みんなの相続相談所 回答集 / 遺言の形式

“遺言による分割の方法には、「包括遺贈」と「特定遺贈」があると聞きました。
分割の際に争いが起きることが想定されるのですが、どちらの方法で分割を指定するのがよいのでしょうか?”

あらかじめ分割に争いが想定される場合は、「特定遺贈」による方法が望ましいです。

“《包括遺贈と特定遺贈》
【包括遺贈】
遺産の配分割合を示すことです。例えば「全財産の3分の1を長男Aに与える」というようなことです。
【特定遺贈】
遺産のうち特定の財産を示すことです。例えば「○○の土地を長男Aに与える」、「××株式会社の株式をBに与える」というようなことです。

包括遺贈の場合、相続人等の間で遺産分割協議が必要となりますので、あらかじめ分割の際に争いが想定される場合には、適さないと考えられます。”


一通の遺言書に、「夫○○が死亡した場合は、全財産を妻○○に相続させる。妻が死亡した場合には、全財産を夫○○に相続させる。」と夫婦2人で書いてもいいですか?

“いいえ、できません。
一通の遺言書に夫婦など2人以上で証書を行うと無効になります。”

“【協同遺言】
民法において、遺言は2人以上の者が同一の証書で行うことができないと規定されており、これに違反した遺言は無効となります。遺言の撤回が自由にできなくなるためと考えらています。”


公正証書遺言とは、どの様にして作成する遺言なのですか?

公正証書遺言とは、公証役場において、証人2人以上の立ち会いのもとで公証人に遺言書を作成してもらう方式の遺言です。

“【公正証書遺言の作成】
公正証書遺言は、遺言者が口述して、公証人が筆記をします。公証人が筆記した者を遺言者及び証人に読み聞かせて内容を確認します。遺言者の推定相続人やこれらの配偶者、公証人の配偶者や4親等内の親族などは証人になれません。”


自筆証書遺言の押印は実印でなければなりませんか?

実印である必要はありません。

“【公正証書遺言の押印】
押印は実印でなく、認印でも拇印でも可能です。押印は、氏名の自書と同様に、遺言者が誰であるか、および遺言者本人の意思に基づくものであるかを明らかにするため要件とされています。”


文字を書けない場合、遺言を残すことはできないのでしょうか?

「公正証書遺言」で遺言を作成することができます。

“《公正証書遺言》
【作成方法】
①二人以上の立会人が必要です。
②遺言者が口述し、公証人が筆記します。
③公証人が遺言者及び証人に読み聞かせます。
④遺言者及び証人が筆記内容を承認し、各自署名押印します。
⑤公証人は作成方式が適正であることを付記して署名押印します。
【メリット】
①存在の検索が可能です。
②紛失や改ざんの心配がありません。
③遺言内容についての争いや遺言の無効が減少します。
④文字を書けなくても作成可能です。
【デメリット】
遺言の内容は秘密にできません。”


公正証書遺言の保管方法について教えてください。

遺言者が正本・謄本を保管します。原本は、公証人役場で半永久的に極秘に保管されます。

“【公正証書遺言の保管】
①遺言者
正本・謄本各1通又は謄本2通を保管します。
※正本とは
原本とほぼ同じものですが、遺言者・立会人の署名・押印が省略され、公証人が「これは正本である」と記し押印したものです。
遺言者が死亡した後は、この正本で各種手続きを行います。
※謄本とは
原本の写し(謄写)です。
②公証人役場
原本を半永久的に極秘に保管します。
【遺言執行者が指定されている場合の一般的な保管方法】
①遺言執行者
正本を保管します。
②遺言者
謄本を保管します。”


遺言検索を委任する場合の委任状には実印の押印が必要ですか?

実印の押印が必要です。

“【遺言検索を委任する】
請求者(相続人)の代理人が手続をする場合の必要書類
・遺言された方の死亡が確認出来る資料(除籍謄本等)
・請求者が相続人であることを確認する資料(戸籍謄本)
・請求者の印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
・委任状(本人の実印押捺)
・代理人の本人確認の資料 以下①又は②のいずれか
①運転免許証・パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の本人確認資料と認印
②発行から3ヵ月以内の印鑑証明書と実印”


推定相続人が多く、遺言書の偽造や盗難が心配です。どの方式で遺言書を作成すべきでしょうか?

