今さら聞けない、遺言を準備する前に知っておきたいルールとは?

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今さら聞けない、遺言を準備する前に知っておきたいルールとは

遺言とは、自分に万一のことがあった場合に、自分の財産を「誰に?どれだけ?どのように?」託すか決める意思表示のことで、この意思表示を民法の規定に従って残したものを遺言書といいます。

遺言により財産を贈与することを「遺贈」といいます。

今回は、遺言書の基本的なルールについて見てみましょう。

※平成30年の民法改正で、自筆証書遺言の方式緩和と自筆証書遺言の保管制度が創設されましたので、追記しております。

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1.遺言の種類
2.「包括遺贈」と「特定遺贈」
3.遺言の注意点(遺留分)

1.遺言の種類

非常時以外で採用される普通方式の遺言は、次の3つに分けられます。

(1) 自筆証書遺言
(2) 公正証書遺言
(3) 秘密証書遺言

それぞれ詳しく見てみましょう。

(1) 自筆証書遺言

被相続人が本文・署名共に自筆で内容を記し、個人で管理を行います。
この方式の場合、費用がかからず、いつでも作成が可能といったメリットがあります。
しかし、法的不備が生じた場合は遺言が無効となってしまい、また被相続人自身が遺言を管理するため、破棄や隠匿にさらされる危険もあります。

※平成30年の民法改正・・・自筆証書遺言の方式緩和(この改正は2019年1月13日から施行)
財産目録を別紙として添付する場合に限り、自書を不要とすることとされました。
代わりの作成方法としては、従来の自筆部分をパソコンで作成した書面のほか、登記事項証明書や、預金通帳のコピーを添付する方法が挙げられています。
※なお、別紙の全てのページに署名・押印をする必要があります。
※平成30年の民法改正・・・自筆証書遺言の保管制度の創設 2020年7月10日から施行
自筆証書遺言(原本)を法務局に保管する制度が創設されました。

・遺言者は、自筆証書遺言(特定の様式かつ無封のみ)について、法務局に保管申請できる(注1)。
・遺言者は、いつでも遺言書の返還・閲覧請求可。
・遺言者の関係相続人等(相続人・受遺者・遺言執行者等)は、以下を請求できる(注2)。
①遺言書情報証明書の交付
②遺言書保管事実証明書の交付
③遺言書の閲覧
・相続人等の1人が①または③の手続きをした場合、法務局からその他の相続人等へ、遺言書を保管していることが、
通知される。
・家庭裁判所での検認の手続きは不要
注1)遺言者本人が法務局に出頭して手続きする必要がある(代理申請不可)。
また、この保管申請ができる法務局は、遺言者の住所地・本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する、指定法務局に限定される。
注2)遺言者の死亡後に限る。

遺言者の死亡後に請求できる書面の内容

(2) 公正証書遺言

被相続人が口頭で伝えた内容を公証人が書き記す形式で作成される遺言です。
手数料はかかりますが、公証人によって作成されるため、法的不備による無効となるリスクは少なく、また公証人役場にて原本が管理されるため、紛失、改ざんの恐れもありません。
また、遺言は公証人役場で作成されますが、寝たきりの状態で、公証人役場へ出向くことが出来ない場合も、公証人が出張して遺言を作成する事が出来ます。

(3) 秘密証書遺言の場合

遺言内容は明かすことなく自筆で行い、遺言の存在のみを公証人と証人に確認してもらう遺言です。
この形式では、遺言の本文はワープロ等で印刷可能ですが、署名は被相続人の自筆が必要となります。
公証人による承認と検認を経ることで、確実に被相続人が作成したものという確認が取れますが、管理は被相続人自ら行うため、紛失、改ざんの危険があります。
また内容についても被相続人が作成するため、法的不備により無効となる危険があります。

☆それぞれの方式のポイントまとめ

自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言の比較表

2.「包括遺贈」と「特定遺贈」

遺贈は、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類に分けられます。

「包括遺贈」とは、遺産の全部・全体に対する配分割合を示して遺贈することをいいます。

例えば、「全財産の3分の1を○○に与える」ということです。「特定遺贈」とは、遺産のうち特定の財産を示して遺贈することをいいます。

例えば、「○○の土地を△△に与える」、「甲乙株式会社の株式を××に与える」ということです。

包括遺贈と特定遺贈

包括遺贈の注意点

包括遺贈の場合、その割合に基づいた遺産分割協議が必要となります。

財産を配分する割合を決めて遺贈するので、遺贈が起こるまでの時間の経過による財産構成の変化に対応することできる反面、相続時に争いが想定される場合は、特定遺贈ではっきりと帰属先を明記しておくことで、相続が「争族」となることの防止に繋がります。

また、債務も割合に応じて引き継ぐことになります。

3.遺言を作成するときの注意点

 遺留分

遺留分とは、最低限法定相続人に守られる相続分であり、遺言の内容が著しく偏っている場合、相続人の遺留分を侵害する恐れが有ります。
そのため、遺言書の内容は、「相続人の遺留分を考慮した分割にする」又は「生前に遺留分の放棄を相続人に依頼しておく」等の対策を行う必要があります。

遺留分の注意点

相続財産に対する各相続人の遺留分

遺留分

遺言通りではない分割も可能

相続人全員がその遺言の内容を知り、かつ全員の同意がある場合、遺言の内容とは異なった相続財産の分割を行うことも認められています。
そのため、遺言通りの内容で相続を行うには「遺言と異なる遺産分割を禁じる記載をする」「遺言信託を利用して、遺言の執行を信託会社に依頼する。」
等の対策を考慮しなくてはなりません。

遺言の変更、取り消し、撤回

遺言者は、遺言内容の変更や取り消しを自由に行うことができます。ただし、複数の遺言を作成する場合、先の遺言と後の遺言が抵触しないときは、両方が有効となります。
遺言の変更
また、いったん遺言しても、その後気が変わる等して、遺言の全部又は一部を、遺言の方式に従い『撤回』可能です。
遺言の撤回は、自分の意思のみで何度も出来る、便利な制度です。

4.遺言の検認手続き

押印により封がされている場合は、家庭裁判所において検認という手続きを経て開封する必要があります。
自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は開封の際、検認手続が必要ですが、公正証書遺言には必要ありません。
※違反しても遺言書は無効にならないが、5万円以下の過料などに処されます。

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