用する従業員の数が1人以上であること
⑧ その中小企業者の特別子会社(その会社及びその代表者とその同族関係者が50%超の議決権を有する場合のその会社)が上場会社等、大法人等又は性風俗営業会社に該当しないこと
⑨ その中小企業者の代表者が経営承継相続人であること
⑩ その中小企業者が拒否権付種類株式(黄金株)を発行している場合には、その種類株式をその中小企業者の代表者以外の者が有していないこと
⑪ 常時使用する従業員を5年間の平均で8割以上維持しなければならないこと
☆認定の申請にあたっては、従業員雇用確保要件の基準日と雇用割合の確認が必要です。(⑪の要件とは別です)、なお贈与期間を10月16日~12月31日にすれば、必ず従業員確保要件は満たせます。
【後継者の要件】
①贈与の日において20歳以上の代表者であり、かつ、役員に就任してから3年以上経過している必要があります。
②後継者(特定後継者)であり、かつ、前経営者(特定代表者であった贈与者)から自社株式の贈与を受けた時点で代表取締役になっていなければなりません。
③後継者は、贈与により株式等を取得した代表取締役(特定後継者)であり、同族関係者と合わせて総株主等議決権数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主でなければなりません。
※前経営者についても、その贈与の直前において、同族関係者と合わせて総株主等議決権数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で後継者を除いて筆頭株主でなければなりません。
④株式等の贈与者が贈与時点で代表取締役(特定代表者)でなければなりません。
⑤前経営者の贈与の時から認定申請日まで引き続き贈与により取得した自社株(認定承継会社の株式)のすべてを保有しているなければなりません。【認定申請書の提出】
<2017年3月31日まで>
会社は贈与があった日の属する年の翌年1月15日までに都道府県知事の認定を受けるために、都道府県へ認定申請書を提出しなければなりません。
上記の要件を満たしているかどうかについて認定を受けることになります。
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。
【特例措置の創設】
【添付書類】
認定書の提出に当たっては、次のような添付書類が必要となる。
① 定款の写し
② 株主名簿の写し
③ 贈与認定申請基準日以後に作成された会社の登記事項証明書
④ 贈与税の見込額を記載した書類
⑤ 贈与の時及び贈与認定申請基準日における従業員数証明書
⑥ 贈与認定申請基準事業年度の貸借対照表、損益計算書及び事業報告書
⑦ 上場会社等又は性風俗営業会社に該当しない旨の誓約書
⑧ 特別子会社が上場会社等、大法人等又は性風俗営業会社に該当しない旨の誓約書
⑨ 贈与の時におけるその経営承継贈与者の親族の戸籍謄本等及びその贈与の時における経営承継受贈者の親族の戸籍謄本等
⑩ 固定施設に係る登記事項証明書、賃貸借契約書、商品売買に係る契約書、その他の参考となる書類
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①雇用確保要件が実質撤廃
特例措置では、雇用確保要件の80%を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
②後継者の範囲拡大
「特例承継計画」に記載された代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
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《贈与税の納税猶予を受けるには自社株の3分の2までは一括で贈与しなければならない?》
【特例措置の創設】
後継者が既に保有している株式と合わせて発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分の株式を一括して贈与した場合には、その贈与税の全額についてその納税が猶予されます。
☆先代経営者の保有している株式と後継者が既に保有している株式の議決権の合計によっては、先代経営者は保有する全ての自社株を贈与しなければなりません。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、発行済議決権株式総数の全てが適用対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。 -
《債務が自社株の価額より大きくても相続税の納税猶予受けられる?!》
債務及び葬式費用を後継者が負担することで、自社株の納税猶予が受けられないという場合がありましたが、制度の改正でその心配はなくなりました。
【平成27年1月以前】
後継者が債務及び葬式費用を負担する場合、相続する自社株の価額から先に債務及び葬式費用を控除した金額をもとに、相続税の納税猶予税額を求めるとされていました。
後継者が負担する債務及び葬式費用>相続する自社株の価額 ⇒ 納税猶予額はゼロとなり、納税猶予が受けられませんでした。
【平成27年1月以降】
後継者が債務及び葬式費用を負担する場合、自社株以外の財産の価額から先に債務及び葬式費用を控除した金額を計算し、さらに控除しきれない部分は、自社株から控除した金額をもとに、相続税の納税猶予税額を求めることとなりました。
後継者が負担する債務及び葬式費用>自社株以外の財産の価額+相続する自社株の価額 ⇒ 債務が自社株を含めた相続財産を上回らないかぎり、納税猶予が受けられます。☆納税額の計算は、通常の相続税額から、納税猶予額を差し引いた額となりますので、計算ステップも確認が必要です。
【特例措置の創設】
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、適用対象となる株式の評価額の100%に相当する金額に対応する相続税額が猶予されます(現行制度では、適用対象となる株式の評価額の80%に相当する金額に対応する相続税額です)。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
参考ページ1参考ページ2 -
《適用時の要件が緩和されている?》
【特例措置の創設】
平成27年1月以降、贈与税・相続税の納税猶予を適用する際の要件が大きく緩和されています。
【贈与税・相続税に共通】
①適用対象者の範囲
改正前:先代経営者の親族のみ ⇔ 改正後:親族以外も対象
対象:相続税・贈与税 適用開始時期:平成27年1月
②経済産業省の事前確認
改正前:原則として必須 ⇔ 改正後:不要
対象:相続税・贈与税 適用開始時期:平成25年4月
④担保提供する株式
改正前:原則として発行が必須 ⇔ 改正後:一定の手続で株券発行不要
対象:相続税・贈与税 適用開始時期:平成27年1月
【贈与税】
先代経営者の立場
改正前:贈与時点で退任が条件 ⇔ 改正後:代表権のない役員で残れる
対象:贈与税 適用開始時期:平成27年1月
☆駆け込みで個人所有の財産を会社所有にして相続税の納税猶予の制度を使おうなどという場合には、適用が認められない場合があります。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①複数の株式所有者からの贈与等も可能 ※現行制度も改正
原則として先代経営者からの一括贈与を条件に、後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式等についても、特例経営承継期間内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、対象となります。役員になったことのない株主や親族以外の人からの贈与等でも適用が可能です。
現行制度でも、この点は改正されて適用可能となっています。
②受贈者の範囲拡大
「特例承継計画」に記載された代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
現行制度では、後継者は筆頭株主である代表者1名に限られます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
<2017年3月31日まで>
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。関連ページ
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《適用から5年間の要件が緩和されている!?》
【特例措置の創設】
平成27年1月以降、適用要件だけでなく、納税猶予の適用からの5年間の経営承継期間の要件も緩和されています。
【贈与税・相続税に共通】
①雇用確保要件
改正前:最初の5年間毎期8割確保 ⇔ 改正後:5年間通算で8割確保
対象:相続税・贈与税 適用開始時期:平成27年1月
