賢く渡す!暦年贈与を活用する4つのポイント

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贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。

贈与は、ポイントを押さえて賢く活用することで、相続税の負担を軽減したり、後に起こるかもしれない「争族」を防止することにつながります。

今回は、暦年課税の贈与、「暦年贈与」について詳しく見ていきましょう。

☆☆参考☆☆相続時精算課税に関する記事はこちら
「相続時に」+「精算する」課税制度をおさえておこう
「相続時精算課税制度」は採用すべきなのか? 迷いが晴れる5つの決め手

1.贈与税の課税方法
2.暦年贈与
3.暦年贈与の活用~定期贈与と連年贈与~
4.暦年贈与の活用~保険料贈与プラン~

1.贈与税の課税方法

贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
会社など法人から財産をもらったときには、贈与税ではなく、所得税がかかります。
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。

暦年課税

暦年課税は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の合計額が、基礎控除額(110万円)を超える場合に、その超える部分に対して贈与税がかかります。

したがって、贈与を受けた財産の合計額が110万円以下の場合には、贈与税はかかりません。

暦年贈与は、生前贈与を受けた人と受けない人に著しい税負担の不公平が生じないよう、相続税で課税されない部分を補完する目的があります。

相続時精算課税

相続時精算課税とは、生前に贈与した場合には贈与税が軽減されますが、その代わりに相続のときには、贈与された財産と相続した財産を合わせた額に相続税がかかるという制度です。

一定の要件を満たした場合に、相続時精算課税を選択することができます。

相続時精算課税を選択した場合、贈与者ごとに生涯にわたって2,500万円の特別控除額を利用することができます。

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 暦年課税と相続時精算課税の制度比較

贈与 課税方法比較

2.暦年贈与

暦年贈与の計算

暦年課税の贈与を「暦年贈与」といいます。

上記の1.贈与税の課税方法でも触れましたが、暦年課税の贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産に対して課税されます。

贈与税の計算において、110万円の基礎控除があります。したがって、110万円以下の贈与には、贈与税は課税されません。

ただし、110万円の基礎控除は、贈与を受けた人(受贈者)1人ごとの金額です。贈与をした人(贈与者)ごとに控除できるわけではありません。

贈与された価額から基礎控除を差し引いた残りの金額に、定められた税率を乗じて、贈与税額を計算します。

暦年贈与 計算式

暦年課税の贈与税率

平成26年までは、一律の税率を用いていましたが、平成27年以降、「一般税率」と「特例税率」に区分されています。
「一般税率」が適用される財産を「一般贈与財産」といい、「特例税率」が適用される財産を「特例贈与財産」といいます。

暦年贈与 税率表

特例税率

「特例税率」は、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子や孫など)への贈与税の計算の際に適用されます。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与の際に適用されます。(配偶者の親からの贈与には使用できません。)
「特例税率」は一「般税率」に比べて低い税率が適用されます。

暦年贈与 特例税率速算表

特例贈与財産の計算例

特例贈与財産を520万円贈与された場合

520万円-110万円(基礎控除額)=410万円(基礎控除後の課税価格)

410万円×20%-30万円=520,000円(贈与税額)
※相続税の最低税率10%と同率の税負担となります。

一般税率

「一般税率」は、「特例贈与財産」に該当しない場合に適用されます。例えば、兄弟間の贈与や夫婦間の贈与、祖父から未成年の孫への贈与の場合などです。

暦年贈与 一般税率速算表

一般贈与財産の計算例

一般贈与財産を470万円贈与された場合

470万円-110万円(基礎控除額)=360万円(基礎控除額後の課税価格)

360万円×20%-25万円=470,000円(贈与税額)
※相続税の最低税率10%と同率の税負担となります。

3.暦年贈与の活用~定期贈与と連年贈与~

暦年贈与の活用の一つの方法として、基礎控除額110万円を超えないように、毎年贈与していく方法があります。
毎年贈与するにあたって、「定期贈与」と「連年贈与」の考え方に注意が必要です。

