相続税対策として活用する「固定資産の交換の特例」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

相続財産のうち不動産が占める割合は年々減少傾向にあるといわれていますが、約半分を占めているのが現状です。
したがって、相続において、所有不動産に対する対策を検討することは、重要です。
今回は、「固定資産の交換の特例」とその活用事例を見ていきましょう。

1.固定資産の交換の特例とは?

個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換した場合、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べる特例が設けられています。
これを「固定資産の交換の特例」といいます。
「固定資産の交換の特例」を受けるためには、一定の要件を満たさなければなりません。

固定資産の交換の特例を受けるための適用要件

固定資産の交換の特例を受けるためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

固定資産の交換特例 要件1

固定資産の交換特例 要件2

固定資産の交換特例 要件3 4

固定資産の交換特例 要件5

固定資産の交換特例 要件6

固定資産の交換の特例を受けるための手続き

固定資産の交換の特例を受けるためには、確定申告書に所定の事項を記載の上、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]を添付して提出する必要があります。

注意する点

固定資産の交換の特例が受けられる場合でも、交換に伴って相手方から金銭などの交換差金を受け取ったときは、その交換差金が譲渡取得として所得税の課税対象になります。

法人が固定資産を交換した場合

法人が同じ種類の固定資産を交換により取得した場合、圧縮限度額の範囲内で交換により取得した資産(取得資産)の帳簿価額を損金処理により減額したときには、その減額した金額を損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができます。

2.固定資産の交換の特例の活用事例

固定資産の交換の特例を活用した、所有不動産の相続対策事例をご紹介します。

相続税評価額の大きいものと小さいものを交換する

時価が等価であっても相続税評価額の大きいものから小さいものへの組み換えを行います。
時価が等価であっても、相続税評価額も等価とは限りません。
固定資産の交換の特例の適用を受けて、相続税評価額の大きいものと小さいものを交換すれば、時価は同じでも、相続税評価額の低い資産に組み換えることができます。

固定資産の交換特例 事例アイコン

同じ時価で、父が所有するA土地(相続税評価額8,000万円)と子が所有するB土地(相続税評価額6,000万円)を交換すれば、譲渡に関する課税をされることなく、相続税評価額を2,000万円軽減することができます。

固定資産の交換特例 事例1

小規模宅地等の特例における評価減割合の小さなものと大きいものを交換する

固定資産の交換の特例を活用して、小規模宅地等の特例における評価減割合の小さいものから大きいものへ組み換えます。
次の事例を用いて、詳しく説明します。

固定資産の交換特例 事例アイコン

時価、相続税評価額が同じで、ともにアスファルト敷きの駐車場として利用されている以下の土地を交換します。

  • 父の所有するC土地 : 時価1億円 相続税評価額8,000万円 500平米
  • 子の所有するD土地 : 時価1億円 相続税評価額8,000万円 200平米

固定資産の交換特例 事例2-1

時価と相続税評価額が同じであるため、固定資産の交換の特例による相続税評価額の増減はありません。
しかし、小規模宅地等の特例における「貸付事業用宅地等」として適用を受けた場合、相続税評価額を軽減することができます。

参考:小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人等の自宅や事業用の宅地等の評価について、一定の要件のもと高額な減額が認められている制度をいいます。
小規模宅地等の特例における「貸付事業用宅地等」では、以下の減額が認められています。

固定資産の交換特例 参考小規模宅地特例

つまり、A土地の場合には500平米のうち200平米部分の宅地について50%の減額を受けることとなるのに対して、B土地の場合にはそのすべてについて小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
実際に、それぞれの相続税評価額を計算してみましょう。

固定資産の交換特例 事例2-2

平成30年4月1日より貸付事業用宅地等の範囲の見直し

相続開始前3年以内に貸し付けを開始した不動産については、対象から除外される(事業的規模で貸付けを行っている場合は除く)こととなりました。

【事業的規模で貸付けを行っている場合とは?】

事業的規模で貸付けを行っているかは、所得税の不動産所得における「5棟10室基準」等で判定します。
所得税の不動産所得における「5棟10室基準」とは、以下のとおり、その不動産所得に係る建物の貸付けが事業的規模であるか否かを判定する形式的な基準をいいます。

●所得税の不動産所得における「5棟10室基準」(所基通26-9)
次に掲げる事実のいずれかに該当する場合、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること。

小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等について、原則相続開始前3年以内に貸し付けを始めたものはその対象から除外されることとなりますが、上記の基準を満たす場合を「特定貸付事業」として、その3年以内に貸し付けたものも対象となる例外措置が設けられています。

まとめ

固定資産の交換の特例とは、個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換した場合、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べる特例をいいます。
ただし、特例の適用には、一定の要件を満たさなければなりません。
固定資産の交換の特例を活用すると、譲渡に関する課税をされることなく、相続税評価額を軽減することができる場合があります。
所有不動産に対する相続税対策の一つとして、押さえておきたい特例です。

相続テラスの活用方法

相続テラスを120%活用する4つの道具

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

《知る・調べる・相談する》で相続問題の解決策がみつかります

相続テラスでは、相続に関する様々なトピックスをできるだけ詳細に掲載しております。『相続に関するQ&A集』で気になる情報をお探しいただき、解決のヒントを見つけることができます。

相続に関するQ&A集

SNSでもご購読できます。