②民事再生計画の認可(5年経過後)
改正前:免除対象外 ⇔ 改正後:株価再評価の上一部納税猶予継続 が可能
対象:相続税・贈与税 適用開始時期:平成27年1月
【贈与税】
先代経営者の給与受給
改正前:不可 ⇔ 改正後:可能
対象:贈与税 適用開始時期:平成27年1月
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、雇用確保要件の8割を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
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《相続税の納税猶予の適用要件の確認の必要性》
【特例措置の創設】
先代経営者の急死でも納税猶予の適用が可能になったが、株式保有割合要件や後継者が相続開始から5か月以内に代表者に就任し、8か月以内に会社が都道府県知事の認定を受ける必要があるなど、要件を満たした上で期限までに手続きをしておく必要があるため、事前確認がなくなった分、従来以上に適用要件を満たしているかどうかの確認を随時行っておく必要があります。
《適用要件の概要》
【適用対象の中小企業の範囲】
会社は中小企業基本法上の中小企業でなければならない。
その範囲は株式会社、有限会社、合同会社、合名会社、合資会社及び農業生産法人が対象となる。
医療法人や社会福祉法人、税理士法人などは適用対象となりません。
☆中小企業基本法上の中小企業に該当するかどうかの確認が必要です。
【適用を受けるための会社の要件】
①性風俗関連特殊営業に該当する事業を営む会社に該当しないこと
②「資産保有型会社」に該当しないこと
③「資産運用型会社」に該当しないこと
☆②、③に関しては判定時期に注意が必要です。
④直近の事業年度における総収入金額が1円以上であること
☆総収入から除外して判定する収益項目があるので注意が必要です。
⑤常時使用する従業員の数が1人以上であること
⑥その中小企業者の特別関係会社(その会社及びその代表者と生計を一にする親族などが50%超の議決権を有する場合のその会社)が上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当しないこと
⑦その中小企業者の代表者が一定の要件を満たしていること
⑧その中小企業者が拒否権付種類株式(黄金株)を発行している場合には、その種類株式をその中小企業者の代表者以外の者が有していないこと
⑨非上場株式等であること
⑩相続開始の日以後5月経過する日における常時使用する従業員数/相続開始の日における常時使用する従業員数≧80%であること
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、雇用確保要件の80%を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。
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《納税猶予を受けられる後継者は一人だけ!?》
納税猶予を受けられる後継者は、次の①又は②のいずれかに該当する必要があり、この場合、これらの要件に該当する者が二人以上いる場合には、そのうちその一人に限られます。
① 先代経営者から相続若しくは遺贈又は贈与により、株式等及び事業用資産を取得した者
② その中小企業の現経営者であって、先代経営者(以前に経営者であった者を含む)から相続若しくは遺贈又は贈与により、株式等及び事業用資産を取得した者【後継者は一人限りとする理由】
【特例措置の創設】
後継者が二人以上いることも現実にはあり得ますが、一つの会社について複数の後継者に対して支援措置を講ずると、株式の分散による経営の不安定化を招くおそれがあり、世代を経るごとに株式が分散するおそれが高くなります。
その結果、経営の不安定化につながると考えられるため、特定後継者は一人に限定されています。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、後継者は1人に限られません。代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
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《相続税の納税猶予税額が免除される場合とその手続き》
相続税の納税猶予を受けた後に、猶予された相続税が免除される場合があります。
【経営承継相続人が死亡した場合】
非上場株式等の相続税の納税猶予制度の適用を受けている後継者が死亡した場合には、猶予を受けている相続税額に相当する相続税は免除されます。
※免除されるのは、死亡した納税猶予を受けていた後継者であって、次の後継者が納税猶予の適用を受けなければ、相続税が課税される場合があります。
【相続税の納税猶予から贈与税の納税猶予に移行した場合】
相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日までの期間(経営承継期間)の満了する日の翌日以後に、納税猶予を受けている後継者が次の後継者に対して、適用を受けている株式等を一括して贈与し、その後継者が贈与税の納税猶予の適用を受けた場合には、猶予を受けている相続税額のうち贈与税の納税猶予適用部分に対応する相続税額が免除されます。
※免除されるのは、納税猶予を受けていた後継者であって、次の経営者は贈与税を猶予されるにすぎません。
《6か月以内に届出書を提出》
経営承継相続人が死亡した場合や適用株式等を経営承継受贈者に贈与した場合には、これらに該当することとなった日以後6月を経過する日までに届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
☆相続税の納税猶予から贈与税の納税猶予に移行した場合は、改めてどこまでの範囲で納税猶予が適用されるかを確認する必要がありますので、注意が必要です。 -
《相続税の申告期限から5年以内は守らなければならないこと》
納税猶予適用後、猶予を継続するためには、いくつかの守るべきルールがあります。【都道府県への報告と所轄税務署長への届出】
相続税の納税猶予適用開始から5年の間、毎年1回都道府県に報告をし、その報告によって交付される「要件に該当する旨」の報告書を添付して所轄税務署長に提出します。
その5年間に次に該当すると、猶予税額と猶予税額に対応する延滞税の納付が必要になります。
☆該当した日から2月を経過する日をもって相続税の納税猶予の適用期限が確定し、猶予税額と猶予税額に対応する延滞税の納付が必要になりますので、該当する日を確認する必要があります。《納税猶予が打ち切られる場合》
【後継者(経営承継した相続人)の身分】- 経営承継した相続人が代表者でなくなった場合
経営承継相続人は、最低でも5年間は代表者を続ける必要がある。
もっとも、不慮の事故などで身体障害者手帳の1級の交付を受けるなどで代表者を務められなくなった場合には代表者を退任しても猶予が継続される。
【従業員の継続雇用割合】
- 基準日における常時使用する従業員の数が、相続開始の日の常時使用する従業員の数から5年間の平均で、80%に満たないこととなった場合
- 「常時使用する従業員の数」は、厚生年金保険の標準報酬月額決定通知書又は健康保険の標準報酬月額決定通知書に記載された被保険者の人数から、使用人兼務役員以外の役員や、経営承継相続人の親族等を差し引いた人数です。
- 常時使用する従業員数の8割維持は、被相続人の相続開始日における従業員数を分母に、相続税の申告期限から1年後の報告基準日の従業員数を分子として計算します。
【特例措置の創設】
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、従業員の継続雇用割合の80%を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
【持ち株比率】- 経営承継した相続人とその同族関係者が有する議決権数がその会社の総株主等議決権数の50%以下になった場合
- 同族関係者のうちいずれかの者が経営承継した相続人の議決権数を超える議決権数を保有することとなった場合
- 経営承継した相続人とその同族関係者で総株主等議決権数の過半数を保有し、かつ、経営承継した相続人が同族関係者の中で筆頭株主でなければならないという、持株比率要件を満たさなくなった場合
- 他の同族株主間で議決権株式の移動があると、筆頭株主が経営承継相続人以外の同族株主になる可能性がある持株な状況の場合には、特に留意が必要です。
【株式等の譲渡又は贈与】
- 経営承継した相続人が特例適用を受けている株式等の一部の譲渡又は贈与をした場合(適格株式交換等による一部譲渡を除く。)
- ※適用対象株式等を、たとえ1株であろうとも売却や贈与した場合には猶予取消しとなります。
