みんなの相続相談所 回答集 / 遺言の効力

先日亡くなった父が、遺言を残していたことがわかりました。遺言書は押印により封がされています。相続人であれば開封できますか?

遺言の種類によって異なりますが、「公正証書遺言」以外の遺言は、家庭裁判所において検認という手続を経て開封する必要があります。

“【検認手続】
検認とは、遺言書の偽造・変造を防ぎ、遺言書を確実に保存するために行う手続です。
遺言書に押印により封がされている場合、家庭裁判所において、この検認手続を経て開封する必要があります。
違反した場合、遺言書は無効になりません。ただし、5万円以下の過料などに処されます。
偽造や変造の余地のない公正証書遺言の場合、検認手続は不要です。”


遺産の分配方法を録画したDVDは、遺言として認められますか?

“遺言として認められません。
法律上、遺言として効力が生じるのは書面で残したもののみです。”

“《遺言と法律》
遺言は、法律の定める方式に従わなければ、することができません。
【普通方式】
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
【特別方式】
①危急時遺言
・一般臨危急時遺言
・船舶遭難者遺言
②隔絶地遺言
・伝染病隔離者遺言
・在船者遺言”


いったん遺言を作成しても、これを撤回し、また新たに遺言することは可能ですか?

作成した遺言を撤回し、新たに遺言することができます。

“【遺言の撤回】
遺言者が遺言内容の変更、取り消しは自由です。先の遺言と後の遺言が抵触しないときは、両方が有効となり、抵触する場合は、その部分について後の遺言が優先されます。”


生命保険の死亡保険金受取人は、遺言で変更できますか?

平成22年4月1日以後に締結された生命保険契約は遺言によって受取人の変更が可能です。

“【遺言書による生命保険金受取人の変更】
平成22年4月1日施行の保険法により、同日以後に締結された生命保険契約の保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができることとなりました。
※ただし、遺言による生命保険金受取人の変更については、その可否・手続等が統一されているわけではなく、実務上、保険法の施行前に締結された契約についても、各生命保険契約の定めるところに従い対応しています。
【平成22年4月1日施行の保険法】
保険金受取人の変更に関するルール
①同日以後に締結された生命保険契約の保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができる。(保険44条1項)。
②遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、「遺言者である保険契約者」の相続人が保険者に通知しなければ、保険金受取人の変更があったことを保険者に対して対抗することができない(同条2項)
③被保険者の同意が必要(保険45条)。
☆注意☆
・保険法の施行前に締結された保険契約には、保険金受取人の変更に関する上記保険法の規定は適用されない(同法附則4条)。
・遺言による生命保険金受取人の変更については、その可否・手続等が統一されているわけではなく、実務上、各生命保険契約に定めるところに従い対応している。
・遺言で保険金受取人を変更しようとする場合には、保険会社に対し、保険金受取人の変更の可否・手続を確認する必要がある。”


検認手続とは、どのようなときに必要なのでしょうか?

“押印により封がされている遺言書を開封するために必要な手続です。
※ただし、公正証書遺言の場合は不要です。”

“【検認手続】
遺言書に押印により封がされている場合、勝手に開封することはできません。
家庭裁判所に「検認」を請求し、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
※勝手に開封してしまっても、遺言書は無効になりませんが、5万円以下の過料などに処されます。
※偽造・変造の余地のない公正証書遺言の場合、検認手続は必要ありません。”


脅迫されて作成した遺言は、取り消せますか?

はい。詐欺や脅迫によって作成された遺言は、取り消すことができます。

“【遺言が取消可能な場合】
詐欺・脅迫により作成された遺言は、取消し可能です。”


遺言により、父から現金等の財産をもらいました。この財産は、贈与税の対象になるのでしょうか?

相続税の対象となります。

“【遺贈】
遺言により、相手方の意思に関係なく財産を与えることを遺贈といいます。
遺贈による財産は、相続税の課税対象となります。”


遺言をしておきたいと考えています。書式などに決まりはありますか?

遺言は、法律に定める方式に従わなければ、することはできません。

“【遺言と法律】
遺言は、法律の定める方式に従わなければ、することができません。
《遺言書の方式》
①普通方式:自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
②特別方式:危急時遺言、隔絶地遺言”


遺言は、誰でも作成できますか?