「公正証書遺言」は、偽造や盗難の心配がありません。

“《普通方式による遺言》
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
それぞれメリット・デメリットがあります。
遺言書の偽造・変造・盗難・紛失という心配がないのは、「公正証書遺言」です。”


私と妻には子どもがおらず、両親も既に他界しています。私には兄弟がいますが、財産は妻にすべて相続して欲しいと思っています。どうしたらいいでしょうか?

「妻◯◯に全ての財産を相続させる」と記載した遺言書を作成して下さい。

“【配偶者に全財産を相続させたい】
配偶者と兄弟が相続人となる相続で、全てを配偶者に相続させたい場合、「妻(夫)○○に全ての財産を相続させる」と記載した遺言書を作成することで、全財産を配偶者に相続させることができます。兄弟には遺留分は認められません。
妻も同じく夫に全ての財産を相続させたい場合には、それぞれが同様の遺言書を作成して下さい。”


公正証書遺言の作成の際に、遺言する人は、公証人や証人の面前で口述をしなければならないと聞きました。もし、言語機能に障害がある場合は、公正証書遺言を作成することができないのでしょうか?

作成できます。言語機能に障害がある場合、手話通訳、筆談により申述することができます。

“【公正証書遺言の申述方法】
遺言者は、公証人及び証人の面前で口述しなければなりません。ただし、言語機能に障害がある場合は、手話通訳、筆談により申述が可能です。”


神奈川県に在住していますが、現在東京都内の病院に入院しています。公正証書遺言を作成したいのですが、公証人が出張してくれると聞きましたが、東京都の公証人にお願いすればいいでしょうか?

神奈川県の公証人となります。

“【公証人の出張】
遺言者が公証人役場に行けない場合、公証人が出張することができますが、その場合の公証人は遺言者と同じ都道府県に登録している公証人に限ります。”


父が亡くなりました。生前、公正証書遺言を作成したと言っていましたが、どこにあるのかわかりません。どうすればいいでしょうか?

公証人役場で検索することができます。

“【公正証書遺言の検索】
公正証書遺言の場合、利害関係人はその遺言の検索、閲覧又は謄本の請求が可能でです。”


秘密証書遺言で遺言をした場合、遺言書そのものは公証役場で保存されますか?

“秘密証書遺言そのものは、公証役場で保存されません。
公証役場では、秘密証書遺言の「いつどこの役場で作成されたのか」のみ検索可能です。”

“【秘密証書遺言】
秘密証書遺言はいつどこの役場で作成されたものか、のみ検索可能で、遺言書そのものは公証役場で保存されません。よって、遺言書が見つからない限り、遺言の内容は不明のままの可能性があります。”


自筆証書遺言の本文を、ワープロで作成してもよいのでしょうか?

自筆証書遺言は、署名・本文ともに自筆が必要です。
※以下の通り、平成30年の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録について、自筆証書遺言の方式が緩和されています。
【平成30年(2018年)民法改正 自筆証書遺言の方式緩和】
平成31年(2019年)1月13日以後、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書を不要とすることとされました。ただし、財産目録の全ページに署名押印が必要となります。
代わりの作成方法としては、従来の自筆部分をパソコンで作成した書面のほか、登記事項証明書や、預金通帳のコピーを添付する方法が挙げられています。

“【遺言の筆跡】
自筆証書の場合は、署名・本文ともに自筆でなければなりません。
秘密証書の場合は、署名は自筆が必要ですが、本文は代筆・ワープロでも可能です。”


秘密証書遺言は、すべてワープロで作成できますか?

本文はワープロで作成できますが、署名は自筆でしなければなりません。

“【秘密証書遺言の筆跡】
署名は自筆でしなければなりませんが、本文は代筆・ワープロで作成することができます。
遺言書の加除訂正・変更等をする場合は、本人の自著と押印が必要です。”


父が亡くなりました。公正証書遺言を残していたかどうか知りたいのですが、何か方法はありますか?