経営承継した相続人が特例適用を受けている株式等の全部の譲渡をした場合(適格株式交換等をした場合を除く。)
非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度の認定事務は、経済産業大臣が行っていました。
税制改正により、2017年4月1日以降は都道府県知事に移譲されています。☆その他に、認定を受けた会社の組織や議決権に異動があった場合なども適用打切りの対象となる場合がありますので、確認が必要です。
関連ページ
- 経営承継した相続人が代表者でなくなった場合
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《5年経過後、譲渡、倒産、消滅などがあった場合》
相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日までの経営承継期間の末日の翌日以後に、認定承継会社の非上場株式等の全部について次の(1)~(4)のような譲渡等をした場合には、一定の手続をとることによって猶予を受けている相続税の一定の金額について免除を受けることができます。
(1)納税猶予適用株式等の全部を譲渡した場合
①次の要件をすべて満たす持分の定めのある法人(医療法人を除く。)又は個人で譲渡後の認定承継会社の経営を実質的に支配する者に対する譲渡- 経営承継した相続人と特別の関係のある者でないこと
- 譲渡を受けた者とその者と特別の関係のある者の有する認定承継会社の議決権数の合計が総株主等議決権数の50%を超えていること
- 譲渡を受けた者がその者と特別の関係のある者の中で筆頭株主であること
- その譲渡を受けた者が認定承継会社の代表権を有すること。その者が持分の定めのある法人である場合には、その法人の役員又は業務執行社員で法人の経営に従事している者が代表権を有すること
(2)破産手続開始決定又は特別清算手続開始命令があった場合
認定承継会社について破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
(3)合併により消滅した場合
認定承継会社が合併され、その合併について吸収合併存続会社等がその経営承継相続人等と特別の関係がある者以外のものであり、かつ、その合併に際してその吸収合併存続会社等の株式等の交付がない場合
(4)株式交換等により他の会社の完全子会社になった場合
認定承継会社が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社になった場合で、その他の会社がその経営承継相続人等と特別の関係がある者以外のものであり、かつ、その株式交換等に際してその他の会社の株式等の交付がない場合
【特例措置の創設】
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
現行制度において、上記の通り民事再生・会社更生時にその時点の評価額で相続税を再計算し、超える部分の猶予税額を免除する規定があります。
特例措置では、譲渡時・合併による消滅時・解散時に同様の制度が導入され、一部減免されます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。☆免除される税額については、それぞれのケースによって違ってきますので、確認が必要です。
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《遺言があっても遺留分の減殺請求により一部株式を渡さざるを得ない場合がある》
民法では被相続人に相続が発生すると同時に被相続人の財産は法定相続人による法定相続分によって相続することとされていますが、被相続人が遺言書を作成していた場合には、その遺言書が法的要件を満たしている限りこれに従って遺言執行が行われます。
相続人の全員が合意すれば遺言内容と異なる遺産分割協議をしてこれに基づいて分割することもできます。
【自社株式についても法定相続人による法定相続が原則】
会社経営者が相続人の1人に後継者として会社経営をまかせ、会社の継続発展を託そうとすれば、その会社の経営権を経営承継する相続人にもってもらう必要がある。
具体的には、株主総会における特別決議に必要な議決権の3分の2以上を経営承継相続人が保有することで安定した経営が期待できます。
しかし、財産に占める自社株式の評価額の割合が大半であるケースも多く、そうなると原則である法定相続分や遺留分を主張されると、経営権の確保の障害となるケースが出てきます。
【事例で検証 ①】 遺留分を満たさない遺言をした場合
非上場会社の経営者である被相続人に相続が発生し、遺言によって自社株式(評価額5億5,000万円)を長男に、二男に預貯金3,000万円、長女には預貯金2,000万円を相続させたとする(配偶者はいないものとします)。
※遺留分 ⇒ 二男と長女の法定相続分は3分の1、その2分の1、すなわち6分の1の遺留分があります。
よって、財産の合計は6億円であるため、遺留分はそれぞれ1億円になります。
☆二男か長女のいずれかが遺留分の減殺請求をした時点で自社株式は準共有状態となり、単独では議決権行使ができなくなります。
【事例で検証 ②】 自社株式を生前贈与し、残りを遺言した場合
先代経営者が元気な間に自社株式(評価額5億5,000万円)を長男に贈与しておき、遺言書で長男に自宅、二男に預貯金3,000万円、長女に預貯金2,000万円をそれぞれ相続させることとする(配偶者はいないものとします)。
※遺留分 ⇒ 二男と長女の法定相続分は3分の1、その2分の1、すなわち6分の1の遺留分があります。
よって、相続発生時点の被相続人の財産だけで遺留分の計算をすると約1,667万円になります。
☆遺留分の計算においては生前の特別受益(自社株の生前贈与)を持ち戻して計算することとされていますので、遺留分は結局事例1と同じで1億円ということになり、二男か長女のいずれかが遺留分の減殺請求をした時点で自社株式は準共有状態となり、単独では議決権行使ができなくなります。
☆準共有の状態となると、議決権行使が困難となる場合がありますので注意してください。
【遺留分】
民法は法定相続人による法定相続を原則としているので、相続人は本来の法定相続分の2分の1(直系尊属のみの場合は3分の1)を遺留分として確保することができることとされています。【遺留分に満たない相続人から遺留分減殺請求があった場合】
会社経営者が後継者に自社株式のすべてを遺贈するという遺言書を作成していても、他の相続人が遺留分に満たない財産しか取得していない場合に遺留分の減殺請求が行われると、原則としてすべての財産ごとに、減殺請求をした相続人の遺留分について権利が及ぶことになります。
そのため、自社株式の場合には、すべての株式に遺留分が及ぶことになるので、請求者が代償金で納得しない限り、遺留分に相当する株式については渡さざるを得ない場合がでてきます。関連ページ
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《遺留分とは?》
【相続財産に対する各相続人の遺留分】
相続人が自分の取り分として主張出来る、相続財産における一定の割合で、不当な遺言をされた相続人を救済するもの。
※配偶者・子・直系尊属に認められ、兄弟姉妹には認められない。- 子と配偶者が相続人・・・・・・・子が4分の1、配偶者が4分の1。
- 父母と配偶者が相続人・・・・・・配偶者が3分の1、父母が6分の1。
- 兄弟姉妹と配偶者が相続人・・・・配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし。
- 配偶者のみが相続人・・・・・・・配偶者が2分の1。
- 子のみが相続人・・・・・・・・・子が2分の1。
- 直系尊属のみが相続人・・・・・・直系尊属が3分の1。
兄弟姉妹のみが相続人・・・・・・兄弟姉妹には遺留分なし。
関連ページ
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《遺留分はどのように計算するのですか?》
計算式:遺留分の基礎となる「みなし相続財産」×遺留分割合
※遺留分の基礎となる「みなし相続財産」の価額は、「被相続人が相続開始の時に所有していた財産の額+生前に贈与した財産の価額−債務の全額」となります。【加算する生前贈与の範囲】
①相続開始前1年以内に行われた贈与
②低額で譲渡された財産がある場合の相当の対価との差額・債務を免除されたことによる利益の額
③当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与(相続開始前1年よりも前になされたものを含みます)
④相続人が婚姻や養子縁組のため、又は生活資金として受けた贈与(相続開始前1年よりも前になされたものを含みます)
⑤自社株式の生前贈与(相続開始前1年よりも前になされたものを含みます)
