みんなの相続相談所 回答集 / 遺留分減殺請求

遺留分減殺請求をしたいのですが、家庭裁判所への訴えが必要ですか?

“遺留分減殺請求には、特に決まった方式はありません。
必ずしも訴えの方法によることを要せず、相手方に対する意思表示によってすることができます。”

“【遺留分減殺請求の行使】
遺留分減殺請求権は、必ずしも訴えの方法によることを要せず、相手方に対する意思表示によってなせば足りますが、後日の争いをできる限り回避し、事後の立証の便宜のため配達証明付内容証明郵便により行うとよいでしょう。”


遺留分減殺請求権は、いつでも行使できますか?

“できません。
遺留分減殺請求権には時効があります。”

“【遺留分減殺請求権の時効】
遺留分減殺請求権は、相続開始及び贈与・遺贈があったことと、それが遺留分を侵害し、 遺留分減殺請求をしうることを知ったときから1年以内に行使しなければ時効で消滅します。
また、これらの事実を知らなくとも、相続の開始から単に10年が経過した場合も同様に権利行使できなくなります。”


“亡くなった親族から、亡くなる5年前に生前贈与を受けました。私は相続人ではありません。
この贈与された財産は、遺留分減殺請求の対象になるのでしょうか?”

遺留分減殺請求の対象ではありません。

“【生前贈与財産と遺留分減殺請求】
被相続人が相続人以外(相続人を含む)に生前贈与した財産がある場合、生前贈与された財産は、被相続人の相続開始前1年以内に贈与されたもののみ、遺留分減殺請求の対象となるのが原則です。”


亡くなった父から、生前贈与を受けていました。父の相続において、この生前贈与された財産は、特別受益にあたるそうなのですが、遺留分減殺請求の対象になるのでしょうか?

遺留分減殺請求の対象になります。

“【生前贈与財産と遺留分減殺請求】
受贈者が相続人であり、当該贈与が特別受益にあたる場合には、贈与された財産は原則として遺留分減殺請求の対象なります。”


遺留分減殺請求に時効はありますか?

時効があります。

“【遺留分減殺請求の時効】
遺留分減殺請求権は、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないとき、また相続の開始のときから10年を経過した場合には消滅します。”


遺留分減殺請求により、遺留分を超える額の資産を取得しました。すべて相続税の課税対象ですか?

遺留分を超える部分は贈与で取得したことになり、贈与部分には贈与税が発生します。

“【遺留分減殺請求により遺留分を超える額の資産の取得があった場合】
遺留分迄の部分は相続で、遺留分を超える部分は贈与で取得したことになり、贈与部分には贈与税が発生します。”


結婚した時に父から受けた贈与を特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合、贈与時点の金額をそのまま加算したらよいのですか?

いいえ。贈与の時の金額を、相続開始のときの貨幣価値に換算して、遺留分算定の基礎となる財産の価額に加えます。

“【特別受益の評価】
贈与の時の金額を、相続開始のときの貨幣価値に換算した価額をもって評価することになります(最判昭51・3 ・18)。
※「贈与時」ではない。
《贈与財産が金銭である場合の評価》
遺留分減殺請求の対象となる贈与財産が金銭である場合、その金額は、贈与時ではなく相続開始の時を基準に価額を評価します。”


遺留分減殺請求をするのですが、その対象となる遺贈と贈与がある場合、どちらから減殺するのですか?

遺贈から減殺します。

“【遺贈と贈与がある場合の遺留分減殺請求】
遺贈を減殺した後でなければ贈与を減殺することができません。”


遺留分減殺請求をするのですが、目的となる遺贈が複数あります。どう減殺すればいいのでしょうか?

全部の遺贈がその価額の割合に応じて減殺されます。

“【複数ある遺贈から遺留分減殺請求をする】
遺贈間での先後関係はなく、全部の遺贈がその価額の割合に応じて減殺されることとなります。遺言者が遺言で別段の規定をしているときは、それに従います。”


遺留分減殺請求をするのですが、目的となる贈与が複数あります。どの贈与から減殺すればいいですか?

新しい贈与から減殺します。

“【複数ある贈与から遺留分減殺請求をする】
新しい贈与から減殺し、順に前の (過去の) 贈与に及ぶことになります。新旧の判断は、登記や登録の日時でなく契約の日時によって行われることとされています。”


遺留分減殺請求の行使前に、その目的物が第三者に譲渡されていました。遺留分減殺を第三者に主張することはできますか?