定期贈与

定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与をいい、一定期間、一定の給付を目的に行う贈与です。

例えば、毎年100万円を10年間贈与するという贈与契約に基づく贈与ということです。

1,000万円の贈与をするという契約書を作り、この契約に基づいて毎年100万円贈与をすることになります。

定期贈与は、1,000万円の契約が先にあり、毎年分割して100万円ずつ贈与をしているので、1,000万円に対して贈与税がかかります。

連年贈与

連年贈与とは、毎年繰り返される贈与をいいます。

「毎年100万円ずつ贈与を10年間結果として続けることになった」という贈与です。

連年贈与は、100万円ずつ毎年贈与を繰り返しても、贈与税の基礎控除以下であるため、全く贈与税はかかりません。

注意! 連年贈与という言葉を定期贈与と同意義の言葉として使っているケースもありますので、連年贈与という言葉を使う場合は注意が必要です。

4.暦年贈与の活用~保険料贈与プラン~

保険料贈与プランとは?

保険料贈与プランとは、生命保険を使った相続対策の一つで、子や孫に現金を贈与して、それを保険料として生命保険に加入する方法です。
保険料贈与プランを活用することによって、相続税の節税と納税資金対策を同時に行うことができます。

保険料贈与プランを活用する際の契約形態

保険料贈与プランを活用する際は、次のような契約形態で生命保険に加入します。

暦年贈与 保険料贈与プラン契約形態

☆☆参考☆☆生命保険の契約形態に関する記事はこちら
思わぬ税負担も!?知っておきたい生命保険と税金の関係

保険料贈与プランにおける課税関係

  • 保険料として現金の贈与を受けたとき → 贈与税
  • 死亡保険金を受け取ったとき → 所得税

保険料贈与プランのしくみと効果

暦年贈与 保険料贈与プラン効果

保険料贈与プランの留意点

保険料の贈与を受ける者が幼い子である場合

贈与を受ける者が幼い子である場合、贈与者である父がその子名義の預金通帳に、毎年支払保険料相当額を振込み(贈与し)、その預金口座から保険料が振込まれるようにします。
このとき、子名義の預金は、贈与者でない親権者が管理するようにします。
なぜこのようにするかというと、「名義預金」と判定されないためです。

「名義預金」とは
親族に名義を借りているに過ぎない預金をいいます。
例えば、預金名義は、子・孫などの名前ですが、収入等から、実質的には別の所有者がいると考えられる預金です。
「名義預金」は、贈与と認定されるか否かに注意しなければなりません。
贈与は、贈与者による「あげます」という意思と受贈者による「もらいます」という受諾があって成立する契約行為です。
したがって、父が子の名義で預金をしていても、預金の存在を子が知らない場合、贈与契約が成立せず、この預金は、実質所有者である父の相続財産に計上されることになります。

「定期贈与」と判定されないための対策

保険料充当金の贈与は、保険事故が発生すればその贈与は中止されるので、贈与期間が不確定な「単年贈与の積み重ね」と考えられますが、以下3点の対策を講じておくと安心です。

暦年贈与 保険料贈与プラン留意点

意図せずに贈与となってしまう保険契約に注意

保険料贈与プランでは、「保険料」を贈与することで相続対策に活用しますが、一般的によく見かける生命保険の入り方の中には、結果として贈与税が課税されるケースをよく見かけます。
それは、親が子供のために「貯金」代わりに加入していることが多い、「かんぽ」などに代表される「養老保険」です。

養老保険 贈与

高額な贈与税負担が予想されるような場合には、満期保険金を保険料負担者に変更し、一時所得として受取る。
※(満期保険金-支払った保険料-50万円)×1/2を他の所得と合算して所得税が課税されますので、養老保険の場合は、ほとんど課税されません。
そして、その後に、暦年贈与等を活用して税負担を抑えながら子に移転する方法などが考えられます。

 

まとめ

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」があります。
今回は、暦年課税の贈与「暦年贈与」についてご紹介しました。

「暦年贈与」活用のポイント

  • 毎年贈与を行った場合、「定期贈与」と「連年贈与」では、課税方法が異なるため注意が必要です。
  • 保険料贈与プランを活用すると、相続税の節税と納税資金対策を同時に行うことができます。ただし、「名義預金」、「定期贈与」と判定されないように、対策が必要です。

相続税対策に、「暦年贈与」の活用を検討してみてはいかがでしょうか?

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