※加算される贈与の額は、相続開始の時の価額で、贈与された時の価額ではありません。もらった人が使ってしまって財産が消滅していたり、価額に増減があった時には、相続開始の時になお現状のままあるものとして、価値を見直して評価されます。☆遺言による財産の取得(遺贈)と生前贈与がある場合や複数の生前贈与がある場合には、遺留分減殺請求の順序が問題となりますので注意が必要です。
関連ページ
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《遺留分に関する民法の特例が必要な理由》
経営承継する相続人が会社を引き継いで安定して企業経営を続けていくためには、経営権を経営承継する後継者に集中しておかなければなりません。
そのために先代経営者が後継者育成をしっかり行うとともに、その過程で会社の議決権株式を生前贈与しておく必要があります。
その上でしっかりと遺言書を作成して相続人間で争いが生じないように手を打つことが重要です。
【自社株の生前贈与は特別受益】
民法は法定相続分による法定相続が原則です。
そのため自社株の生前贈与は特別受益として相続財産に持ち戻されて遺産分割が行われます。
また、遺言書を作成していても、あるいは後継者以外の相続人に遺留分の放棄をしてもらっていても完全に安心できるわけではありません。
【民法の遺留分に関する特例による合意】
生前贈与した自社株に対する遺留分減殺請求の影響を最小限にとどめるため、中小企業経営承継円滑化法が制定され、遺留分に関する民法の特例の規定が設けられました。☆遺留分に関する民法の特例では、2種類の合意が可能になりましたので、確認が必要です。
関連ページ
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《遺留分に関する民法の特例と贈与税の納税猶予の違い》
【趣旨の違いから内容に違いがあったが改正された】
遺留分に関する民法の特例は推定相続人にしか適用されなかったが、平成28年4月1日以降の合意から、推定相続人以外にも適用範囲がひろがった。これによって、贈与税の納税猶予と遺留分に関する民法の特例が適用される後継者の範囲が同様の範囲となった。
【適用対象となる議決権割合が異なる】遺留分に関する民法の特例 ⇒ 先代経営者から既に保有している株式等と合わせて贈与を受けた後で総株主等議決権数の過半数の議決権の保有が必要です。
贈与税の納税猶予 ⇒ 後継者が既に保有している議決権と合計して発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでであれば、議決権の割合について特に定めがありません。
【贈与税の納税猶予は一括して贈与を受けなければならない】
遺留分に関する民法の特例 ⇒ 過去に贈与を受けている株式等があった場合には、それらも含めて特別受益となる株式等については適用対象となります。
贈与税の納税猶予 ⇒ 贈与を受ける時点で先代経営者から後継者が既に保有している議決権数と合計して3分の2に達するまでの株式等について一括して贈与を受けなければなりません。☆先代経営者の保有している株式と後継者が既に保有している株式の議決権の合計によっては、先代経営者は保有する全ての自社株を贈与しなければなりません。
【特例措置の創設 贈与税の納税猶予制度】
【先代経営者の役員退任】
遺留分に関する民法の特例 ⇒ 合意時点で先代経営者は代表者であっても代表者でなくなっていても適用を受けることができます。
贈与税の納税猶予 ⇒ 贈与の時点で、先代経営者は役員を退任していなければなりません。
平成30年度税制改正により、相続税・贈与税の納税制度に10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、発行済議決権株式総数の全てが対象となります(現行制度では、発行済議決権株式総数の3分の2が限度)。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
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《自社株対策のポイント》
自社株を後継者に集中させることは、経営権を確保するうえで重要な課題です。
そこで、財産権の承継では、株式が必要以上に分散しない様な対策を講じなければなりません。
①後継者とは別に相続人がいる場合
遺言を活用して、株式は後継者が相続し、会社に関係のない相続人には現金や非事業用の不動産、自宅などを与えるという配慮が必要です。
②事業用に使用している不動産を会社ではなく個人で所有している場合
法人への譲渡や代償分割などの対策を講じて、その不動産を後継者以外の相続人に渡さなくてすむ方法を考える必要があります。
③自社株評価が高い場合
株式の評価が高額で、後継者が相続税の支払いが出来ないという事態にならぬよう、生命保険や死亡退職金で納税資金を残す必要があります。関連ページ
参考ブログ1 参考ブログ2 -
《自社株を遺留分から除外する合意》
事業承継する相続人が安定して会社経営を継続していくためには株主総会における議決権を過半数、できれば3分の2以上確保しておく必要があります。
そのために先代経営者から生前に自社株式等の贈与を受けておき、その上で遺留分算定基礎財産から除外することができれば万全であると言えます。
① 法定相続分による法定相続の例外規定
相続に関する民法の基本は、法定相続分による法定相続であり、生前贈与した自社株式についても特別受益として加算されて、法定相続の算定基礎財産に加算されるのが原則ですが、この自社株式について遺留分の算定基礎から除外することを可能にしたのが、遺留分に関する民法の特例の除外合意です。
②合意時に代償財産を渡す必要があるのか
非後継者に代償財産を渡さなければ、合意を認めないということではありませんので、非後継者から合意を得ることができれば別の財産、例えば生命保険や現金などを渡す必要はありません。
しかし、合意を得る際には非後継者も納得しやすい条件が必要となることと、『合意が当事者全員の真意であることの心証』により家庭裁判所が許可するので、合意が真意であることを証する対策として代償資産の交付を約束する附帯条項があった方がよいと考えられます。
③後継者が単独で手続できる
中小企業経営承継円滑化法では、一連の手続を後継者自身が単独で行うことができることとされており、その面でも実行しやすくなっています。
☆非後継者が遺留分の放棄を行えば同様の効果を得ることができますが、後継者が有利になるにもかかわらず、手続そのものは非後継者が自ら行う必要あるうえ、遺留分の放棄にはいくつかの問題があります。関連ページ
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《遺留分に関する民法の特例の適用要件》
後継者の経営権確保に欠かせない自社株の後継者への集中。相続発生後に相続人全員が話し合って遺産分割をすることが難しくても、先代経営者が健在の間であれば、まとまる可能性も高いと考えられます。
①当事者全員の合意が条件
先代経営者(旧代表者)から自社株式等の贈与を受けた後継者を含む旧代表者の推定相続人の全員が合意することができた場合には、特別受益に該当する生前に贈与を受けた株式等について、遺留分に関する民法の特例の適用を受けることができます。
相続発生後に相続人全員が話し合って遺産分割をすることが難しくても、先代経営者がご健在の間であれば合意することができることもあるのではないかと考えられます。
②先代経営者(旧代表者)からの自社株の贈与があること
特例中小企業者である会社の元代表者又は現代表者が、その推定相続人の1人である後継経営者に株式等の贈与をすることが遺留分に関する民法特例の適用の要件とされている。
後継者は経営者としては不安が残るので株を贈与できないと思っておられる場合には、この特例の適用はできない。
③後継者は推定相続人であり特例の適用時に代表者であること
後継者は特例の適用を受ける時点で特例中小企業者の現代表者でなければならず、旧代表者の推定相続人でなければなりません。
ただし、代表者は複数いてもかまいません。
④既に議決権の過半数を保有していると適用対象外
後継者が特例合意対象株式等を除いて既に議決権比率が過半に達する株式等を保有している場合には、経営承継に必要な株式等を既に保有しているものとして遺留分に関する民法特例の適用対象外とされます。
ここでは株主総会において決議をすることができる事項の全部について議決権を行使することができない株式(全部事項無議決権株式)を除いて判定します。
⑤特例合意対象株式等を含めて過半数の議決権を保有すること
後継者の保有している株式等が特例合意対象株式等を除いて既に過半を保有していると特例適用の対象外とされる一方、特例合意対象株式等を含めた場合には、議決権の過半を保有しなければなりません。
この場合も全部事項無議決権を除いて判定します。関連ページ
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《遺留分の生前放棄》