遺留分権利者は、第三者に遺留分減殺を主張することはできません。

“【遺留分減殺請求の行使前に第三者に譲渡された場合】
遺留分権利者は、第三者に遺留分減殺を主張することはできず、受贈者に対して価額の弁償を請求できるにすぎません。ただし、第三者が譲渡当時、遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合には、第三者に対しても現物の返還を請求することができます。この場合、第三者は価額を返還して現物の返還を免れることができます。”


友人Aに100万円貸していました。返済期日を過ぎても返済はなく、Aとも連絡が取れなくなりました。Aの父が最近亡くなり、遺産があることがわかりましたが、Aの父はAの兄に全財産を相続させる旨の遺言を遺していました。Aには遺留分減殺請求権があるので、Aに代わってこれを請求することはできますか?

Aに代わって請求することはできません。

“【遺留分減殺請求権と債権者代位権】
債権者代位権とは、債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる(債権者代位権:民法423条1項本文)権利です。ただし、債務者の一身に専属する権利は、代位行使することができない(民法423条但書)とされています。
債務者が有する遺留分減殺請求権も債権者代位権の対象となるかが問題となりますが、遺留分減殺請求権も、これを行使するか否かが遺留分権利者の意思に委ねられているため、423条1項但書にいう一身専属権です。よって、遺留分減殺請求権を第三者に譲渡するなど、遺留分権利者たる債務者が、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることはできません(最判平13・11・22)。”


遺留分減殺請求の行使はどのようにすればいいのですか?

遺留分減殺請求権の行使は、受遺者または受贈者に対する意思表示によってすれば足ります。

“【遺留分減殺請求権の行使の方法】
遺留分減殺請求権の行使は、受遺者又は受贈者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、いったんその意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生じます。”


被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合、遺留分請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをした時、その申入れには、遺留分減殺の意思表示が含まれると考えていいですか?

はい、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺請求の意思表示が含まれているとされます。

“【遺留分減殺請求の意思表示】
遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれるとされます(最判平10・ 6 ・11)。
《相続人の一部の者に遺贈された場合》
遺留分減殺請求権は、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合にも認められます。”


調停によって、共同相続人の1人に高い割合の寄与分が認められました。その額が他の相続人の遺留分に食い込んでいますが、これに対して遺留分減殺請求をすることはできますか?


遺留分減殺請求はできません。”

“【共同相続人内における寄与者に対する遺留分減殺請求】
他の相続人が遺留分減殺請求をすることはできないとされています。
理由としては、遺留分算定の基礎財産 (相続債務を控除) と寄与分算定の基礎財産 (相続債務は非控除) とが異なるものであり、遺留分減殺請求権は通常の訴訟によって行使される権利であるのに対し、寄与分は家庭裁判所の調停、審判により決定される権利であること、寄与分をもって遺留分減殺請求に対抗することが法技術的に困難といえるためとされています。”


被相続人が、寄与分を予め考慮し、寄与者に多く遺贈しました。そのことにより、他の相続人の遺留分が侵害されています。他の相続人は、この遺贈について減殺請求をすることができますか?

遺留分減殺請求はできます。

“【共同相続人内における寄与者に対する遺留分減殺請求】
遺留分を侵害された共同相続人は、遺贈について減殺請求をすることができます。寄与分は、共同相続人の協議において定め、協議が整わないときは寄与者の請求により、家庭裁判所における調停・審判によって定める(904条の2の②)とされています。
これ以外の方法、例えば遺言によって寄与分を定めても法的な強制力はありません。
したがって、寄与者に対して、、相続分の指定や遺贈あるいは「相続させる」遺言によって法定相続分以上の財産を帰属させる意思表示をした場合、それらが遺留分を侵害する場合は、寄与分との関係は問題にならず、遺贈等は減殺請求の対象になります。”


第三者に全額遺贈された場合、相続人の中に寄与者がいても、寄与分を考慮せずに遺留分減殺請求をしますか?

寄与分は考慮せずに遺留分減殺請求します。

“【遺贈と寄与分】
904条の2第3項から寄与分は被相続人が相続開始時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることが出来ませんので、遺贈された財産に寄与分は認められず、全財産が遺贈されると寄与分が成立する余地が無くなります。”


私は寄与に対する対価として生前贈与を受けています。この贈与は特別受益として持戻しが必要ですか?


持戻しの対象とはなりません。”

“【寄与分と特別受益の関係】
相続人の1人が寄与に対する実質的な対価としてすでに生前贈与や遺贈を受けている場合、特別受益の持戻免除の意思表示があったものとみて、その生前贈与等を持戻しの対象としません。一方、その限度で寄与分の請求を認めないことになります。
※持戻免除の意思表示・・・特別受益において、被相続人が遺贈又は贈与した額を持ち戻さなくてよいとする意思表示のこと。”