“公正証書遺言を遺していたかどうかは、公証人役場に照会することができます。
※全国どこの公証人役場からでも請求可能です。”

“【公正証書遺言の存否】
遺言の存否の照会は、全国どこの公証人役場からでも請求可能です。ただし、遺言の閲覧・謄本請求は、その遺言を作成した公証人役場で行うこととなります。”


公正証書遺言は誰が保管するのですか?

公正証書遺言の保管について、『正本』を遺言者に渡し、『原本』は半永久的に公証人役場で極秘に保管されます。

“【公正証書遺言の保管】
公正証書遺言の正本・謄本各1通または謄本2通を遺言者に渡し、原本は半永久的に公証人役場で極秘に保管されます。
※正本は、原本とほぼ同じものだが、遺言者・立会人の署名・押印が省略され、公証人が「これは正本である」と記し押印したもの。遺言者が死亡した後は、この正本で各種手続きを行います。
※謄本は、原本の写し(謄写)です。
遺言執行者が指定されている場合、正本は遺言執行者、謄本は遺言者本人が保管するのが一般的です。”


公正証書遺言を作成する際の手数料は、遺贈する財産の価額を目的価額として計算されると聞きましたが、不動産は何を基準に評価額を出すのでしょうか?

不動産は、固定資産評価額を基準に評価するとされています。

“【公正証書遺言の作成費用】
不動産は、固定資産評価額を基準に評価するとされています。法律行為の目的価格の算定について、遺言の場合、相続人、受遺者毎に価額を算定して合算されます。”


秘密証書遺言の作成費用はいくらですか?

一律、11,000円です。

“【秘密証書遺言の作成費用とメリット】
公正証書遺言は安全性重視の観点から多く採用されていますが、書換えに時間がかかります。状況の変化(賃貸建物の新築、所有不動産の譲渡・交換、新たな不動産の取得等)に対応するものとして、秘密証書遺言を採用するのも選択肢の一つであると考えられます。費用も一律11,000円と割安です。


自宅は、長男でなく、同居している長女に相続させたいのですが、どうしたらいいでしょうか?

「遺言者所有の不動産✕✕を長女◯◯に相続させる」と記載した遺言書を作成して下さい。

“【特定の財産と特定の人に相続させたい】
特定の財産を特定の人に相続させたい場合、相続人が優先権を主張する必要はありません。遺言書に「遺言者所有の不動産✕✕を長女◯◯に相続させる」と記載すると、遺産分割協議や家庭裁判所の審判を経ることはなく、相続によってその財産が相続人に承継されることになります。”


遺言の方式には、どのようなものがありますか?

“遺言は、大きく分けて普通方式と特別方式に分けられます。
普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
特別方式には、危急時遺言と隔絶地遺言があります。”

“《遺言の方式》
遺言は、法律の定める方式に従わなければ、することができません。
【普通方式】
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
【特別方式】
①危急時遺言
・一般臨危急時遺言
・船舶遭難者遺言
②隔絶地遺言
・伝染病隔離者遺言
・在船者遺言”


公証役場に遺言検索に行くのに必要な物はありますか?

遺言検索の手続にあたって、請求者(相続人)本人が手続する場合、遺言した者の死亡が確認できる資料と請求者が相続人であることが確認できる資料が必要です。

“遺言検索の手続にあたって、請求者(相続人)本人が手続する場合、遺言した者の死亡が確認できる資料(除籍謄本など)と請求者が相続人であることが確認できる資料(戸籍謄本)及び以下①、②のいずれかが必要となります。
①運転免許証・パスポート等の顔写真入りの公的機関発行の本人確認資料と認印
②発行から3ヶ月以内の印鑑証明書と実印”


死因贈与契約とはどういうものですか?

生前に贈与する旨の契約をするも、贈与者が死亡して初めて効力が生じる贈与のことをいいます。

“【死因贈与契約の特徴】
①遺贈と異なり、贈与者と受贈者間で生前に贈与の意思確認が行われているので、推定被相続人の意向に添った財産の移転が可能。
②贈与財産が不動産等の場合、受贈者は贈与者の承諾を得て所有権移転の仮登記が可能。
③贈与の執行者を定めておけば、相続人等の承諾や印鑑を受領せずに執行者の権限で仮登記から本登記へ手続き可能(所有権が確実に移転。)”