遺留分の減殺請求があると経営承継する相続人が自社株式についての経営権を確保できなくなるおそれがあるため、被相続人の生前に経営承継相続人以外の相続人に対して、被相続人が遺留分の生前放棄を要請することがあります。
相続放棄は被相続人の生前にすることができませんが、遺留分の放棄は家庭裁判所の許可を得ることによって被相続人の生前に行うことが可能だからです。
【遺留分の放棄が認められる条件】
遺留分の放棄を行うかどうかは相続人個人の自由意思ですが、相続人が被相続人の健在であるうちに遺留分の放棄をしたいといっても、無制限に生前の遺留分放棄を認めると被相続人からの強要で放棄させられることもあり得ます。そこで、遺留分の生前放棄の許可審判を行うことによって乱用を防止することとしています。
①放棄の理由に合理性や必要性が認められること。
②代替性が認められること。
※遺留分放棄をする際には原則として相当な額の生前贈与や生命保険の受取人指定をしているか、それなりの理由が必要となります。
☆遺留分放棄は取消せますの注意が必要です。関連ページ
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《先代経営者の準備事項》
先代経営者は後継者育成から長期にわたってさまざまな準備をする必要があるため、長期にわたる経営承継の計画を作成し、その過程で納税猶予制度適用が可能になるように準備しておく必要があります。
①後継者を決定し、後継者に対する株式などの贈与等の計画をする。
②名義株式を真の所有者名義にしておく。
③先代経営者は代表権を持っている間に、同族関係者で総株主等議決権株式数の50%超を保有するようにする。
④先代経営者は代表権を持っている間に、同族関係者間で筆頭株主であることを確保しておく(同じ株数の人がいてもかまいません)。
⑤常時使用する従業員数をスリムにすることで、従業員の8割以上を確保しやすいようにする。
⑥資産保有型会社又は資産運用型会社(以下合わせて「資産管理会社」という。)にならないように5人以上の従業員を確保し、事業実態を証明できるようにしておく。☆⑥では常時使用する従業員に含まれる範囲に注意が必要です。
【特例措置の創設】
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
特例措置では、雇用確保要件の8割を下回った場合でも、一定の書類を提出すれば、納税猶予が継続されます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。関連ページ
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《自社株式の整理》
【特例措置の創設】
後継者が先代経営者からの贈与や相続などで取得した後で発行済議決権株式総数の3分の2以上を確保すれば、ほとんどの会社が行う行為について意思決定権を確保できます。
そこで重要なのが、自社株式の整理です。
【後継者以外の兄弟やその家族に分散している自社株式の集約】
後継者以外の後継者の兄弟姉妹やその配偶者及びその子に、株式が分散している場合、後継者が確保できる株式数が、発行済議決権株式総数の3分の2より少ない場合には株式を後継者が確保するために、兄弟姉妹とその家族から株式を後継者に集中させる必要があります。
①先代経営者が分散している自社株式を買取る方法
先代経営者が自己資金なり融資を受けて自社株式を買い集め、その部分について納税猶予を受けると納税猶予を受けることができる金額が増え、相続税の納税額が減少します。
②遺言と同時に後継者に対する直接贈与の合意を交わす
先代経営者が遺言書を作成すると同時に、後継者以外の兄弟姉妹とその家族が保有している自社株式について、先代経営者に相続が発生した後に後継者に贈与する旨の合意書を交わす方法があります。
☆贈与税の納税猶予もしくは相続税の納税猶予を考慮して、株式を集約しないと納税猶予の適用対象が少なくなることがあります。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①複数の株式所有者からの贈与等も可能 ※現行制度も改正
先代経営者からの一定の贈与を条件に、後継者が先代経営者以外の者(役員になったことのない株主や親族以外の者)から贈与等により取得する非上場株式等についても納税猶予の適用対象となります。
②後継者の範囲拡大
代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。 -
《分散した自社株式を買取る場合の注意点》
【特例措置の創設 相続税・贈与税の納税猶予】
経営を安定して継続していくためには、経営者あるいは経営者一家が議決権の少なくとも過半数を確保していることが望ましい。
そこで、経営者あるいは後継者が分散している株式を買い取るのが一般的である。
【先代経営者が買い取る場合と後継者が買い取る場合の違い】
①遺留分に関する民法の特例ではどちらが買い取っても適用される
遺留分に関する民法の特例は、先代経営者が保有している株式から贈与を受けた株式と後継者が保有している株式を合計して議決権の過半数に達すればよいことになっています。
したがって、民法特例の適用ということからすればいずれが買い取ってもよいことになります。
②納税猶予を考慮すると先代経営者が買い取る方が有利な場合がある
先代経営者が買い取り、その分も贈与すれば納税猶予適用対象となるので、現預金が自社株式に変わることによってその分納税猶予部分が増え、後継者が納付すべき税額が減少するという効果が見込めます。
後継者が買い取ると先代経営者が買い取る場合と比較して民法特例には影響はないが、納税猶予については適用対象にならないことになります。
【買取価格】
先代経営者なり後継者が株式を買い取るときの価格は、相手が第三者だと、当然先方の買取希望価格があります。
ただし、財産評価基本通達で計算した価額より低い価格で支配株主(買取後で判定する。)が買い取るときには、税務上は原則として買取価格と評価額の差額について買い取った側に贈与税が課税されます。
【売った側には譲渡所得税】
株式を売った側には譲渡価額から取得価額を差し引いた所得に対して、個人であれば譲渡所得税が課税されるし、法人であれば法人税が課税されます。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①複数の株式所有者からの贈与等も可能 ※現行制度も改正
先代経営者からの一定の贈与を条件に、後継者が先代経営者以外の者(役員になったことのない株主や親族以外の者)から贈与等により取得する非上場株式等についても納税猶予の適用対象となります。
②後継者の範囲拡大
代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。
☆納税猶予と民法特例で議決権の保有要件に違いがありますので注意が必要です。
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《特別受益を考慮しないとトラブルに!?》
遺産分割は、相続人による法定相続が原則ですが、その計算をする場合には被相続人の相続開始時の財産だけではなく、相続人が生前に被相続人から贈与を受けた財産や遺言によって遺贈された財産を含めて計算することになります。
この生前贈与財産や遺贈財産のことを特別受益といい、これを含めて法定相続分を計算することを「特別受益の持ち戻し」といいます。
ところが実務上は相続開始時の財産だけで生前贈与を考慮せずに遺産分割されていることの方が多いので、思わぬトラブルの原因となります。【特別受益財産の持ち戻しは年数制限がない】
相続税の計算をする上で、相続開始前3年内の被相続人から相続人に贈与された財産は、相続税の課税財産に加算されることとされています。
よく似ていますが、特別受益財産を持ち戻して法定相続分の計算をする際には年数制限がなく、すべての特別受益を加算して計算することとされています。
【特別受益とみなされる範囲】
特別受益には被相続人からの遺贈財産、婚姻のための持参金・支度金、養子縁組のための持参金・支度金、独立開業資金、住宅取得資金、高等教育費用などの生計の資本としての贈与などがあります。
もちろん、経営を承継する推定相続人が自社株式を生前贈与された場合も、特別受益となります。
これらは民法の基本である法定相続分の計算をする上では当然に加算されることとされています。
☆株価が低い時に生前贈与するケースが多いと思いますが、特別受益の持ち戻しの評価額は、贈与時の価額ではないので注意が必要です。 -
《特別受益となる自社株贈与に対する遺留分減殺請求に備える》
相続人への自社株の生前贈与は、特別受益として相続の前渡し分とみなされ、原則として何年前のものであっても合算の対象となり、遺留分算定基礎財産に算入されます。
さらにこの際、合算される贈与財産の評価時点は、贈与時でなく相続開始時となります。