遺言者には要件があります。

“【遺言者の能力】
遺言者が遺言をするときの要件は、以下の①~③です。
①満15歳以上
②自分の行った行為の結果を判断し得る精神能力(意思能力)を有すること
③自分が一人で契約等の有効な法律行為が出来る能力を有しなければない”


相続人である兄が、遺言で特定の財産が遺贈されることになりました。これを放棄すると、遺産分割協議に加われないのでしょうか?

いいえ、遺贈を放棄しても相続人は遺産分割協議に参加できます。

“【遺贈の放棄】
遺贈の放棄をしても相続の放棄ではないので、相続人である受遺者は遺産分割協議に加わり遺産相続可能です。民法では特定遺贈の場合、受遺者は遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄が可能と規定されています。放棄の意思表示は遺贈義務者(相続人、包括受遺者)に対してすべきとされています。遺贈の放棄があれば、その遺産全部につき共同相続人の全員の遺産分割協議で、その帰属者を決められます。
【相続放棄と遺贈】
遺贈とは、被相続人が遺言によって遺産を処分することをいいます。
相続人が相続を放棄しても、遺贈は受けられます。逆に遺贈を放棄しても、相続権を失うわけではありません。”


先日、公正証書遺言を作成しましたが、一部内容を撤回したいと考えています。もう一度公正証書遺言の作り直しが必要でしょうか?

公正証書遺言の作り直しをしなくとも、自筆証書遺言によって一部内容を撤回することができます。

“【公正証書遺言の撤回】
先に作成した公正証書遺言の全部または一部を、その後、自筆証書遺言によって撤回することができます。”


遺言執行者とは、どのような役割を持つ人ですか?

遺言執行者とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に遺言書に書かれた内容を、その通り実行する人をいいます。

“【遺言執行者の指定】
遺言執行者とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に遺言書に書かれた内容を、その通り実行する人で、相続人や受遺者がなることもできます。
①遺言で指定された人がなりますが、指定がない場合、家庭裁判所で選任された人がなります。
②正当な理由があれば、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。
※認知や推定相続人の廃除等、遺言執行者を必要とする場合は、あらかじめ遺言書で指定しておきます。
※任務を怠れば、利害関係人の請求により解任されることもあります。”


遺言書に、「祭祀承継者」に関することを記載することはできますか?

“記載することができます。
ただし、「祭祀承継者」となる人は一人のみです。”

“【遺言で祭祀継承者を指名する】
祭祀財産を共同所有することは、実質的に無理があるため、祭祀継承者となる人は一人のみです。”


遺言書で寄与分を定めることはできますか?

遺言で寄与分を定めることはできません。

“【寄与分を定めた遺言書の効力】
遺言で寄与分を定めることはできません。
寄与分は、共同相続人の協議、家庭裁判所の調停又は審判で定めることとされています。
ただし、寄与分の指定としての効力はないにしても、遺言が、遺言の解釈によって、遺贈ないし相続分の指定として有効となるケースもあります。”


“母が亡くなり、相続人である私に「すべての遺産を相続させる」旨の遺言がありました。
しかし、相続人の中に、寄与分の主張をすると思われる相続人がいます。寄与分の主張をされた場合、遺産分割はどのように行われるのでしょうか?”

全遺産が特定の相続人に割り付けられた場合、遺産分割の余地がないため、寄与分の主張をすることはできません。

“【遺言の寄与分に及ぼす影響】
「相続させる」遺言があった場合には、対象となった遺産は、原則として何らの行為を要せずに被相続人の死亡の時に直ちに相続によって承継されます。
よって「相続させる」遺言によって、全遺産が割り付けられた場合には、遺産分割の余地はなく、寄与分の問題は生じません。
一部の遺産について 「相続させる」 旨の遺言がなされた場合には、残部の遺産について遺産分割が行なわるため、その際に寄与分の主張をすることができます。”


契約している生命保険の受取人と絶縁状態のため、第三者に変更したいと考えています。遺言書に記しておくことで変更することはできますか?

平成22年4月1日に締結された生命保険契約であれば、遺言によってすることができます。

“【遺言による第三者への生命保険受取人の変更】
平成22年4月1日施行の保険法により、同日以後に締結された生命保険契約の保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができることとなりました。これにより当初は受取人とすることが難しい、第三者を保険金受取人とすることもできます。
ただし、遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、「遺言者である保険契約者」の相続人が保険者に通知しなければ、保険金受取人の変更があったことを保険者に対して対抗することができないとされています。また、被保険者の同意が必要です。
そのため、第三者を保険受取人とする遺言を作成する場合には、遺言執行者を指定しておきます。遺言執行者は、相続人を代理して保険者に通知することができます。
※なお、遺言による生命保険金受取人の変更については、その可否・手続等が統一されているわけではありません。実務上、保険法の施行前に締結された契約についても、各生命保険契約の定めるところに従い対応しています。”


重病で意識が朦朧としていた父が、体調が一時回復してから遺言書を作成しました。この遺言書は有効でしょうか?