【遺留分減殺請求があると後継者の努力は報われない】
遺留分減殺請求をされると、後継者に生前贈与された株式の価値が、後継者の貢献により上昇した場合でも、当該価値上昇分も遺留分減殺請求の対象となります。
結果として、後継者が事業を頑張れば頑張るほど、後継者以外の人の遺留分が増えるという皮肉な結果が生じてしまい、後継者の経営意欲を阻害する結果となりかねません。
そのために、遺留分に関する民法の特例が制定されました。
【自社株式の生前贈与に遺留分の特例】
先代経営者が株主の経営承継相続人に贈与した株式等について、先代経営者の生前にその推定相続人全員が合意することによって
①先代経営者から贈与を受けた株式等を遺留分算定基礎財産から除外できる。
②遺留分計算をする場合の株式等の評価額を合意時の価格によって固定できる。
以上の2点が民法の特例として可能になりました。【経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要】
【特例措置の創設 贈与税の納税猶予】
先代経営者の推定相続人全員の合意を前提に、まず経済産業大臣に「中小企業経営承継円滑化法」の規定の内容を満たしていることについての確認を受ける必要があります。
その確認を受けた上で、次に家庭裁判所の許可を得ることが必要です。
【後継者が単独で手続きできる】
これらの一連の手続は、民法の遺留分の放棄のように遺留分放棄をしようとする者が直接手続をする必要はなく、合意文書をもって後継者が単独で申請することができます。
【適用される範囲は納税猶予と比較して狭い】
この適用を受けるには、さまざまな適用の要件を満たさなければならないので十分注意が必要です。
①先代経営者は特例中小企業者の元代表者又は現代表者であること。
②後継者に対して生前に自社株式を贈与していなければならないこと。
③後継者は遺留分に関する民法の特例の適用を受ける時点では特例中小企業者の代表者でなければならないこと。
④贈与等の結果、後継者が議決権の過半数を保有することになった場合に限られる。
※他の株主などから既に株式等の過半数を譲渡や贈与などで保有している場合には適用対象にならない。
平成30年度税制改正により、10年間限定の特例措置が創設されました。
①複数の株式所有者からの贈与等も可能 ※現行制度も改正
原則として先代経営者からの一括贈与を条件に、後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式等についても、特例経営承継期間内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、対象となります。役員になったことのない株主や親族以外の人からの贈与等でも適用が可能です。
現行制度でも、この点は改正されて適用可能となっています。
②受贈者の範囲拡大
「特例承継計画」に記載された代表権を有する後継者で、発行済議決権株式の10%を有する3名までが対象となります。
現行制度では、後継者は筆頭株主である代表者1名に限られます。
※特例措置の適用を受けるには、一定の期間内に書類の提出等が必要となります。【民法特例の適用対象となる会社】
民法特例の適用対象になる会社は、中小企業者である会社である。
☆先代経営者から自社株式の贈与を受けた先代経営者の相続人だけが対象となるなど、贈与税の納税猶予の適用対象者とは異なります。また、遺留分がある相続人が適用対象であることにも注意してください。関連ページ
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《生前贈与に対する民法と税法の違いに注意!》
生前贈与に関しては、民法、税法ともに生前贈与を受けた者以外の相続人に対する一定の保護規定を設けていますが、その範囲は大きく異なります。
相続発生に認識しなければならない持ち戻しの規定は以下のような違いがあります。
【相続税法】
①相続開始前3年内に相続人に贈与された贈与財産で贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されたもの
②相続時精算課税制度によって贈与された財産
【民法=特別受益】
(1)特別受益財産に年数制限はなく、すべての特別受益を加算して計算
(2)範囲(例)
①会社を引き継ぐための自社株式の贈与
②披相続人からの遺贈財産
③婚姻のための持参金・支度金
④養子縁組のための持参金・支度金
⑤生計の資本としての贈与
⑥独立資金、住宅取得資金、高等教育費用
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《一般社団法人とは何か》
近年、さまざまな団体が、一般社団法人として新たに組織化されています。
一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立される法人で、典型としてはイギリスの紳士クラブをイメージしたものと言われています。
人の集まりであり、構成員としての社員を必要とします。
【社員に経費の分担を課すことも可能です】
定款をもって社員に経費の分担義務を課すこともできます。
※会員から会費を集めて、会の事務費とすることができますので、幅広く多くの団体に採用されています。【出資者が存在しません】
一般社団法人の最大の特徴は出資者が存在しないことです。
社員は出資者ではなく、単なる決議機関です。
そのため、一般社団法人に属する財産が出資者に配当されることや払戻しされることは想定されていません。
その意味で、私立学校やNPO法人、基金型の医療法人と同質の法人です。
【事業目的に制限はありません】
私立学校やNPO法人、基金型の医療法人と同質の法人であるにもかかわらず、目的には制限がなく、株式会社のように営利事業を行うことも自由にできます。
34業種にのみ課税される公益法人として活動することも可能ですし、さらに公益認定を受ければ、本物の公益法人になることもできます。関連ページ
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《一般社団法人の特徴》
事業承継に活用するという観点から、一般社団法人の特徴をみていきます。
【設立が簡単であること】
①誰でも登記のみで一般社団法人を設立できます。
②株式会社と異なり資本金の払込みを必要とせず、設立に際して金銭の拠出も必要ありません。
③組織形態は、株式会社と同様に最終意思決定機関である社員2名と、執行機関である理事1名のみで運営できます。
④社員と理事は兼ねることができるので、夫婦2人で一般社団法人を運営することができます。【出資という概念がありません】
一般社団法人には出資という概念がないので、株式会社のような出資者が存在しません。
しかし、一般社団法人の残余財産については、定款や解散後の社員総会の決議により帰属者を自由に決定できるので、一般社団法人には所有者が存在しないにもかかわらず、最終的には設立者や社員が残余財産を取り戻すことも可能な「いいとこ取り」ができる法人になっています。
☆定款では、残余財産の帰属先を設立者や社員にすることはできませんので、注意が必要です。【一般社団法人への課税】
一般社団法人は、株式会社と同様に全所得課税が基本です。関連ページ
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《一般社団法人の設立手続》
公益法人制度改革により、一般社団法人は、登記手続のみで設立できるようになりました。
【定款の作成・認証】
設立時社員が、定款を作成し、全員が記名押印します。この定款には、株式会社と異なり、印紙税法に課税する旨の記載がないことから、収入印紙の貼付は不要です。
定款の認証は、一般社団法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局に所属する公証人役場で行います。
定款認証には、設立時社員の3か月以内の印鑑証明書が必要になるため、登記申請分とあわせてあらかじめ準備しておきます。
※公証人に支払う定款認証手数料は定款認証手数料(法定費用)5万円+定款の謄本費用となります。【財産の拠出】
株式会社では資本金の払込みが必須とされていますが、一般社団法人では、財産の拠出手続である基金の募集及び引受人による払込みの手続きは必須ではありません。
【登記申請】
一般社団法人の設立登記の申請は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局で行います。
登記申請の日が設立日となるため、1月1日など法務局が閉庁している日を設立日とすることはできません。
【登録免許税】
設立登記の登録免許税は一律6万円です。
※株式会社の場合は、資本金の額に1,000分7をかけた金額であり、その金額が15万円未満の場合は15万円となります。 -
《一般社団法人の活動原資》
一般社団法人の活動原資は、基金と呼ばれます。
基金とは、一般社団法人に拠出された財産であり、一般社団法人が拠出者に対して、定款の定めに従い返還義務を負うものです。
拠出財産が不動産など金銭以外の財産である場合は、拠出時の時価相当額の返還義務を負うことになります。
また、社員への剰余金の分配を行ってはならない趣旨から基金への利息の付与は禁止されています。
【基金制度の採用】
基金制度の採用は任意です。また、基金として集めた金銭の使途に制限はなく、一般社団法人の活動に自由に活用することができます。
基金は登記する必要はありませんが、いったん採用された基金制度を廃止することはできません。
☆任意団体などの人格のない社団が一般社団法人化する際に任意団体の預金などの財産を基金として受け入れる場合は注意が必要です。関連ページ
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《株式会社に対しての優位性》
【一般社団法人等に対する相続税の見直し】
相続対策の一環として、被相続人を出資者として株式会社を設立しても、稼得した留保利益は株価に反映され、相続税の課税対象に取り込まれてしまいます。
しかし、出資持分がない一般社団法人では、稼得した留保利益は社員や設立者には帰属せず、相続税の対象外となります。
平成30年度税制改正により、特定一般社団法人等の理事が死亡した際には、一定の金額を被相続人から遺贈に取得したとみなし、特定一般社団法人等に相続税を課すこととしました。
課税対象となる理事に該当するかどうかは、相続開始の直前のみならず、理事でなくなった日から5年を経過していない者も含まれます。
特定一般社団法人等とは、以下の要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいいます。
・相続開始直前において、理事のうち同族理事が過半数
・相続開始前5年以内において、役員の同族理事が過半数であった期間が3年以上
【同族理事とは】
対象となる同族理事とは次の者をいいます。
①被相続人の配偶者
②被相続人の3親等内の親族
③被相続人と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
④被相続人の使用人等
⑤③④と生計を一にしているこれらの者の配偶者又は3親等内の親族
⑥被相続人が会社役員となっている他の法人等の会社役員又は使用人
相続税が課されることとなる一定の金額は次の算式で求めます。
相続開始時の特定一般社団法人等の純資産額÷特定一般社団法人等の同族理事の数+1(被相続人)
この改正は、原則として平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用します。
ただし、平成30年4月1日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用することとなります☆利用価値の低い不動産などを一般社団法人に譲渡するなど、誰も相続したがらない資産を一般社団法人で保有するなども一つの活用方法と考えられます。
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《出資者が存在しないという個性の活用》
一般社団法人には出資者が存在しないため、蓄積された留保利益は相続財産を構成せず、相続税が課税されませんので、株式会社に比較し多様な面で税負担を有利に運営することができます。
①従業員持株会を脱退する社員が出現した場合には、これを一般社団法人で買い取れば、配当還元価額での買取りが可能になります。
②グループ税制の対象とならないことから、企業グループの財産の移転先として利用すれば、グループ税制外しのための受け皿となることができます。
③一般社団を不動産管理会社としての利用し、不動産を所有させ不動産の管理手数料を取得させます。この場合、不動産管理会社の収益は法人税を納付した残額を内部留保しても、相続税の課税対象となりません。
④後継者がいない会社の経営者が、一般財団法人を設立し、持株を『一般財団法人』に譲渡してしまう。一般財団法人は定款で定めた目的の変更が制限されるので、目的に株式の管理方法を定めることによって、経営者の意思を将来においても継続して実現することができます。
《税制面の課題と対策》
一般社団法人に個人の財産を移転し、資産管理会社として相続税を回避するというような、税制について今までにはなかった課題をもたらしたが、租税回避を防止するための税制も準備されています。
しかし、一般社団法人が自社で獲得した財産であれば、これら租税回避防止税制が適用されることはありません。関連ページ
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《信託の受託者を一般社団法人にする》
被相続人の財産管理については、相続時精算課税を利用して相続人名義にしてしまう方法や、同族会社を資産管理会社として活用する方法、さらには成年後見制度の利用などが考えられるが、その中でも自由度が高く、柔軟な管理が可能な一般社団法人を受託者とする信託は、有力な手法として利用できると考えられます。
しかし、信託制度を活用する場合に、受託者を個人とした場合、万一受託者である個人が死亡してしまった場合、問題が起こる可能性があります。☆受託者が欠けた場合に、新受託者が存在しない状態が一年間継続した場合は、信託契約が終了します。
【遺言代用信託の受託者として一般社団法人を活用】
遺言代用信託とは、当初は委託者が受益者となる自益信託だが、委託者が死亡した後は、指定された者が受益者となり、あるいは、委託者の死亡を始期として受益者が信託財産について給付を受ける権利を取得する信託のことです。
①一般社団法人の機関設計については、相続人が社員となり、その中から理事を選任します。
②社員の資格を定款において世襲とするよう定めておけば、親族全員で信託財産を管理することが可能となります。
③定款の目的は、信託の受託者となって、委託者から財産の信託譲渡を受けて管理運用することとします。関連ページ
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《株式買取りの受け皿としての一般社団法人》
従業員持株会を脱退する社員が出現した場合を詳しくみておきます。
①オーナー個人やオーナーの資産管理会社が、配当還元価額で株式を買い取ると、低額取得として、オーナー個人への贈与税課税や資産管理会社への受贈益課税の問題が生じます。
②発行会社が自己株式として買い取ると、オーナー個人が所有する株式の評価額が上昇することがあります。それは、自己株式数を控除した発行済株式数が減少することにより、1株当たりの利益金額などが増加するためです。【一般社団法人を受け皿にした場合】
一般社団法人であれば、配当還元価額で買い取っても低額取得による課税の問題は生じません。
一般社団法人は持分のない法人なので、オーナーの同族株主グループに含まれず、少数株主に該当するためです。
また、一般社団法人が買い取っても、株主が変わるだけなので、オーナー個人の株式の評価額に影響はありません。関連ページ
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《一般社団法人を不動産管理会社として活用する》
【一般社団法人等に対する相続税の見直し】
一般社団法人を不動産管理会社として活用する方法を詳しくみておきます。
給与所得控除や所得分散という対策は、一般社団法人を利用する方法でも実行することが可能です。具体的には、一般社団法人の理事長や理事として報酬を受け取るという方法です。
一般社団法人には出資者が存在しないという特徴を活かし、株式会社の場合とは異なる抜本的な相続税対策を行えることが大きなメリットとなります。
【内部留保金に相続税課税を受けない】
仮に、年1,000万円の不動産管理科を管理会社が受け取り、そこから300万円の法人税を納めたとしても700万円の利益剰余金が管理会社に留保されます。
これを10年続ければ7,000万円になり、株式会社の場合なら内部留保が株価に反映され、相続税の課税対象になってしまいますが、出資者が存在しない一般社団法人の場合は会社の内部留保に対する相続税の課税が行われません。※平成30年度改正により、一般社団法人に相続税が課税される場合が規定されています。詳細は以下の内容を参照ください。
平成30年度税制改正により、一般社団法人等にも相続税が課税される場合があります。
特定一般社団法人等の理事が死亡した際には、一定の金額を被相続人から遺贈に取得したとみなし、特定一般社団法人等に相続税が課されます。
課税対象となる理事に該当するかどうかは、相続開始の直前のみならず、理事でなくなった日から5年を経過していない者も含まれます。
特定一般社団法人等とは、以下の要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいいます。
・相続開始直前において、理事のうち同族理事が過半数
・相続開始前5年以内において、役員の同族理事が過半数であった期間が3年以上