遺言書の作成時に、医師2名以上の立会いがあり、遺言できる状態だったことを証明できれば、その遺言は有効となります。

“【意識混濁や軽度の認知症の場合】
重病で意識が朦朧としてたり、軽度の認知症で正気に戻って意識がはっきりとしている状態の人が残した遺言書は、作成時に医師2人以上の立会いがあり、遺言出来る状態だったことを証明できれば、有効とされます。
法律では、精神上の障害で事理を弁識する能力を欠いていた者が、その能力を一時回復した時には遺言可能とされています。”


遺言執行人は、相続人の同意なく、相続財産を処分することができますか?

“相続財産を処分することができます。相続財産の管理義務と同時に処分権も有しています。
相続人も遺言の執行を妨げることはできません。”

“【遺言執行者の権利義務】
①相続財産の管理や処分権
②認知の場合は、戸籍の届出をする
③相続人廃除の遺言の場合は、家庭裁判所に対してその旨の請求をする
等”


遺言執行人は、認知の届出をすることはできますか?

“認知の届出をすることができます。
遺言執行者には、遺言の執行に必要な一切の行為をなす権利義務があります。、その「必要な一切の行為」のひとつに、認知の場合の戸籍の届出があり、相続人もその執行を妨げることはできません。”

“【遺言執行人の権利義務】
①相続財産の管理や処分権
②認知の場合は、戸籍の届出をする
③相続人廃除の遺言の場合は、家庭裁判所に対してその旨の請求をする  等”


相続人の一部を廃除する旨の遺言があります。遺言執行人が定められており、執行人は廃除の手続きをしようとしていますが、他の相続人の同意がなくともを廃除の手続きはできるのですか?

“廃除される相続人以外の相続人の同意は必要としません。
相続人も遺言の執行を妨げることはできません。”

“【遺言執行人の権利義務】
①相続財産の管理や処分権
②認知の場合は、戸籍の届出をする
③相続人廃除の遺言の場合は、家庭裁判所に対してその旨の請求をする  等


未成年の孫に遺贈した財産の管理を、第三者に委ねることはできますか?

財産の管理権を第三者に委ねることは可能です。

“【未成年の孫への遺贈】
未成年の孫へ遺贈した場合、父母に遺贈した財産を費消されてしまうというリスクが考えられます。そのため、財産の管理権を第三者に委ねることも可能です。
その際、遺言書に以下の2点を明記することが必要です。
①孫に遺贈する
②孫が成人に達するまで、第三者をその財産の管理権者とする”


特定遺贈によってすべての財産が割り付けられていると、寄与分は主張できないのですか?

寄与分の主張をすることはできません。

“【遺産分割と寄与分】
寄与分は遺産分割が行われることを前提とします。
特定遺贈によって全ての遺産が特定人に割り付けられた場合、遺産分割が行われる余地がないので、寄与分の問題は生じません。”


遺言により相続割合の指定がなされた場合、寄与分の主張をすることはできますか?

寄与分の主張をすることができます。

“【遺言書と寄与分の主張】
寄与分は遺産分割が行われることを前提とします。
そこで相続割合の指定がなされた場合、遺産分割によって、個々の遺産の最終的な帰属を確定させる必要あり、分割協議が行われます。つまり、相続割合の指定がなされた場合には、寄与分の主張をすることができます。”


遺言執行者を辞任することはできますか?

正当な理由があれば、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。

“【遺言執行者】
遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に、遺言書に書かれた内容をその通り実行する人です。遺言執行者は、相続人や受遺者がなることも可能です。
遺言で指定された人がなりますが、指定がない場合、家庭裁判所で指定された人がなります。
選任されても、正当な理由があれば、家庭裁判所の許可を得て辞任できます。”


死亡を原因として財産を取得することになる「死因贈与契約」は、何税が課税されますか?

相続税の課税対象となります。

“【死因贈与契約】
形態は贈与ですが、相続税の課税対象となります。
死亡を原因として財産を取得することになりますので、遺言書と同様の効果があります。”