【同族理事とは】
対象となる同族理事とは次の者をいいます。
①被相続人の配偶者
②被相続人の3親等内の親族
③被相続人と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
④被相続人の使用人等
⑤③④と生計を一にしているこれらの者の配偶者又は3親等内の親族
⑥被相続人が会社役員となっている他の法人等の会社役員又は使用人
相続税が課されることとなる一定の金額は次の算式で求めます。
相続開始時の特定一般社団法人等の純資産額÷特定一般社団法人等の同族理事の数+1(被相続人)
この改正は、原則として平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用します。
ただし、平成30年4月1日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用することとなります。
【株主を決める必要がない】
一般社団法人の場合は株式の所有という煩わしい問題がありませんので、賃貸物件を誰に相続させるのかが決まっていない場合や、幼い子供を株主にすることに支障があるようなときにも一般社団法人を利用することが可能です。
【倒産隔離できる】
個人が自己破産したとき、株式会社方式の場合は、個人が所有する株式も破産財団に含まれてしまいます。
しかし、一般社団法人の場合は、株主が存在せず、法人の存在は個人とは全く切り離されていため、オーナーの財産とは明確に区分され、所有財産を倒産隔離することができます。
【成年後見への備えも可能】
成年後見人制度は、被後見人の保護に限定した財産の管理しかできず、相続税対策の視点からは使い難い制度ともいえます。
オーナーについて成年後見が必要になった場合などにも、一般社団法人に管理を任せておけば、一般社団法人の理事の判断で賃貸業を継続することが可能です。
また、資産を一般社団法人に信託譲渡し、受託者として管理させる方法も有効です。関連ページ
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《信託とは何か?》
信託は、委託者が受託者に財産の管理を託し、その利益を受益者に取得させる制度です。
信託契約として締結されることが多いが、契約というより、強い信頼関係に基づき「信じて託された」関係と位置付けられます。
【受託者の立場】
受託者は信託財産の譲渡を受けるが、それはあくまでも受益者のために管理を行う手段にすぎません。
信託された財産は受託者の財産とは分別隔離して管理され、独立した信託財産を構成します。
つまり、受託者が倒産しても、信託財産は保全されます。
【一般財団法人と信託の違い】
委託者から任された目的に添って財産が管理され、その財産が委託者とは独立して存在するところは一般財団法人と同様ですが、一般財団法人とは異なり法人格を持ちません。
信託財産は受託者の人格を借りて、受託者が当事者として法律行為を行うことになります。関連ページ
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《財産の承継者を先の先まで決めておける信託》
このような信託を『後継ぎ遺贈型受益者連続信託』といいます。
受益者の死亡により、他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託で、残された配偶者の生活保障や個人企業における後継者確保の有効手段といえます。
※信託設定時に存在しない者(生まれていない子等)を連続受益者とすることも可能です。【有効期限】
財産の固定化防止や相続法の論理を考慮して、この信託がされた時から30年を経過した時以後において、現に存在する受益者が当該定めにより受益権を取得し、かつ、その受益者が死亡し又は当該受益権が消滅するまでの間に限り、その効力を有することになります。☆すなわち、30年経過した時点での受益者の次の受益者が最後の受益者となります。
【受益権の承継回数】
制限範囲内なら、受益者の死亡を契機とする受益権の承継の回数に、信託法上の制限はない。【後継ぎ遺贈型受益者連続信託の遺言に対する優位性】
後継ぎ遺贈型受益者連続信託と同様のことを、民法の遺言(遺贈)では、実現できません。
※遺言では、妻に財産を相続させられても、妻の死亡後に財産を先妻の子への譲与するというようなことまでは拘束できないとされています。☆子のない夫婦や前妻との子がいる場合等、自分の直系に財産を遺していきたい場合に有効な手段です。
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《次の財産承継者を指定する権利を持つ者を決めておける信託》
このような信託を『受益者指定権を有する者の定めのある信託』といいます。
この信託では、次に誰を受益者にするかを決める者(受益者指定権を有する者)を委託者以外の者にすることが出来ます。
通常は委託者が次の受益者を決めますが、はたしてその者が受益者にふさわしいかどうかが、委託者の死亡後は不明になるリスクを回避するための仕組みです。
☆後継者に持病があるとか、娘婿が離婚した場合とかに備えたい場合に有効な手段です。 -
《生命保険信託とは?》
「生命保険信託」とは、生命保険の加入者が死後に支払われる保険金について、受取人や受取時期などを生前に細かく設定できる信託制度です。【活用が期待できる例】
死亡保険金を渡したい家族に障害があったりして財産管理能力に不安のあるケースでは、保険金の使い道をあらかじめ詳細に設計できると、親である契約者は大いに安心です。
子どもが長年引きこもっているケースや、自分の死後の配偶者の生活が心配な老老介護状態の高齢者夫婦にも、活用の余地は大いにあるといえます。 -
《幼い息子が成人するまで会社を守り、息子に事業を承継させたい場合の信託活用》
このような場合に活用する信託形態を『事業承継型信託』とよんだりします。
子供が幼くて成人するまでの間、その経営を誰かに託したい場合に、経営の問題と株式の問題を分離しておきたいと考えるのは当然のことです。
【事業承継型信託】
自分の息子に事業を承継させたいが、まだ幼く、その能力にも不安がある場合に、自社株を信託して株式の分散を防止し、息子が一人前になるまでの間、事業経営を委託することによって、円滑な事業承継が可能となります。
①事業承継候補者が複数いる場合には、候補者として指定しておき、その選定について事業経営委託者等に委ねることも可能です。
②本人の死亡後も信託契約は継続するため、本人の意思に基づく事業承継が可能です。
③本人の生前中は、収益受益権は本人に帰属するため、本人は配当を受け取ることが可能ですし、本人死亡時に収益受益権を配偶者に帰属させることにより配偶者の生活安定を図ることもできます。
④後継者が幼年で、事業承継が困難な場合には、事業を信託し、受託者(事業経営受託者)により事業を継続させることが可能となります。また、議決権行使権を留保することも、指図権者に議決権行使を行わせることも可能である。
⑤受託者は信託契約に基づいた裁量の中で事業を行うことになります。信託期間終了時に事業承継者が事業を引き継ぎます。
⑥事業として一体化されている財産を自社株、事業用不動産、金融債権、知的財産権に分割し、承継させることが可能となります。
☆実際に信託契約を締結する場合には、後継者指名型・議決権行使型の信託契約もしくは、事業承継者の連続指名型の信託契約を結びます。 -
《長男に事業承継したいが、他の兄弟と紛争にならないようにしたい場合の信託活用》
遺言により財産を特定の相続人に相続させたい場合に、他の相続人の『遺留分』を侵害する場合があります。
侵害されている相続人が裁判所に訴えを提起し、その結果、多額の『代償金』の支払いもしくは、財産の一部の引渡しが必要という判決が下されることもあります。
このような事態に陥らないために生前からの対策として、『事業承継型信託(遺留分対策)』の活用が考えられます。
【事業承継型信託(遺留分対策)】
①信託を活用しない対策
自社株式を後継者に相続させる場合に、相続発生時には配偶者に半分、後継者に半分相続させ、配偶者の相続発生時には配偶者の所有する自社株を後継者に全て相続させる。
※これにより、遺留分問題解決の時期を遅らせることが可能となると同時に、事業承継者の指定、経営の安定、代償金原資の確保等を図る方法として信託の利用が考えられます。
②信託を活用する場合
自社株式を信託し、信託受益権を元本受益権と収益受益権に変換し、後継者に元本受益権(信託期間終了後に株式そのものを承継する権利)を、他の相続人に収益受益権(信託期間中の配当金を受け取る権利)を承継させて、信託期間中の株式の議決権行使者として事業承継者を指定することにより事業経営権を確保することが可能となります。
☆収益受益権と元本受益権に分離した上で、一次相続、二次相続を考慮した信託設定が必要となります。
☆☆参考☆☆ 参考ブログ1の「活用事例6」を参照してください。関連ページ